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南条嘉毅 個展「senne」 in ART FRONT GALLERY

アートフロントギャラリーでは、南条嘉毅 個展「senne」が2023年10月7日(土)から10月22日(日)まで開催されています。
本展のタイトルである「senne(センヌ)」はポーランド語で「眠る」または「夢の中」という意味があり、南条が訪れた地方の民具に眠る忘れられた歴史や個人の記憶をすくい上げようというところから名づけられました。演劇の舞台装置のようにも見える、没入感のあるインスタレーションの他、未発表のドローイングや、名画にインスピレーションを得た絵画作品など、南条ならではの世界観が展開されています。あなたも、この世界観でひとときのうつろいを楽しんではいかがでしょうか。

旧山手通りに面した展示室に展開されているインスタレーションに足を踏み入れると、光と音と、そして床に敷きつめられた砂の感触が足の裏から伝わって、一気に非日常的な世界に引き込まれます。砂は、養老川にダムが作られて形成された人造湖・高滝湖(千葉県市原市)で浚渫された時に採取されたものだそうで、湖の底にはかつてあった集落が沈んでいるという記憶がある場所でもあります。塩分を帯びた海砂なら踏むたびに固く締まっていくのですが、作品で使われている川砂はふわふわで、やさしさにあふれているようです。

壁面に配置された複数の古民具の鏡には、交互に映像が映し出されていきます。くすんだ鏡には自分の影や、表の代官山の雑踏が映るのですが、それが映像に切り替わると鏡の向こうにまったく別の世界が広がっているように感じられます。
ぽつんと置かれたテーブルとイス。そして時おり響く古民具を用いた音の出る彫刻の音色や、足元を照らし出す琥珀色の光が差し込んでくると、夢か“うつつ”か、まさしくsenneの意味を実感することになるでしょう。

南条嘉毅は、2016年に生活の中心を東京から和歌山に移すと、地域のことを体感的に吸収し、平面作品による表現から脱却の兆しを見せ始めます。2017年にアートフロントギャラリーで行われた展覧会では、暗闇に一筋の光と細かい土が降り注ぎ堆積していくという、これまで絵画で表現してきた時間と空間を、異なる方法で表現してみせました。これがきっかけとなり、音、光、空間を使い演出をすることでその土地の歴史や文化を見せるという総合的な表現を追求していくこととなりました。
本展のインスタレーションでは特定の場所とは関連づけられていないようですが、何かしら私たちの意識の中にある、どこかの記憶と結びついていくような気がします。

この他、本展では近年開催された瀬戸内国際芸術祭や奥能登国際芸術祭でのプランドローイングが展示されており、それらと併せて2002年に東京造形大学研究科(絵画)を修了後、当初取り組んでいた土を使った絵画表現の作品も観ることができます。

土を使った作品はギュスターヴ・クールベの《嵐の後のエトルタの断崖》(1870年)やジャン=バティスト・カミーユ・コローの《シャルトル大聖堂》(1830年頃)などをモチーフにしており、いずれも南条が実際に現地を訪れて、その印象を基に、実際にその場所の土を使って制作されています。これらの作品を見ていると、南条にとっての時間と空間、あるいは土地の歴史や文化が持つ意味が、少しうかがい知ることができるように思います。

旧山手通りに面した展示室のインスタレーションの音と光の演出は、30分サイクルで繰り返し行われていますが、本展では特別に、ギャラリーが閉まった後も朝まで内部の演出が行われています。閉廊後はガラス越しにはなりますが、外からでも眺めることが可能なので、昼と夜で違う表情を楽しめる点も大きな見どころです。一度はギャラリーが開いている時間に訪れることをお勧めしますが、夜に、思い立った時でもOKなので、ぜひ、お出かけしてみてください。

タイトル 南条嘉毅 個展「senne」
会期 2023 年10月7日(土)~ 10月22日(日)
会場 ART FRONT GALLERY
住所 東京都渋谷区猿楽町 29-18 ヒルサイドテラス A棟
Webサイト https://artfrontgallery.com/exhibition/archive/2023_08/4874.html
開廊時間 水・木・金 12:00~19:00
土・日 11:00~17:00
休廊日 月曜日、火曜日
観覧料 無料