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ショナ・トレスコット A Minute to Midnight in ANDO GALLERY

オーストラリア生まれの作家ショナ・トレスコットの個展「A Minute to Midnight」がアンドーギャラリーで開催されています。4 年ぶりの発表となる本展では、キャンバスに油彩で描かれた新作絵画24 点が展開されています。
何の予備知識もなく展示スペースに進み、彼女の作品を拝見すると、1回目は「これは、ただの美しいだけの“風景画”ではないな」という良い意味での違和感を抱きます。ショナ・トレスコットはかねてより「人間と自然との関係」を主題にされており、何度も見るうちに違和感の原因がそこにあることに気づきます。環境問題にも通じる社会的なメッセージも込められているようですが、決して押しつけではなく、作家の想いが素直に観る者の心に入ってくる魅力的な個展です。

自然、愛、恐れ、神話の本質を探求し続けている
ショナ・トレスコットは1982 年にシドニーの北約150㎞にあるメートランドに生まれ、シドニーの国立芸術学校絵画専攻を卒業後、風景画を中心に「人間と自然との関係」を主題とする絵画作品を発表し、高い評価を受けています。科学的なデータ、現地でのリサーチや想像、そして彼女の私的な物語に結びつく記憶など、さまざまな領域を参照することによって、自然、愛、恐れ、神話の本質を探求し続けています。
アンドーギャラリーのエントランスには2010年の秋にこちらで開催されたショナ・トレスコットの個展の図録が販売されています。この図録に掲載されたすべての作品には、水平的に構成された風景の中に必ず人物も描かれています。ところが本展では人物が描かれた作品は数点しかありません。また4年前の出品作に比べ、色彩が明るいトーンになっているそうです。そうした変化の要因はどんなところにあるのか、興味深いところです。

研究所で科学者たちとともに過ごしながら制作活動
ショナ・トレスコットは、故郷であるオーストラリアの想像を絶する美しさとはかなさを併せ持つ風景に惹きつけられ、今回の作品に取り組みました。この新シリーズのテーマはLand’s End(陸の果て)です。地球物理学ではLand’s End という言葉は、海と大地、大地と空、空と海の境を隔てることによってかたちづくられた「端」を意味します。
彼女はグレート・バリア・リーフに浮かぶ手付かずの小さな島にある「ワン・ツリー・アイランド科学研究所」に滞在し、気候変動について研究している科学者たちとともに過ごしながら制作活動を行ないました。この世界最大のサンゴ礁地帯は国際的にも大きな問題を抱えた場所として、同時に、未知の領域や科学研究の最先端を探求できる場所として、彼女はこの環境と関わりあったのです。こうした自然環境への強い関心や問題意識は、他にも干ばつで荒廃したオーストラリア内陸のマレー川を描写した作品などにも見られ、人物は描かれていないものの、人間の営みによる影響や産業規模で行われる搾取によって極度にストレスがかかった風景が描かれています。
こうした問題意識が直接的に表れている作品も数点ありますが、多くはショナ・トレスコットの心象を静かに描き出しているようです。その風景は特定の場所や時間ではなく、誰でも見たことがある気がする美しい景色で、しかも「人間と自然との関係」の本質に関わる広大な何かを含んでいるようにも見えます。まさしくそれは、私たちが探そうとしている目的地=Land’s End(陸の果て)であり、大きな共感を呼び覚ますものだと思います。

豊かな緑に出会うアートウォーク
アンドーギャラリーは広大な緑が目に優しい木場公園や木立の中を小川が流れる福富川公園のすぐ近くにあります。また斜め向かいにはニュージーランドで生まれた、居心地の良い空間でおいしいコーヒーをいただけるAllpress Espressoもあります。
清澄白河駅(半蔵門線・大江戸線)や木場駅(東西線)から、ぶらぶら散歩しながら素敵な作品に出会うために、お出かけしてはいかがでしょうか。

タイトル

ショナ・トレスコット A Minute to Midnight

会期

2020 年9 月15 日(火)~ 12 月19 日(土)

会場

ANDO GALLERY(アンドーギャラリー)

住所

〒135-0023 東京都江東区平野3-3-6

Webサイト

http://www.andogallery.co.jp

開廊時間

11:00 ~ 19:00

休廊日

日・月・祝日休

料金

無料

備考

新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、入廊時に以下の手続きがあります。
・来廊者様の検温(37.5℃以上の場合は入廊をお断りすることがあります)
・来廊者様の連絡先の記入