深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」in 上野の森美術館
まるで生きているような金魚を描いた作品で知られる深堀隆介氏(1973年~)の、東京の美術館では初めてとなる本格的な個展、深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」が上野の森美術館で開催されています。
本展は深堀氏自身が展示キャプションを書かれています。これを読みながら進んでいくと、金魚の美しさと不思議なリアリティに潜む、深堀氏が作家として本当に表現したいものが見えてきます。金魚という日本らしい、親しみやすいモチーフですが、その裏側にある深みのある作家のストーリーに驚きと感動が生まれるアート体験となるでしょう。
驚きの2.5D Paintingで金魚に込められる想い
本展は、さまざまなテーマで躍動する金魚が全6章で紹介されています。
第1章「樹脂との格闘/進化する技法」では、この生きているような金魚の表現を可能にしている、2.5D Paintingと呼ばれる手法が動画で紹介されています。これは樹脂を流し込み、乾いたその表面にアクリル絵具で金魚を少しずつ描き、これを何層にも重ねることでまるで生きているような金魚が表現されます。ひとつの層が乾くには2日間も要するそうで、ひとつひとつの作品が長い時間をかけて、生まれてきたことが分かります。
第2章「2D—平面に棲む」では、金魚の体の中には深堀氏のその時の心情や出来事が描き込まれてあり、鱗や色を重ねていくと見えなくなりますが、表面にうっすらとその痕跡が残るので、これが金魚の個性となると深堀氏自身が説明されています。
その深堀氏の作業(技法)は、あたかも大木の幹の年輪のように、ひとつひとつの輪に深堀氏自身の記憶が塗りつ込められているようにも感じます。
遍在する金魚たちの愛おしさ
第3章と第4章では“遍在する金魚たち”をテーマに、あらゆる物や日常の風景に違和感なく溶け込むような金魚が表現されています。
第3章は「支持体、形式の探求」と題され、逆さにした番傘や古い机の引き出しなど、水ではないものを水に見立てて描かれた作品に驚かされます。それは内に水が流れている木であったり、水の作用で固まるものや形状が水のようなものなど、着眼点は多岐に渡っており、自由奔放な発想が私たちを楽しませてくれます。
第4章は「日常の風景とともに」として、日常生活で使う雑器や古くなって捨てられるものなども活用した作品が紹介されています。ここでは金魚が泳ぐ“金魚鉢”として日用品が使われています。日用品には使っていた頃の記憶が刻まれており、そうした記憶と結びつく時間の中で金魚が遊んでいるようにも見えます。
これかからも楽しみな金魚を通した深堀氏の表現
第5章の「2.25D—表面と深さのはざまで」では深沢氏自身により、創作活動において生きている金魚をデッサンすることはなく、亡くなって、動かなくなった状態だからこそ見えてくる特徴を自分の脳に焼き付けると説明されており、深沢氏の記憶と描かれる金魚の結びつきがより強調されます。
また第6章の「新展開—生まれつづける金魚たち」で見られる《鱗象》では鱗だけが抽象化されて描かれており、深沢氏が表現しようとする本質がより鮮明になっているようで、これからの可能性にわくわくします。
深沢氏は、本展の冒頭で表明されている「地球鉢」で言及されているように、ここに暮らす私たちにこれからも金魚を通じて深みのあるメッセージを届けていただけそうです。
タイトル | 深堀隆介展「金魚鉢、地球鉢。」 |
会期 | 2021年12月2日(木)~ 2022年1月31日(月) |
会場 | 上野の森美術館 |
住所 | 東京都台東区上野公園 1-2 |
Webサイト | https://www.kingyobachi-tokyo.jp/index.html |
開館時間 | 10:00~17:00(入館は16:30まで) |
休館日 | 12月31日(金)、1月1日(土) |
料金 | 【一般】1,600円 【高校・大学生】1,300円 【小・中学生】800円※未就学児は入場無料。 ※小学生以下は、保護者同伴でのご入場をお願いします。 ※本券は、会期中1枚につき1名様1回限り有効です。再入場はできません。 ※チケットの転売は禁じます。また、払い戻し、交換、再発行はいたしません。 ※障がい者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、愛の手帳、被爆者健康手帳)をお持ちの方は、ご本人と付き添いの方1名様まで入館無料となります。 ご来館の際、会場入口スタッフへお声がけください。 |