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版画家たちの世界旅行 -古代エジプトから近未来都市まで in 町田市立国際版画美術館

町田市立国際版画美術館では、「版画家たちの世界旅行―古代エジプトから近未来都市まで」が2023年7月22日(土)から9月24日(日)まで開催されています。旅はいつの時代でも刺激あふれる体験です。新しい発見や出会いに期待が高まりますが、今よりも移動が簡単ではなかった時代では、その価値はどんなに高かったことでしょうか。
本展では、町田市立国際版画美術館のコレクションから西洋版画を中心に、旅や移動に関わる16~20世紀の作品が約160点展示されています。“目的地”は古代文明発祥の地であるエジプトから、多くの芸術家を魅了したイタリア、都市と自然が共存するイギリスやフランス、そして高層ビルの建ち並ぶアメリカ・ニューヨークまで、400年の時を超える世界旅行が始まります。

「旅」は古くから西洋の版画家にとって、作品のインスピレーションを与えてくれるものでした。旅立つ理由は、芸術家としての修業や仕事だけでなく観光、社会の変化などさまざまですが、険しい山を馬車で越えたり、大海原を帆船で渡る旅には大きな危険を覚悟する必要があったことでしょう。きっと、旅立つことは人生において大きな決断だったでしょうし、冒険でもあっただろうと想像できます。

19世紀になると鉄道や蒸気船が普及して、版画家たちの行動範囲もヨーロッパ以外の国や地域に広がります。それと同時に、これまで見過ごされてきた身近な自然風景やにぎやかな都市生活にも目が向けられるようになります。
かつて芸術家が旅した時代に想いをはせながら、彼らが訪れたさまざまな国や街、そしてそこで出会った自然や人々の生活などを観ていくと、きっと400年の時を超える世界旅行が楽しめるのではないでしょうか。

【展示構成】
第1章:イタリアを目指す旅
芸術家が自己研鑽を目的に旅行するようになったのは16世紀頃のことです。中でもイタリアは特別な“目的地”だったようで、これに関わる作品が紹介されています。
アルプス以北の「北方ヨーロッパ」の芸術家たちは古代ローマの遺跡やイタリア・ルネサンスの絵画彫刻、そして理想郷を思わせるカンパーニャの風景に憧れ、危険を冒してまで山脈を越える旅に出ました。

17世紀末から19世紀になると、イギリスやフランスの裕福な若者は、イタリアの歴史や文化に触れて教育の仕上げを行う「グランド・ツアー」に出かけるようになります。彼らの間で人気だったのは、ローマやヴェネツィアの名所を表した絵画や版画でした。
●主な出品作家:ピーテル・ブリューゲル(父)、ペーテル・パウル・ルーベンス、クロード・ロラン、カナレット、ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ、ユベール・ロベール、ジャン=バティスト・カミーユ・コロー、J・M・ホイッスラー

第2章:「オリエント」をめぐる旅
19世紀のヨーロッパでは「オリエンタリスム(東洋趣味)」が流行します。「オリエント」の定義は時代によってさまざまですが、地中海のすぐ東に広がるイスラーム世界から、日本を含むアジア、「新大陸」アメリカまで、幅広い地域を含むこともありました。


ヨーロッパの人々は、旅行記などの情報をもとにまだ見ぬ土地のイメージをふくらませていましたが、19世紀には自ら現地を訪れる画家や版画家が増えていきます。彼らにとってオリエントは、西洋から見て「未開の地」であると同時に、原初的な生活が営まれる魅惑的な「楽園」でもありました。そうした時代背景や想いがうかがえる作品が紹介されています。
●主な出品作家:ウィリアム・ホガース、テオドール・ジェリコー、アントワーヌ=ジャン・グロ、ウジェーヌ・ドラクロワ、ジョルジュ・ビゴー、ポール・ゴーガン、フィリップ・モーリッツ、エリック・デマジエール

