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大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ in 国立新美術館

国立新美術館では、「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」が2023年11月1日(水)から12月25日(月)まで開催されています。「存在」とは何かをテーマに大巻は、空間と時間を抽出して体感させるような壮大なインスタレーションはもとより、多くの人々と協働して場を変容させるアート・プロジェクトや舞台芸術にも、その優れた資質を発揮してきました。本展では大巻が創りあげる、現代の総合芸術を楽しめるとともに、ふだんは公開されない創作過程におけるドローイングなども紹介されていて、大巻の深く壮大に広がる思索の一端をかいま見ることもできる貴重な機会となっています。

会場に進むと、私たちはすぐに演劇の舞台に足を踏み入れた気分になります。次々と現れる巨大な舞台装置にも見えるインスタレーションを楽しんでいると、私たちは観客であると同時に、大巻が立ち上げた世界の中の出演者のようにも感じられます。
こうした展示作品を体感するにつれ、私たちは徐々にインスタレーションの物理的なスケール感だけでなく、大巻自身の思索の深く壮大な広がりに気づき、この場を立ち去りがたい感慨に包まれることでしょう。

本展のタイトルにもある「真空のゆらぎ」とは、「この世界、あるいは宇宙が生まれてくるときに真空のゆらぎが起こったといわれている。そして真空は、何かあったところから何かが抜き取られて無になるところから生まれる。つまり、そこから新しいエネルギーが生まれてくる。失ったものに対して、新しいものを生み出そうとする運動体の根源」、それが大巻にとっての真空のゆらぎのイメージであると自身で語っています。本展では、停滞するのではなく、新しいものが生まれる場所として「真空のゆらぎ」というタイトルにしたとのことです。

私たちはまず、2016年に初めて発表された《Gravity and Grace》シリーズの最新バージョンと出会います。巨大な壺には世界のあらゆる文化・文明から引用したという様々な動植物からなる文様を施され、その中を上下する強烈な光が生み出す影がスペース全体にうごめきます。
強烈な光は荘厳な音響とともに“光臨”し、一種の畏怖の念を起こさせますが、核分裂反応の爆発的なエネルギーの象徴にも見え、本能的に引き寄せられてしまいます。作品のタイトルは、フランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユの箴言集『重力と恩寵』に由来するといい、重力によって縛られた私たちは、真空を受け容れることにより、神から恩寵を得られるといいます。これに加え、本展では詩人の関口涼子の言葉が光と影の変化にあわせて出現するように見えるコラボレーションも取り入れられており、壺を見上げるだけでなく、床面や壁面にもご注目ください。

次に回廊のような展示室には、《Gravity and Grace》の大きな光と影のインスタレーションをもとにした、人のかたちが映し出されているフォトグラム〈Gravity and Grace - moment 2023〉が展示されています。その次の暗くなった展示スペースに進むと、これもまた大空間で展開されるインスタレーション《Liminal Air Space - Time 真空のゆらぎ》が目に飛び込んできます。

ふわりふわりと空間を包み込むように宙で舞う白い薄いポリエステルの布は、波のようでいて、永遠の時間の流れのようにも感じられます。この展示空間をはじめ会場内では、会期中ダンサーによるパフォーマンスも定期的に予定されています(詳しくはこちらのページでご確認ください)。
2012年の個展で初めて発表されたこの作品を、大巻は「運動態としての彫刻」ととらえ、観者との関係や、観者への心理的な効果を探究してきたといいます。これまでで最大規模となる本インスタレーションでも、まるで外的世界と人間の内面世界が浸透したような独自の空間が創出されています。

次に、コロナ渦でステイホームが続いた期間中に、大巻が窓からの眺めを即興的に捉えた水彩画が並ぶ《Linear Fluctuation》の廊下を抜けると、映像インスタレーション《Rustle of Existence》が展開されています。

近年大巻は、長年にわたり探究してきた「存在」とは何かという問いを、言語という新たな視点から考察しています。新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期に大巻は、さまざまな地域の言語学、言語脳科学、言語社会学、神話や宗教といった分野の研究者に話を聞いて、「私たちは自分たちの意思では 生きていないのではないか、人間は言語の乗り物に過ぎないのではないか」と考えるようになったといいます。
作品タイトルにある“Rustle”は、何かが音を立てて動きまわったり、木の葉や絹などがかさかさ音を立てている様子を表します。私たちもこの実験的な映像を、耳をすましながら楽しみたいと思います。

 

休憩室と最後のスペースには、大巻が創作過程で描いた水彩画やドローイングが紹介されています。私たちはそこで、作家が膨大な時間を費やした思索の後をかいま見ることができるでしょう。あなたも壮大な舞台の観客、そして出演者として、大巻の大きく深い世界観を楽しみにお出かけしてみてはいかがでしょうか。

タイトル 大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
会期 2023年11月 1日(水) ~ 2023年12月25日(月)
会場 国立新美術館 企画展示室2E
住所 〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
Webサイト https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/ohmaki
開館時間 10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日 毎週火曜日休館
観覧料 無料
お問合せ 050-5541-8600(ハローダイヤル)