グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生 in 世田谷美術館
世田谷美術館では、モーゼスおばあさん(グランマ・モーゼス)の愛称で親しまれるアンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス氏(1860-1961)の生誕160年を記念した回顧展「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」が開催されています。
国内で開催される回顧展としては16年ぶりとなる本展は、田園とそこで生きる人々の日常や暮らしを描いた作品だけでなく、彼女が残した言葉や愛用品、関連資料を含む約130点が展示され、モーゼスおばあさんの生き方や人となりにも接することができます。
何よりも、100年を生きたモーゼスおばあさんが絵筆をとったのは70才代からという事実は、人生100年時代を生きる私たちに、何かを始めるのに、決して遅すぎるということはないと教えてくれるでしょう。
自然豊かな環境と人々の営みを描く
モーゼスおばあさんのほとんどの作品は、彼女自身が暮らし、愛したニューヨーク州とヴァーモント州の身近な風景や日常を素朴なタッチで描き出したものです。第1章「アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス」では代表的な作品とともに、モーゼスおばあさんゆかりの地も紹介され、彼女が生まれ育ち、暮らした自然豊かな環境に思いをはせることができます。
彼女の作品にはすがすがしい山並みや自然を背景に、手前は家や牧場とそこに暮らす人々の営みが描かれている構図が多く、画面構成に苦慮しながらも彼女がこだわった構図であることが展示キャプションで紹介されています。
第2章「仕事と幸せと」では、人々の日常の営みにフォーカスされ、キルトや石鹸、ロウソク作り、作物の収穫などの仕事の様子が描かれ、家族や村の人々と共同で行う仕事は仲間意識を育む楽しい機会であり、幸せを分かち合うひとつのコミュニティがあったことがうかがえます。
自然の恵みを祝い、自然と生きる世界
第3章「季節ごとのお祝い」はメープル・シロップと砂糖を作るシュガリング・オフ、夏のピクニック、晩夏から初秋にかけてのアップル・バター作りや秋と冬のハロウィーンやサンクスギビング、クリスマスなど、季節ごとの特別な行事が描かれ、楽しさとともに自然のもたらす恵みが伝わってきます。
第4章「美しき世界」ではモーゼスおばあさんにとって最も大切なテーマである、自然の変わらぬ美しさに改めて向き合えます。自然は穏やかで平穏な時も、混乱と脅威と化す時もある。モーゼスは自然の静と動、そのどちらにも敬意を表し、そして目に映る風景をとらえていることが分かります。
モーゼスおばあさんの絵が問いかけてくるもの
モーゼスおばあさんは70代で本格的に絵を描き始め、80才(1940年)の時にニューヨークで初めての個展を開き、その後は全米各地で展覧会が開かれ、評価が高まりました。当時は1929年から始った世界的な大恐慌や、その後の第2次世界大戦を経て、東西冷戦がはじまり、ドイツなどいくつかの国が分断されるという時代と重なります。
彼女の作品が、これらの暗いできごとに疲弊していたアメリカの人々の心をとらえた理由は、単に古き良き時代のノスタルジーや癒しだけでなく、自然とともにたくましく誠実に生きてきた強さや温かさに勇気づけられたのではないかと想像できます。
私たちは人生100年時代をどう生きるか?というだけでなく、地球環境問題やコロナ禍による格差と分断というさまざまな社会の課題に直面しています。モーゼスおばあさんの作品と素敵な生き方から、今を生きる私たちも勇気づけられることが多いのではないかと思います。
最後に、会場内にも掲げられている彼女の言葉を引用させていただきます。
“Life is what we make it, always has been, always will be.”
人生は自分で作りあげるもの。これまでも、これからも。――グランマ・モーゼス
タイトル | 生誕160年記念 グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生 |
会期 | 2021年11月20日(土)〜2022年02月27日(日) |
会場 | 世田谷美術館 1階展示室 |
住所 | 〒157-0075 東京都世田谷区砧公園1-2 |
Webサイト | https://www.grandma-moses.jp/ |
開館時間 | 10:00~18:00 (最終入場時間 17:30) |
休館日 | 月曜日(祝・休日の場合は開館、翌平日休館) |
チケット情報 | 本展の鑑賞は展示室内の混雑を避けるため、日時指定券のご購入が必要です。 詳しくはこちらをご覧ください。https://e-tix.jp/grandma-moses/ |
料金 | 一般 1,600円 65歳以上 1,300円 大高生 800円 中小生 500円 グッズ・セット券オンライン限定 2,180円※障害者の方は500円。ただし小中高大生の障害者は無料。介助者(当該障害者1名につき1名)は無料。 |