山田周平|目玉焼き at SOKYO ATSUMI
SOKYO ATSUMIでは山田周平の個展「目玉焼き」が2023年9月19日(火)から11月16日 (木)まで開催されています。ニヒリズムへの関心を背景に、現代社会に対する考察を通じて作品を制作してきた山田が、今回モチーフとするのはシュールレアリズムのアーティストが好んだ“目玉”と“卵”です。どちらの作品にも対象を俯瞰するような鋭い視点が感じられますが、決して批評するわけではなく、時にユーモラスでもあり、観ている私たちの理解に微妙な「ずれ」を引き起こし、「なんだろう、どうして?」という気持ちを抱かせます。展示スペースに満ちている不思議な感覚は、例え動画で撮影したとしても非常に伝わりにくく、あなたもぜひ、体験しに訪れてはいかがでしょうか。
本展の中心となるのが、アルフレッド・ヒッチコックの映画「白い恐怖」からインスパイアされた、直径2mにも及ぶ目玉が描かれた5体のバルーン作品《EYE》です。1945年に制作されたこのサイコスリラー映画では、精神分析医が主人公に夢を語らせて診断する、夢の回想シーンの舞台美術のデザインにシュールレアリズムの奇才サルバドール・ダリが協力していることが広く知られています。山田はシュールレアリズムのアーティストが好んだ目玉をモチーフとして用いながら、今の社会を描写しているといいます。
バルーンにはAIにより画像生成されたものをベースに“目玉”が描かれていますが、睨まれているような感じはありません。「目玉_ゾンビ」、「目玉_かわいい」をキーワードに画像生成されたといい、キラキラした目や少しうつろな感じのする目もあります。バルーン自体もいっぱいに空気が入っているわけではないので、その表面は緊張感がなく、ゆったりとした印象を与えています。
その5体のバルーンが黄色い羽根の扇風機からの風によって、互いにぶつかりあいながら、ゆらゆらと揺れ動いています。その様子はイメージ (情報) に消費・翻弄される現代社会と重なるようでもありますが、決して社会批評ではなく、ちょっとしたアイロニーとして、今を生きる私たちに向けられた視線を感じます。
山田は1974年生まれで、現在は京都を拠点としながら精力的に活動を展開し、その表現は、写真、ビデオ、インスタレーション、平面と多岐にわたっています。写真家としてキャリアをスタートさせた山田は、2003年写真新世紀優秀賞、群馬青年ビエンナーレ入選、10年ゲイサイ(GEISAI)金賞受賞を果たしています。東京のみならずロンドンやニューヨークなどで個展を開催し、2013年開催のアーモリーショーでは、唯一の日本人として当時のアンディウォーホール美術館 (ピッツバーグ) 館長のエリック・シャイナーにより選出され、様々なメディアでも話題となりました。
本展のもうひとつの平面作品である《卵》もまた、ダリやルネ・マグリットがしばしば取り上げた卵がモチーフになっています。創造の象徴ともいえる卵の中に建物が燃える様子が描かれています。卵の持つ意味とは反対ともいえる破壊のイメージをコラージュすることで、観る私たちの想像力を挑発しているかのようです。
5体のバルーンは手で触ったり、抱きついたりすることはできませんが、壁側の裏に回ったり、間を通り抜けることができます。ぼんやり、心をからっぽにして観ていると、なんだか親近感もわいてきます。
一般のご家庭だと直径2mの作品を置くのは難しいと思いますが、制作期間をいただければ、希望のサイズにスケールダウンした“目玉”のバルーン制作にも相談に応じることが可能だということです。ちょっとキモカワな感じのするバルーンを身近におくのも楽しいかもしれません。
とても不思議な感覚に包まれる、山田の作品に出合いに訪れてはいかがでしょうか。
タイトル | 山田周平|目玉焼き |
会期 | 2023年9⽉19⽇(⽕) ~ 11⽉16⽇(⽊) |
会場 | SOKYO ATSUMI |
住所 | 〒140-0002 東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA ART COMPLEX II3階 #304 |
Webサイト | http://gallery-sokyo.jp/exhibitions/ |
開廊時間 | 11:00 ~ 18:00(火 ~ 木)、11:00 ~ 19:00(金・土) |
休廊日 | 日曜日・月曜日 |
観覧料 | 無料 |