第3章:「絵になる風景」を発見する旅
産業革命下のイングランドやフランスでは、失われゆく自国の自然や農村、朽ちた歴史的建造物などが「絵になる(=ピクチャレスクな)」テーマとして見直されるようになります。こうした考え方は現代に生きる私たちも大いに共感できるところではないでしょうか。


この章では、「ピクチャレスク・ツアー」が盛んに行われた18世紀末から19世紀にかけて、数多くの挿絵本に表された自然風景や、中世の古城やキリスト教建築などを観ていきます。
また、鉄道の建設が始まった19世紀中ごろには画家や版画家の行動範囲も格段に広がり、アトリエを離れて田園や農村、海岸などの情景が表されたバルビゾン派や印象派の作品も楽しむことができます。
●主な出品作家:J・M・W・ターナー、ジョン・コンスタブル、シャルル=フランソワ・ドービニー、オノレ・ドーミエ、カミーユ・ピサロ、オーギュスト・ルペール、アンリ・リヴィエール

第4章:都市に集う芸術家の旅
芸術の道を志す人々が最初に経験する大旅行は、美術学校があり美術や出版の仕事が集中する都市への移動でした。群衆でにぎわう大通りや空高くそびえる高層ビルなどの都会ならではのモティーフは、彼らの創作意欲を刺激したことでしょう。本章ではそんな都市ならではの息づかいが感じられる作品が紹介されています。


“目的地”となるのはパリとアメリカ。19世紀半ばに人口100万人を超えたパリは、ローマに代わる国際的な芸術都市として多くの人々を惹きつけました。他方でアメリカは、第二次世界大戦期の戦火を避けてヨーロッパを離れて亡命した芸術家がコミュニティをつくり、そこでは実験的な版画が制作されました。こうした戦後のアメリカ美術に多大な影響を与えた作品を観ていきます。
●主な出品作家:シャルル・メリヨン、フェリックス・ヴァロットン、ジョセフ・ペネル、ベルナール・ビュフェ、ピエト・モンドリアン、スタンレー・ウィリアム・ヘイター、イヴ・タンギー、ロイ・リキテンスタイン、木村利三郎、長谷川潔

第5章:現代の「旅する芸術家」
本展の最後では現代の「旅する芸術家」として、世界各地で大規模なアート・プロジェクトを手がけた「クリストとジャンヌ=クロード」の芸術家夫婦と、ヨーロッパからアジア、南極までを旅した版画家ヨルク・シュマイサーが紹介されています。


私たちはインターネットなどの写真や動画などの情報を通じて、頭の中でヴァーチャルな世界旅行を楽しむことができますが、実際に様々な土地を旅してまわり、現地で目にしたイメージから作品のテーマを得る芸術家は今でも少なくありません。彼らの創作活動にとって、旅での出会いや発見は必要不可欠であり、私たちもこうした作品を通じて旅する気分を味わうことができるかも知れません。
●主な出品作家:クリストとジャンヌ=クロード、ヨルク・シュマイサー

タイトル 版画家たちの世界旅行―古代エジプトから近未来都市まで
会期 2023年7月22日(土) 〜 9月24日(日)
会場 町田市立国際版画美術館 企画展示室1、2
住所 〒194-0013 東京都町田市原町田4-28-1
Webサイト http://hanga-museum.jp/exhibition/schedule/2023-538
開館時間 【平日】
10:00 ~ 17:00(入場は16:30まで)
【土・日・祝日】
10:00 ~ 17:30(入場は17:00まで)
休館日 ・毎週月曜日(祝日および振り替え休日にあたった場合はその翌日)
・12月28日~1月4日
料金 【一般】800円(600)
【大・高生】400円(300)
【中学生以下】無料
*( )は20名以上の団体料金
*シルバーデー(毎月第4水曜日は65歳以上の方無料):7月26日(水)・8月23日(水)
*身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者保健福祉手帳をご提示の方と付き添いの方1名は半額
割引 ・リピーター割引(200円引)
・シェアサイクル割引、タクシー割引、パスポート割引、ウェブクーポン(100円引)