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東弘一郎 個展「HANMA」in ART FRONT GALLERY

アートフロントギャラリーでは、人が動かす彫刻をテーマに作品を制作する東弘一郎の初個展「HANMA」が2023年6月9日(金)から7月16日(日)まで開催されています。彼は昨年、越後妻有 大地の芸術祭、並びに銀座シックスや六本木アートナイトにおいて、自転車を利用した子どもでも楽しめるサイトスペシフィックアートやインスタレーションアートで大きな注目を集めました。今回は東にとって初となるコマーシャルギャラリーの展示空間で、いろいろな意味でこれまでとは違う新しい展開を見せています。きっと興味深く、ここでしかできないアート体験になるでしょう。

代官山交番前の交差点に立つと、アートフロントギャラリーに展示された作品《都市の半間》がガラス越しに目に飛び込んでくるので、入る前から好奇心がかき立てられます。同ギャラリーの別のスペースでは《都市の半間》の制作過程におけるスケッチの他に、越後妻有 大地の芸術祭2022で発表され、現在も展示中の《廻転する不在》の35分の1模型や資料などが展示されています。

 

《都市の半間》は、千葉県香取市佐原の大祭に登場する山車の車輪である「半間(はんま)」をモチーフにした彫刻作品です。佐原は江戸時代から水運で栄えた町です。佐原の大祭は7月の夏祭りと10月の秋祭りの総称で、関東三大山車祭りのひとつとされています。約300年の伝統があり、国の重要無形民俗文化財やユネスコ無形文化遺産に指定されています。

東はこの「半間」に興味を持ち、その歴史や作り方などを研究してきました。社会のシステムや環境の変化により、半間が太古の昔から変わらない伝統的な姿を保つことが現代社会においてはどんどん難しくなっているといいます。東は、その在り方を現代的に解釈し、体験型のアートインスタレーション作品として《都市の半間》を企画しています。

作品の近くには、大祭の山車に《都市の半間》が実際に装着されている様子が動画で紹介されています。本作品は都市という現代社会の象徴と、伝統的な祭りの文化が交わる点に着目したとされていますが、このような伝統あるお祭りとのコラボレーションで、地縁のない東が保存会など地域の人々に制作の意義を理解してもらい、構想をかたちにしていったことは、生半可な熱量では実現できないだろうなと容易に想像できます。

この半間が1.8メートル大きさの木製車輪として再現された《都市の半間》は、観る私たちが自転車に乗って漕ぎ、半間を回転させることができます。回転させると2つの半間が擦れ合いながら木屑を生み出し、大祭の山車の車輪がアスファルトで削れていく様子を、すり減る木製車輪と木屑によって表現しているといい、また、作品が常に変化していく様子も楽しむことができます。

見た目はちょっと重たそうですが、東の作品の多くは、観る私たちが自転車を漕いでみることを前提としたアート体験が想定されています。観るだけで乗らないと体験の価値が半減してしまうので、ぜひ、漕いでみることをお勧めします。漕いでみて、擦れ合う半間の響きを聴いて、あなたは何を想うでしょうか。

別スペースに展示されている《廻転する不在(模型)》も、誰でも自転車に乗車することが出来る遊具型作品です。実際に新潟県十日町市で不要になった自転車を収集し、遊具の基準にそって制作されています。女性や子どもでも体験ができるように、軽い運動でダイナミックな動きが表現されています。


実は、アートに限らず多くの文化的な文脈の中で、「車輪」は何かを象徴するものとして登場します。例えば、栄枯盛衰、輪廻転生などといった周期や規則的繰り返しを表したり、進歩や技術革新を象徴したり、仏教では法を表すダルマ・ホイールなどがあります。しかし、実際に東の作品に触れてみると、彼の車輪はそれらのどの概念にもあてはまらない、非常にユニークなものだと分かります。


人によって感じ方はさまざまで、自由であるべきですが、静かで力強い重みと、どこまでも軽く翔んで行けそうな爽快感が同居しているように筆者には感じられました。
あなたは《都市の半間》を体験して何を感じるでしょうか?そして何かを感じた後は、次はどんな車輪に乗れるのか、きっと楽しみになるでしょう。

タイトル 東弘一郎 個展「HANMA」
会期 2023年6月9日(金)~ 7月16日(日)
会場 ART FRONT GALLERY
住所 東京都渋谷区猿楽町 29-18 ヒルサイドテラス A棟
Webサイト https://www.artfrontgallery.com/
開廊時間 水・木・金 12:00~19:00
土・日 11:00~17:00
休廊日 月曜日、火曜日
入場料 無料