今井俊介 スカートと風景 in 東京オペラシティ アートギャラリー

東京オペラシティ アートギャラリーでは、「今井俊介 スカートと風景」が2023年4月15日（土）から6月18日（日）まで開催されています。今回が東京の美術館での初個展となる今井俊介は、国内外で作品を多数発表し、国内の美術館に作品が収蔵されるなど、気鋭のアーティストとして注目されています。本展は2022年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催された同名の展覧会の巡回展となっています。
鮮やかなストライプを特徴とする絵画シリーズ《untitled》の原点となる2011年の作品から、2023年現在までの10年以上におよぶ表現がかつてない規模で一堂に紹介されるとともに、東京展では初期作品が新たに加わり、今井の制作活動の全容を目にできる貴重な機会となっています。

スカートのゆらぎを風景ととらえたことがはじまり
今井俊介（1978年～）は、国内外で作品を多数発表し、国内の美術館に作品が収蔵されるなど、気鋭のアーティストとして注目されています。
ストライプや水玉といった単純な色と形の組み合わせによる模様をランダムに配置し、さらにそれらが歪んだり波打ったりすることで生まれる形態をキャンバスに描きだす独特な作風で知られています。

きっかけとなったのは、知人が着ていたスカートだったと、会場内で公開されているインタビュー映像で今井は語っています。人の動きによってゆらぐスカートのドレープの様子を「風景」として認識し、その奥行きやボリューム感の再現を目指す中で表現のキーがストライプになったそうです。逆に、その時にスカートのゆらぎを「風景」と認識していなければ、現在の作品はなかったと語るほどの強いインスピレーションを得た出会いだったようです。

オペラシティの空間にあわせて再構成された展示空間
本展は2022年夏に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催され、大きな話題を呼びました。本展はその巡回展となりますが、東京オペラシティアートギャラリーの空間にあわせた新たな展示として再構成され、大規模なインスタレーションが展開されています。

特に、ギャラリー１から２へ通じる入口に配置された320.0cm×838.0cmの大きな布を使った作品《untitled》は、人が通ると静かにゆらぎ、今井が出会ったスカートの「風景」が再現されているかのように見えます。

また、この作品は“のれん”のようにも見え、実際に“くぐって”先に進むことができます。布を引っ張ったりしなければ通っても大丈夫とのことなので、ぜひ、作品の両脇を迂回せずに、“くぐって”先に進むことをおすすめします。作家の遊び心やホスピタリティに触れ、参加するように楽しむことができるでしょう。

新たな感覚をひらき、作家の現在地を目撃する
今井は店頭に並ぶファストファッションの色彩にもインスピレーションを得ていると言われ、展示会場内に展開された色彩のコンビネーションに、観る私たちも親しみを感じつつ、現代的な空気を感じることができます。インタビュー映像で今井は、作家としての理想もずっとストライプにこだわった表現を続けていきたいと語っています。これからも同じストライプでありながら変化を遂げていくであろう作家の現在地は見逃せません。
また、本展ではストライプに出会う前の作品も紹介されており、そこに至る過程に想いをはせることができます。

またミュージアムショップGallery5では、本展にあわせてオリジナルグッズが販売されます。ポストカードや、今井の作品がプリントされた反物から切り出して製作するトートバッグ、ポーチ、ハンカチ、エプロンなど、こちらも楽しみです。

初期の作品から新作まで、絵画を中心に、立体や映像、インスタレーションなど、さまざまな表現を楽しめる「今井俊介 スカートと風景」。視覚情報が溢れる現代社会を生きる私たちが、今井の生み出す色と形の新鮮なリズムを通して、新たな感覚をひらくきっかけとなるようなアート体験となるでしょう。