第14回 shiseido art egg 西 太志展 in 資生堂ギャラリー
資生堂ギャラリーでは公募プログラム第14回「shiseido art egg(シセイドウアートエッグ)」入選者3名の内の1名、西太志さんによる個展「GHOST DEMO」が開催されています。
公募プログラム「shiseido art egg」は2006年から始まっており、1919年のギャラリーオープン以来の活動理念である「新しい美の発見と創造」をまさに体現するような、瑞々しい新進アーティストを応援する取り組みとして続けられています。
公募プログラムとは言え、入選者は通常の企画展と同様に資生堂ギャラリーの担当キュレーターと話し合いを重ね、ともに展覧会を作り上げている点は大きな特徴です。資生堂ギャラリーならではの地下の大空間で、絵画と立体作品を交えたインスタレーションによる作家独自の世界観が展開されているところが大きな見どころです。
都内にはあまりない、胸躍る“導入部”
地下階にある資生堂ギャラリーへはエレベータでも行けますが、できれば階段の利用をおすすめします。一歩ずつ降りる毎にどんな作品に出会えるかとワクワクしますが、ちょっと秘密めいた場所に向かっているようでドキドキもします。こうした構造は都内のギャラリーや美術館でも見かけることがあまりなく、それが独特の“導入部”を作り出しています。
今回も階段の踊り場でまず目に飛び込む作品は「明晰夢の案内人」と「光の粒が海に浮かぶ」で、この先に拡がっている世界観を暗示するようです。
作家との共鳴点を探す現代アートならではの楽しさ
存命中の作家の作品を観る時の楽しさのひとつとして、自分と同じ時代を生きている人間が生み出した表現であるという点があげられます。つまり、作家が日常生活の体験や情報に接したときに感じ、考えたことは少なからず表現のバックグラウンドにあります。私たち観る側も、同じ日本で日々を暮らし、感じていることがあり、そこで作家と共鳴できる部分を感じたり、探すことは特に現代アートならではの楽しさではないでしょうか。
西さんの作品の魅力はいくつもありますが、その共鳴できる部分がストレートに入ってくるので、作品の意図をあまり細かく読み解かなくても、どんどんその世界観の中に入っていける点は特徴的だと思います。
黒を基調とした暗いトーンの絵画は、前面に無軌道に渦巻く描線や、風や炎、木の茂みの勢いなどを感じさせるモチーフなどが不安感や心の不均衡を感じさせます。こうした描線やモチーフが共鳴しやすい主な部分であり、時節柄COVID-19を連想してしまうのですが、その中に描かれている人物やGHOSTはどこか牧歌的にも見え、恐らく西さんはもっと広いところを観ているんだろうなと感じます。
西さんは、虚構と現実の境界や匿名性をテーマに絵画と立体作品を制作されてきたそうです。「世界中の出来事を簡単に知ることができる現代社会において、インターネット上で拡散される文字や画像から受ける現実味を伴わない感覚や違和感を起点に、自身の経験や記憶を織り交ぜながら作品へ変換する」ということで、そこで情報の再構築を図る制作姿勢が観る者の共鳴や共感を呼ぶのだと考えられます。
LIVE感のあるインスタレーション
西さんの絵画は映画のワンシーンを観ているようなストーリー性にあふれています。奥に展開されているインスタレーションは、その“映画のメイキングスタジオ”を訪れているような楽しい空間になっています。
陶製の黒いオブジェや、衣類に陶土を染み込ませて焼成した立体作品、なぜかセーターを着ている人物?など、荒々しい筆づかいが感じられる絵画と同様に、非常にラフな感じでありながらLIVE感のあるインスタレーションになっています。また、ギャラリーへ階段を使って降りていくときに下から見下ろせるので、期待感を高揚させてもくれます。
ぜひ、絵画とインスタレーションがゆるやかに結びついた独特の世界観に遊びに行かれてはいかがでしょうか。
タイトル | 「第14回 shiseido art egg」 西 太志展 |
会期 | 2020年10月2日(金)~10月25日(日) |
会場 | 資生堂ギャラリー |
住所 | 〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階 |
Webサイト | https://gallery.shiseido.com/jp/ |
営業時間 | 平日 11:00~19:00 日曜・祝祭日 11:00~18:00 |
休館日 | 毎週月曜日 ※月曜日が祝祭日にあたる場合も休館いたします。 |
料金 | 無料 ※館内のソーシャルディスタンスを確保するため、事前予約制となっています。 詳しくはこちらをご覧ください。https://artsticker.app/share/events/detail/270 |