アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ in アーティゾン美術館

アーティゾン美術館では、「アートを楽しむ ―見る、感じる、学ぶ」が2023年2月25日(土)から5月14日(日)まで開催されています。同館はこれまでにもさまざまなラーニングプログラムを通じて、私たちの作品鑑賞をより楽しく深いものにしてきた実績があります。本展はそうしたプログラムの成果をもとに、作品を楽しむための３つのセクション（視点）で構成されているので、より多くの学びや気づきのあるアート体験になるでしょう。

「アートを楽しむ ―見る、感じる、学ぶ」は、肖像画、風景画、日常空間にフォーカスした３つのセクションで構成されています。いずれも同館の所蔵品の中から厳選された作品が、セクションのテーマに沿って展示されています。
今回はただ観るだけでなく、より深く学べる展示方法になっているので、いつもとは違う楽しみ方ができるでしょう。また、関連した各種ラーニングプログラムの開催も予定されているので、そちらも楽しみです。

【展覧会構成】

セクション1　肖像画のひとコマ ―絵や彫刻の人になってみよう

セクション1では自画像と、特定の人物を題材とした肖像画／肖像彫刻の２つの枠組みで作品が紹介されます。いずれも私たちが、絵や彫刻の中の人物の気持ちになってみて、それぞれの人物やストーリーを体験していくように構成されています。

自画像は描かれた作家自身に想いを巡らせ、作品を生み出されるさまざまなプロセスや自己省察、野心にも想像をふくらませて味わえます。そうしたヒントがレンブラントやエドゥアール・マネなどの自画像より紹介されています。
特定の人物を題材とする肖像画／肖像彫刻もまた、制作活動を中心に据えた「画家とモデル」という特別な時間を経て生み出されます。題材や、モデルとの出会いや関係性、真実のその人らしさなどを発見する楽しさを、パブロ・ピカソの描いた道化師や、青木繁《海の幸》に触発されて現代美術家の森村泰昌が制作した《Ｍ式「海の幸」》など を通じて体験します。

セクション2　風景画への旅 ―描かれた景色に浸ってみよう

セクション2では風景画を、描かれた自然と街とに分けて鑑賞します。描かれた季節や感覚に着目する鑑賞のためのキーワード、そして場所の情報や資料も参照しながら、描かれた景色を体感する旅へと出かけます。

風景は私たちの身近にあり、風景を眺めて何かを感じたり、もの思いにふけったり、時には人間の力の及ばない光景を崇めたり恐れることもあります。また、描かれた時代や社会の自然観、空間の意識などを伝えてくれます。
クロード・モネ《黄昏、ヴェネツィア》や岸田劉生《街道（銀座風景）》の中を、その時代の感覚に“時間移動”し、実際に旅して歩いているかのようにイメージをふくらませて鑑賞することで、風景画に描かれた世界観がさらに広がります。

セクション３　印象派の日常空間 ―近代都市パリに行ってみよう

セクション３は印象派の画家たちが活躍した、19世紀も最後の四半世紀を迎えようとするパリが舞台です。この頃のフランスは近代化を推し進める中で急速な変化を遂げました。そうした高揚感に満ちた時代のパリの、生活、環境、風俗などの社会的な背景や、新しい時代を生きる画家たちの想いが紹介され、彼らが描いた情景を体感することができます。

この新しい時代にふさわしい、視覚的に明るさや鮮やかさが保たれる技法も開発されました。ベルト・モリゾの《バルコニーの女と子ども》、ギュスターヴ・カイユボット《ピアノを弾く若い男》など、印象派の画家たちの作品が紹介されます。