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モノクローム 描くこと in 東京都渋谷公園通りギャラリー

東京都渋谷公園通りギャラリーでは、「モノクローム 描くこと」が2023年7月22日から9月24日まで開催されています。本展では、モノクロームの限られた色の中で描かれる独自の世界観に注目し、描くことの本質を探ることをテーマに、7名の作家による絵画や立体など67点の作品が紹介されています。
色づかいの美しさや巧みさは作品を観るときの楽しみのひとつですが、逆に描かれる対象の認識につながり、イメージが限定されることもあります。そういう意味ではモノクロームだからこそ、観る私たちにも、想像を広げる自由がより与えられると言えるのではないでしょうか。本展を訪れ、限られた色の世界に広がる、限りのない表現を、楽しんではいかがでしょうか。

にぎやかな渋谷・公園通りからギャラリーの展示空間に足を運ぶと、描いた作家たちの息づかいがダイレクトに伝わってくるようなモノクロームの世界が静かに広がっています。あるものはのびやかに、あるものは緻密に、シンプルな線と面からは作家たちのみずみずしい感性と、容易にはうかがい知れない思考の軌跡が浮かび上がってきます。

作品の色を白黒のモノクロームに限ってみると、作家ひとりひとりが描き出す独自の世界観がより際立って見えてくるようです。また道具をつかい、線や面で形を描くことも、心の中にイメージを思い描くことも、どちらも「えがく」と言うように、描くという言葉には、広い意味があります。
本展ではそうした視点で、白黒のモノクロームに視点を絞り、独創的な表現などによる多数の作品を通して、国内外で多くの発表歴をもつ作家から、独自に創作を続けてきた近年の作家まで、様々なつくり手による豊かな創造の世界が紹介されています。

使われている道具や表現手法もさまざまで、生み出されるリズムや線の強弱、面のざらつき感などが、それぞれの作家の個性を際立たせています。うち5名の作家については、実際に制作している様子が映像で紹介されています。木炭やペン、ニードルなどの画材や道具を用いて対象を描き出したり、針金など描画には用いられることの少ない素材で形づくられたりする作品や、記された言葉や記号によってイメージが立ち現れてくる映像の様子と併せて展示作品を観ると、表現に潜んでいる細かなニュアンスが理解できて、いろんな発見につながるかも知れません。

作家の記憶や日常の風景、写真や雑誌の切り抜き、楽譜など、身近なモチーフが、新たなイメージで描き出された67点の作品を通して、モノクロームの限られた色の世界に広がる、限りのない表現の世界を楽しみたいと思います。

【作家紹介】

岡元俊雄(OKAMOTO Toshio)1978~
岡元は、墨汁と先を尖らせた1本の割り箸を自在に操り、写真や実際に見たモチーフを新たなイメージに変換して写しとります。その変換するところが彼の特徴であり、魅力です。
最初に描き始めたモチーフはトラックだそうですが、通り過ぎる時に正面、側面、背面の順に見える姿を細かく捉えながら展開図のように描きだしています。人物は、墨汁を飛び散らせながら躍動感のある線を重ねて姿を浮かび上がらせます。いずれも衝動的に表現されたように感じますが、よく観察すると線のリズムや塗り重ねられた絵肌(マチエール)など、考え抜いて描かれているようにも見受けられます。

高橋和彦(TAKAHASHI Kazuhiko)1941~2018
58歳の時に初めて本格的に絵を描き始めたという高橋は、ペンにより高い密度で描き込まれた、喧騒や人の声が聞こえてきそうな街の風景を描き出します。ひとつの作品の中に様々なエピソードがコラージュのように構成され、ひとつひとつが私たちのどこかの記憶とつながってきそうです。建物や群衆の中にユーモラスな人物がこっそり現れたりするのも、とても楽しいです。高橋は300点以上のドローイングを残していますが、自宅では描かず、作業所でしかやらなかったそうです。彼にとって描くという行為・習慣には、どんな意味や規律があったのだろうかと考えると、作品の世界観とともに、彼の人となりにまで私たちの想像が広がります。

