NANJO SELECTION vol. 2 岡田菜美個展 「いつか見た青い影 / A Whiter Shade of Pale」in N&A Art SITE
N&A Art SITEでは、岡田菜美の個展「いつか見た青い影 / A Whiter Shade of Pale」が2023年7月3日(月)から7月29日(土)まで開催されています。本展は同ギャラリーの企画運営を行うエヌ・アンド・エー株式会社の代表取締役・南條史生による企画展シリーズ「NANJO SELECTION」の第2弾です。どこかで見たことがあるようで、実は存在しないかもしれない、吸い込まれるような青系の色彩感が特徴的な岡田の作品を通じて、少し不思議にも感じるアート体験をしてみてはいかがでしょうか。
ガラス張りのファサードで、開放感のあるN&A Art SITEのドアを開けると、外光が入る明るい空間によく映える風景画が目に飛び込んできます。最初は具象的にも見える風景なので、何が描かれているか分かる気がして、自然とリラックスしてしまいます。
しかし、実際には、ひとつひとつの作品に向き合っていくと、多くの抽象的な表現が散りばめられていて、見たことがあるような気がするのに、実はどこにもない風景のようで、不思議な感じがしてきます。
いくつかの作品は風景画としての季節感が感じられますが、少し曖昧なものもあり、いつの間にか自分の中の記憶の引き出しがどんどん開けられ、リラックスした気分のまま作品の世界に吸い込まれてしまう・・・それが岡田の作品を通じたアート体験の楽しさのように感じます。
岡田はアクリル絵具を何層にも重ねて、削りだす行為を繰り返すという方法により、抽象と具象が入り混じったような独特の絵画を制作します。作品には、岡田自身が訪れた場所をモチーフとした風景が描かれますが、それらはどこにも存在しない風景のように感じられる一方で、郷愁や既視感をも感じさせます。画面の構成は複雑な遠近と、二重三重の構造になってコントラストを作り出しており、そのために視点の置きどころが定まらず、不思議な感じを与えます。
本展に出展されている「one view」シリーズは、幾重にも重なる「まだ意味を持たない風景」と「意味を帯びた風景」の関係性が表現されているといいます。
「NANJO SELECTION」は、南條史生のキュレーションにより、今後の活躍が期待できる若手作家を紹介する企画展シリーズです。その主旨は、南條自身が以下のようにコメントされています。
「長年、現代美術の普及に尽力し、その間多くの作家、作品に出会ってきましたが、それでもまだ新しい発見を求めて、内外多数の展覧会を見て歩いています。そして多くの作品に出会い、作家との対話を重ねた中から、表現上の独自の発展を模索し、成果を上げ始めている比較的若手の作家に焦点を当て、その活動を紹介していきたいと思います。決して万全とは言えない日本のアートの環境の中で、新しく登場した作家たちの意義ある業績を美術史の文脈の中に位置づけながら国際的に紹介していくことは、日本の美術業界の喫緊の課題だと思われます。」
岡田の作品について南條は、世の中にたくさんある具象の風景画でありながら、あきらかに他の人と違うと指摘しており、「何が彼女の作品を特別なものに見せているのか、皆さんと考えてみたいと思います」と述べています。
なお本展のタイトルを、プロコル・ハルムの名曲「青い影(A Whiter Shade of Pale)」から着想したのも南條とのこと。たいへん親しみやすいメロディながら、歌詞は英語のネイティブにも難解と言わせる味わい深いところが、岡田の作品によるアート体験に通じるようで興味深いです。
N&A Art SITEは昨年に開設されたといい、ガラス張りのファサードがショーケースのようにも見えます。ギャラリーから中目黒駅へ、のんびり目黒川沿いの道を歩きながら、自分が観た作品の意味は何だったんだろう?と考える余裕が生まれる素敵なロケーションにあります。
最後に、その考える手掛かりとなる作家ステートメントを紹介します。
【作家ステートメント】
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ある気配を探している。
すべての人がきっと感じたことがあるもの。
なにかを見たとき、なにかをしているとき、
それを中断するきっかけになるような、ふと外からやってくるもの。
ピンと張り詰めた冬の空気。うだるほどの暑さがもたらす芳醇な夏の匂い。
時間が移ろいゆく中で音も立てずに現れる影のような、万物の残り香。
色を重ねたり削ったりと一直線には進まない行為を重ねることで
その痕跡に近づけるような気がしている。
移ろう時間や気配そのものに少しでも近づくため、
今日も私は霧のような何かを追い求める仕事を続けている。
岡田 菜美
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タイトル | NANJO SELECTION vol. 2 岡田菜美個展 「いつか見た青い影 / A Whiter Shade of Pale」 |
会期 | 2023年7月3日(月)~ 7月29日(土) |
会場 | N&A Art SITE |
住所 | 東京都目黒区上目黒1-11-6 |
Webサイト | https://nanjo.com/nanjo_selection_vol_2-nami_okada/ |
開廊時間 | 12:00~17:00 |
休廊日 | 日曜・月曜・祝日 |
観覧料 | 無料 |