1. HOME
  2. Events
  3. 銀座/日本橋
  4. 資生堂ギャラリー
  5. 第15回 shiseido art egg 菅実花 仮想の嘘か|かそうのうそか in 資生堂ギャラリー

第15回 shiseido art egg 菅実花 仮想の嘘か|かそうのうそか in 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリーでは公募プログラム第15回shiseido art egg 第2期として、菅実花氏による個展「仮想の嘘か|かそうのうそか」が開催されています。

菅氏は、これまで生殖をテーマに、人形を写真に撮ることで「人間とは何か」を探求されてきました。本展では2019年より取り組んでいる、作者自身の頭部を型取りして作った人形と一緒に撮影するセルフ・ポートレート「あなたを離さない/I Won’t Let You Go」シリーズの最新作が展示されています。根源的な疑問への思索により、さらに進化した菅氏の“現在地”に注目です。

演劇やキネマのような舞台装置

ギャラリー中央のスペースに進むと、3つの壁面に《ステイ パラダイス》と題された合計11点のプリントと1点の動画から構成された作品に囲まれます。プリントは内照式のフレームに入っているのかと見まごうぐらい美しく、紫や青、そしてアンバーな色合いの光は、被写体である二人の女性や仲が良さそうなその関係性が“仮想”のようであり、現実でもあることを予感させます。

中央のフレネルレンズのモビール越しに壁面に映し出されたカレイドスコープを観ていると、自分が演劇やキネマのような舞台装置に立っていることを意識させられます。

自らのクローンを通じた観客への問いかけ

「人間とは何か」を探求してきた菅氏の最新作は、すでに畜産業などで実用されている体細胞クローン技術を踏まえ、「人工的な双子」としてのクローンが描かれています。ギャラリーの空間は写真・映像・インスタレーションで構成され、19世紀から20世紀にかけてサイエンス・フィクションに登場する人造人間の系譜と、同時代に発明された光学機器にヒントを得て制作されています。

《ステイ パラダイス》に登場する二人の女性のモチーフは、よく見ると片方はクローンであることが分かりますが、二人とも生きているように見えます。では、“生きている”とはどういうことなのか、もう一人の自分がいるというのはどういう気分なのか、そもそもいのちとは何なのか、いろいろな問いかけが頭の中に浮かんできて、心がざわつきます。

進化する作家の“現在地”が見逃せない

筆者が初めて出会った菅実花氏の作品は、「VOCA2020展 現代美術の展望―新しい平面の作家たち(上野の森美術館)」における《A Happy Birthday》でした。最初は純粋なセルフ・ポートレートのように思えたので、自分の中の何を客観視されようとしているのかを考えながら観ていましたが、実際はもう少し先の視点があることに気づかされました。本展はそこからさらに思索が進んでいます。

写真という表現はブックレットなどの紙媒体や、スマートフォンやパソコンで見れるWeb媒体など、さまざまな形で鑑賞が可能です。ただ、本展のような舞台装置で実際に作品に向き合うことでしか見えてこない、あるいは感じられないことがあります。

そして、まだまだこれからも興味深い作品を見せてくれそうな新進気鋭の作家の“現在地”を体験し、見逃さないこと。それもまた、この個展を観に来る大きな価値のひとつになるでしょう。

 

●アーティストのインタビュー記事(花椿) https://hanatsubaki.shiseido.com/jp/column2/14872/

●アーティストによる特設サイト https://imaginarylie.mystrikingly.com/

●shiseido art eggとは

「shiseido art egg」は2006年から始まっており、1919年のギャラリーオープン以来の活動理念である「新しい美の発見と創造」をまさに体現するような、瑞々しい新進アーティストを応援する取り組みとして続けられています。

私たちは不安定で流動的な日常を過ごす中で、人々の価値観も大きく変わりました。また、生活様式だけでなく、芸術・文化を取り巻く環境も大きな変化が生じています。資生堂ギャラリーはこういう時代だからこそ、新しい現実を柔軟に受け入れながら、アートがはたせる役割を問い続けていらっしゃいます。

タイトル 第15回 shiseido art egg 菅実花 仮想の嘘か|かそうのうそか
会期 2021年9月19日(火)~11月14日(日)
会場 資生堂ギャラリー
住所 〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Webサイト https://gallery.shiseido.com/jp/exhibition/4343/
営業時間 平日 11:00~19:00
日曜・祝祭日 11:00~18:00
休館日 毎週月曜日
※月曜日が祝祭日にあたる場合も休廊いたします。
料金 無料