たぬきだshin(Tanukidashin)1999~
中学3年生の時からはじめたという針金を素材に造形するたぬきだは、豊かな創造力で膨大な数の作品を生み出しているといいます。彼の立体作品は船や飛行機、ファンタジー小説に出てきそうなキャラクターなどがモチーフになっています。針金でつくられていながら写実的で、躍動感にあふれており、今にも動き出しそうに感じられます。作品に手は触れられませんが、どれも軽くて自立し、一部分が動かせるものもあると聞きます。展示台は少し見下ろすような高さに設定されていますが、ちょっとしゃがんでみて、いろんな角度から作品を眺めると、作品自体のダイナミズムや表情の豊かさに魅了されることでしょう。

西岡弘治(NISHIOKA Koji)1970~
西岡は、施設にピアノと楽譜が寄贈されたことをきっかけに楽譜の模写を始めたそうです。線が独特の揺らぎをもって、近づいたり離れたり、まさに音楽が聞こえてきそうな情感豊かな作品を生み出します。線は全体的に細く見えますが、描き重ねられて太くなったりするところもあり、踊るようなリズム感が楽しくもあります。
楽譜の模写と聞きますが資料映像をみると、几帳面に傍らに置いた楽譜を何度も確認しながら描いており、写経をしているような雰囲気もあります。恐らく、西岡の頭の中では子どもの頃に親しんだクラシックやアニメソングが繰り返し聴こえているのかも知れません。観るあなたの中では、どんなメロディが浮かぶのでしょうか。

平瀬敏裕(HIRASE Toshihiro)1971~
平瀬の創作は、2001年にノートの片隅に8つの×印を描いたことから突然はじまったといいます。作品は色面が並ぶ抽象画のように見えますが、ひとつの色面は無数の×印が集まったユニットになっています。無数の×印を観ていると、ひとつひとつの×印にどんな想いや念が込められているのだろうと想像してしまいます。
×印は、ペンのインクがなくなるまで描き連ねられるため、インクの擦れが自然と濃淡を生みだしています。そのため、濃い×印のユニットと淡い×印のユニットがひとつの画面の中で異なるニュアンスをもって構成されています。その組み合わせや配置は、果たして偶然なのか、意図的なのか、観る私たちもそこまで想像を広げていると、いつの間にか心地よく平瀬の作品世界に入っているようです。

堀口好輝(HORIGUCHI Yoshiteru)1978~
ふくよかで愛らしいモチーフが浮かび上がる堀口の版画は、版となるプレートを直接削って描くドライポイントの技法でつくられています。プレートには金属ではなく、白いボール紙が使われています。鉛筆で描いた下絵の線を、ニードルで削るようにしてなぞったり、手で剥がしたりして作られた原版は、独特のニュアンスを損なわないように注意深く刷られています。会場には原版と刷られた作品の両方が展示されているので、見比べるのも楽しいでしょう。
モチーフは雑誌の切り抜きなどから選ばれているようで、作品のタイトルはモチーフの名がそのまま付けられています。そのモチーフが堀口の頭の中でどのように捉えられ、かたちとなって現れたのか。淡い線や面、インクのにじみなどと共に、そのあたりを想像すると、さらに楽しめるのではないでしょうか。

吉川敏明(YOSHIKAWA Toshiaki)1947~1987
吉川は、モチーフを黒々と塗り込めた大胆な構図の木炭デッサンで知られています。修正や手直しはしないで、身構えることなく軽々と描いていたといいますが、木炭の美しいグラデーションや安定した画面などからはとてもそう思えない、どれも完成度の高い作品です。
施設の農作業で採れたタマネギは繰り返し描かれたモチーフだそうですが、豊かなバリエーションを観ていると、育てたり、収穫したりというシーンの中で、吉川の中でどのように想像力が広がったのだろうと、こちらも想像してしまいます。
展示空間では、壁面に同じサイズの作品が静かに並べられていますが、それが逆に、どの作品にもある闊達な魅力を際立たせているようです。

 

タイトル モノクローム 描くこと
会期 2023年7月22日(土)~ 9月24日(日)
会場 東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室 1、2
住所 〒150-0041 東京都渋谷区神南1-19-8 渋谷区立勤労福祉会館 1F
Webサイト https://inclusion-art.jp/archive/exhibition/2023/20230722-176.html
開館時間 11:00 ~ 19:00
※8月4日、11日、18日、25日の金曜日は サマーナイトミュージアムにつき21:00まで開館
休館日 月曜日(9月18日を除く)、9月19日(火)
観覧料 無料
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