第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap in アーティゾン美術館
アーティゾン美術館では第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展「ダムタイプ|2022: remap」が2023年2月25日(土)から2023年5月14日(日)まで開催されています。ダムタイプは日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在であり、1984年の結成時から一貫して、身体とテクノロジーの関係を独自な方法で舞台作品やインスタレーションに取り組んできました。本展では坂本龍一氏を新たなメンバーに迎え、ヴェネチアで発表された新作《2022》が、帰国展として再構成して紹介されます。今、この世界で起きていることを彼女/彼らが感じ取り、議論し、どう表現されているのか、ぜひとも体験したいものです。
※アート・コレクティブ:アーティストによって形成された集団
最新の現代アートの動向を発信するヴェネチア・ビエンナーレ
ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展は、1895年に発足した世界でもっとも長い歴史を誇る国際美術展です。2年に一度開催され、常に現代アートの最新動向を発信する場として世界が注目しています。日本は1952年の第26回展より参加しており、1958年に完成した日本館を会場に、毎回、日本代表作家の作品が紹介されています。
公益財団法人石橋財団は、近年、この日本館展示への支援を行っています。また、財団創設者の石橋正二郎氏が1956年に個人として日本館の建設寄贈を行った経緯など、いくつかのつながりがあって、2020年にアーティゾン美術館が開館した時から、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示の帰国展が開催されています。
なかなかヴェネチアへは行けない私たちにとって、毎回、観るのが楽しみな企画です。
今回の帰国展はダムタイプの新作を再構成して紹介
そして、2022年の4月から11月に開催された第59回展には、日本のアート・コレクティブの先駆け的な存在であるダムタイプが選ばれました。1984年の結成時から一貫して、身体とテクノロジーの関係を独自な方法で舞台作品やインスタレーションに織り込んできた彼女/彼らが、坂本龍一氏を新たなメンバーに迎え、新作《2022》を発表しました。
今回の帰国展は《2022》を、単純に再現展示するのではなく、アーティゾン美術館6階展示室の空間に《2022: remap》として、サイト・スペシフィックに再構成して展示されます。
集団での共同制作の可能性を探る活動を続けてきダムタイプ
ダムタイプはビジュアル・アート、映像、コンピューター・プログラム、音楽、ダンス、デザインなど、様々な分野の複数のアーティストによって構成されるグループです。その特徴のひとつは作品を生み出すプロセスにあります。
特定のディレクターやリーダーが不在で、プロジェクト毎に参加メンバーが変わりますが、ヒエラルキーのないフラットなコラボレーションで徹底した議論やプレゼンテーションを経て作品を生み出していく制作活動は、既成のジャンルにとらわれない、あらゆる表現の形態を横断するマルチメディア・アートとして内外で紹介されています。
またダムタイプの作品の魅力のひとつとしてあげられるのが、世の中をとらえる視点や問題提起であったりする現代性や批評性です。本展の《2022》は「ポスト・トゥルース時代におけるコミュニケーションの方法や世界を知覚する方法について思考を促す」とされています。
ポスト・トゥルースとは、2016年を皮切りに膾炙した、「客観的な真実」よりも「主観的あるいは叙情的な意見」が集団的な影響力を持ちやすくなった現代の状況を指す言葉です。これはまさしく、私たちが日々の暮らしの中でなんとなく感じている、興味深い主題ではないかと思います。
※膾炙(かいしゃ):広く言われていること、広く知られていること。
この《2022》は、各国パヴィリオンが並ぶヴェネチア・ビエンナーレにおいて、今日の地政学的境界、あるいは国境を越えて共通のインフラとなっているインターネット空間を基調としたコミュニケーションのあり方に問いを投げかけました。本展ではこれが、サイト・スペシフィックに再構成されて展示されています。
《2022》には坂本龍一氏が初めてメンバーとして参加
《2022》のもうひとつの注目ポイントは、ダムタイプ創設時からのメンバーである高谷史郎氏と、2000年代後半より何度も作品を作り続けてきた坂本龍一氏が、初めてダムタイプのメンバーとして作品の制作に関わったことです。あくまでも想像ですが、ダムタイプの通常の制作と同じく、議論に参加された上での発表だと考えられるので、そこで起きた“化学反応”も期待してしまいます。
坂本氏は本作のために新たにサウンドトラックを制作しましたが、それだけでなく、坂本氏の呼びかけにより世界各地でフィールドレコーディングされた音が、ダムタイプの視覚言語を通じて、その場に立って各人が耳を澄ませることの意味、機械を通じた知覚のあり方を浮き上がらせます。
また1850年代の地理の教科書から引用された普遍的な質問のテキストが、独自のレーザー装置で壁に投影され、坂本氏の友人たち(デヴィッド・シルヴィアン氏やカヒミ・カリィ氏ら)による朗読の音声によって周囲を取り囲み、見えるか見えないか、聴こえるか聴こえないかの境界線上で表現されます。
これまでのダムタイプを凝縮して体感
ダムタイプは、1980年代中盤より映像、音、機械装置、空間の先進的な組み合わせによって、驚くべき速さで更新されていくテクノロジーと身体の関係に、都度、鋭い問いを投げかけてきました。そのインスタレーション作品はパフォーマンス作品と連動し、《2022》も、18年ぶりの新作パフォーマンス《2020》と関係しているといいます。
また、本展の《2022: remap》では、過去作《Playback》で使用したターンテーブルや、《TRACE/REACT II》の表現言語が新たに交わり、それ以前のヴィジュアル/サウンド表現が組み合わされ、なおかつ更新され、ダムタイプの創造性や関心を寄せている部分を感じることができます。
私たちと同じ時代を生きるアーティストたちが共同制作した作品を通して、あなたも“今”に耳をすませ、目をこらしてはいかがでしょうか?
タイトル | 第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap |
会期 | 2023年2月25日(土) ~ 5月14日(日) |
会場 | アーティゾン美術館 6階 展示室 |
住所 | 東京都中央区京橋1-7-2 |
Webサイト | https://www.artizon.museum/exhibition_sp/dumbtype/ |
開館時間 | 10:00–18:00(5月5日を除く金曜日は20:00まで) *入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日 |
同時開催の展覧会 | ・アートを楽しむ ー見る、感じる、学ぶ ・石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 画家の手紙 |
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