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長沢 秀之|『「C通信Ⅱ」ネクロポリ- 島』 at GALLERY MoMo Ryogoku

GALLERY MoMo 両国では、長沢秀之の個展『「C通信Ⅱ」ネクロポリ- 島』が2024年6月1日(土)から7月6日(土)まで開催されています。本展は、2022年の個展『「C通信」— 目の記憶 -』の続編と位置づけられており、長沢がコロナ禍で見た夢をもとに描いた鉛筆ドローイングを写真に撮り、さらにPhotoshopで加工し、高機能プリンターでプリントアウトするというプロセスで制作された作品が、展示キャプションにつづられたストーリーとともに展示されています。作品世界に入り込んでいくと、夢と現実の境界線があいまいになり、不思議な感覚にとらわれます。あなたもぜひ、ここでしか得られない体験をしてみてはいかがでしょうか。

どこかでつながっている夢と現実の世界

長沢の作品は「夢日記」が材料になっているといいます。私たちは、何も夢を見ない夜が続くのはあまりないことだと思いますが、「夢日記」をつけている人は珍しいかもしれないので少しご説明します。
私自身はこれまで断続的に「夢日記」をつけています。朝起きて、見た夢をすぐにメモしないと忘れてしまうので、なかなか継続的にできるわけではありません。それでもいちばん古い高校2年の時のものを読み返すと、友達と自転車で旅行に行くようすなどが書かれていて、他の年代のものもそうですが、その時にしか起こりえないことを夢に見ていることが分かります。したがって、どういう脈絡なのかは正確に説明できませんが、夢と現実の世界はどこか、何かしらでつながっているような気がするのです。

 

ストーリーと画面を一体になって楽しむ

本展は、観る順路が指定されています。しかも、それぞれの作品のグループには少し長めのキャプションがつけられていて、ストーリーと画面を一体になって楽しむように展示が構成されています。
前回の作品では“オレたち”がひとウサギに「ここは死者のこたつです。オマエらはここに入れない。なぜならボディをもっていないからだ。早く出て行け!」と言われ、あちこちさまよう中で、死者の世界、時空を超えた世界に入っていくという構成で制作されました。


しかし本展では、はじめから死者の街であるネクロポリに入っていく場面が描かれています。長沢によれば、以前何回か訪れたことがあるイタリア・タルキニアのネクロポリの記憶が、ウクライナやガザの戦争とともに蘇ったと言い、前回の展示がCOVID-19からの『なぞかけ』に応えようとするものであったように、今回は戦争や死が『なぞかけ』として作品に反映されています。

空間だけでなく時間や記憶の問題も提起

長沢秀之は1947年に埼玉県に生まれ、1972年に武蔵野美術大学卒業後、映画制作などを経て、1979年から美術作家として本格的な活動を始めました。また、2022年までは武蔵野美術大学油絵学科(現在、同大学名誉教授)や神戸芸術工科大学の客員教授として学生の指導にあたっています。


2000年から進めてきたドットによる作品の皮膜シリーズでは、2次元の平面に奥行きが生じるという絵画の原初的疑問に応えようとしています。一方で2014年のGALLERY MoMoで発表した「絵画の中のあらゆる人物は亡霊である」展、ドローイング+文章の「心霊教室」展、2017年の「未来の幽霊」展などは、画像がもつ人間とは別の視覚の解釈に絵画の奥行きを重ね、空間だけでなく時間や記憶の問題も提起してきました。 

人間の手とデバイスの手による結合

本展で展示する作品は死者の存在が大きなテーマとなっており、死者に関連する記述やモチーフとして石が頻繁に取り上げられ、実際の石も展示されています。そして、もうひとつの大きなテーマが「ボディ」なのですが、長沢はこれについて、主として物語の最終章である第五章「記憶島」で描き、具体的に言及しています。それは第一章「月のウサギを運ぶ」から連なるストーリーのエピローグであるとも言えるので、全文が読めるWebサイトか、ギャラリーで販売されているブックレットでじっくりストーリーを読んでみることをお勧めします。


また、実際に紙に描いたドローイングは一点も展示されず、作品として展示されている顔料インクのマット紙も、パソコンやスマホで見る透明な画像とは違ってひとつのボディとして区別されています。そのあたり、長沢は人間の手(文字通りのボディ)とデバイスの手(もうひとつのボディ)による結合を試みているようです。
また、販売されているブックレットには椹木野衣氏が寄稿しており、夢と現実の世界についてや、なぜPhotoshopで加工するのかについて、別の角度で解説されているのでギャラリーでご一読されることをお勧めします。

本展は、実際にギャラリーでのアート体験だけでなく、その後もいろんなカタチでその体験を確かめ、深く考える楽しみを提供してくれます。ぜひ、お出かけください。

タイトル 長沢 秀之|『「C通信Ⅱ」ネクロポリ- 島』
会期 2024年6月1日(土)~ 7月6日(土)
会場 GALLERY MoMo Ryogoku
住所 130-0014 東京都墨田区亀沢1-7-15
Webサイト https://www.gallery-momo.com/current-ryogoku
開廊時間 11:00 ~ 19:00
休廊日 日曜・月曜・祝日
観覧料 無料