創造の現場―映画と写真による芸術家の記録 at アーティゾン美術館

アーティゾン美術館では「創造の現場 ー映画と写真による芸術家の記録」が2023年9 月9 日（土）から11月19日（日）まで開催されています。本展は映画と写真という2章構成で、日本の近現代美術の制作現場を概観することができる貴重な機会となっています。特に映画は「本当に美術を愛し、理解に努力している人びとの助けとなり、また芸術の先達たちの動く肖像画を伝える」ことを念願して取り組まれた成果です。現代美術の現場を記録し続けた写真家・安齊重男（1939～2020）の写真作品とともに、作家ひとりひとりの制作への情熱と技術に心ひかれ、興味の尽きない時間となるでしょう。

本展は、以下の２章構成となっています。
　第１章 映画のなかの芸術家たちー美術映画シリーズ
　第２章 写真のなかの芸術家たちー安齊重男

第１章では、これまであまり紹介されてこなかった「美術映画シリーズ」の全貌が紹介されています。映像には梅原龍三郎（1888～1986）や高村光太郎（1883～1956）、前田青邨（1885～1977）といった高名な作家たちの制作風景や日常の様子が映し出されており、本展ではこれらの大変貴重な映像資料とともに作家の作品を観ることができます。

アーティゾン美術館の前身となるブリヂストン美術館は、開館翌年の1953年から1964年までに「美術映画シリーズ」として、61人の芸術家を取材し、17本の映画を製作しています。日本映画近代化の立役者ヘンリー小谷の甥で記録映画プロデューサーの高場隆史や、抽象画家の小谷博貞、青木繁の一人息子で尺八奏者の福田蘭童らが製作に携わっており、単なる記録映画ではなく芸術性にも配慮された内容で、どれも映像作品としてたいへん見ごたえがあります。

第２章では、自らを現代美術の伴走者と称し、国内外のアーティストたちのポートレイトや制作現場を写真によって記録してきた安齊重男の作品が紹介されています。アーティゾン美術館には安齊が生前自ら選んだ206 点の写真作品が収蔵されており、それらのなかから特に石橋財団コレクションと関連の深い作家の肖像写真や制作風景などをおさめた約30点がまとめて展示されています。

映画と写真を観ていると、それぞれの作家が何を考え、何にこだわり創造に集中しているのかが伝わってくるような気がします。もっぱら鑑賞するだけの方はもちろん、創造に携わる現代の作家にとっても興味深い展示になるのではないでしょうか。

【美術映画シリーズ 出演作家一覧】
梅原龍三郎、川合玉堂、高村光太郎、鏑木清方、坂本繁二郎、前田青邨
「美術家訪問」シリーズ
伊東深水・川島理一郎・斎藤与里・高村豊周・熊谷守一・平櫛田中・川端龍子
児玉希望・石井柏亭・近藤浩一路・小絲源太郎・木村荘八・北村西望
辻永・中川一政・田辺至、松林桂月・山下新太郎・山口蓬春
梅原龍三郎・中村岳陵・朝倉文夫・中沢弘光・白瀧幾之助・前田青邨
金山平三・奥村土牛・西山翠嶂・堅山南風・飯塚琅玕斎、徳岡神泉・坂本繁二郎
安田靫彦・和田三造・福田平八郎・有島生馬・松田権六・横山大観
高村光太郎・正宗得三郎・結城素明・石川寅治・榊原紫峰・富本憲吉
吉田三郎・小野竹喬・寺内萬治郎・堂本印象・中村研一・鏑木清方・川合玉堂
小杉放庵・野田九浦・斎藤素巌・中川紀元・岩田藤七
清水多嘉示・森田元子・鳥海青児・山本豊市・林武