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岡本羽衣「In Denial」 at Gallery10[TOH]

Gallery10[TOH] では、岡本羽衣の個展「In Denial」が2024年4月13日(土)から4月28日(日)まで開催されます。作家のコメントによると、過去を忘れたいという感情を起点に、「何か」を忘却しようとする欲望の中で揺れ動く人間の心理に触れようという試みのようです。忘れたいことは誰にでもありますが、もしかしたら、そうした自分の感情に向き合うことになるのかも知れません。ちょっと、ドキドキしながら作品と出会うのを楽しみにしたいと思います。

ギャラリーの階段を昇って、展示スペースに出ると、いつもはカウンターになっているところに大型の作品《Songshan》が展示されています。その前に立つと、想っていた以上に迫力(というか、圧力)があり、しばし、見入ってしまいます。小品でさえ、サイズ以上のスケール感を感じます。
”キーイング”という技術を用いるための、「クロマキー合成」色はすべての絵画作品において、断片的な扱いで表現されており、その描かれ方の意味するところを考えてしまいます。

また、実際にこの技術を用いた作品が《CBI-44-60157》と《Capture-09081944》で、絵画作品と写真作品がひと組になって展示されています。写真作品のほうには、この「クロマキー合成」色の上に、何か歴史の図像が重ねられているようです。

岡本はアーティストコメントで以下のように記しています。

過去を忘れたいという感情は、忘却への欲求である。意図的に「何か」を忘れようとする際、私たちの意識は、もうすでにその「何か」に取り憑かれている。

まさしくその通りであって、個人でも、団体や国レベルのいずれにおいても、生理的にも、物理的にも何かを意図的に「忘れる」ことは不可能なことでしょう。実際にできるとすれば、「逃げる」か「忘れたふりをする」ことになるでしょう。

岡本がここで何を表現あるいは実践したいか、あるいは観る私たちに何を体験させたいかは、本記事の最後に紹介するアーティストコメントでかなり具体的に記されているので、そちらを参照してください。

改めて、作品を観てみると、何かしら歴史の図像がのせられる「クロマキー合成」色はあくまでも断片化されたように見えます。それは、もしかしたら「忘却への欲求」により断片化させられたのかも知れません。
ただ、「クロマキー合成」色以外の背景部分も含め、やや直線的な筆致や塗り方を観ているとひずみや歪みは感じられず、そこがひとつの“救い”となって、いつまでも作品世界に対峙し、見入ることができる理由のような気もします。
歴史の認識については、様々なアプローチがありますが、岡本の実践もひとつの新しいカタチではないかと思います。ぜひ、体験してみてはいかがでしょうか。

最後にギャラリーの公式サイトに掲載されたアーティストコメントを紹介します。

◆◆◆

過去を忘れたいという感情は、忘却への欲求である。意図的に「何か」を忘れようとする際、私たちの意識は、もうすでにその「何か」に取り憑かれている。

私は何を見て、あるいは見ようとしないのか。絵の具を塗りたくって層を重ねていくことで、過去化されたイメージを否定し続けながら、その奥にある存在と対峙しようとする。

本作品の「In Denial」シリーズでは、映像編集で使用される”キーイング”という技術を用いて、色や明暗の成分から画像・映像の一部を抜き出し、画像を合成するための緑の蛍光=「クロマキー合成」色を扱っている。

このクロマキー合成には、既存のイメージを否定し、異なるイメージに挿し替えることで、新たな虚構性を生み出す性質がある。過去のイメージを否定することは、そこで流れていた時間への否定でもあり、今を生きる私たちの存在自体も危うくする。

しかし、私はあえてこの方法で、これまで否定されてきた過去と向き合うために、〈身体ー時間〉を繋ぎ合わすメディウムと歴史の図像を合成し、図像を凝視しようとする意識と、それを忘却しようとする欲望の中で揺れ動く人間の心理に触れたいと考えた。イメージが否定され、掻き消されるのではなく、否定の中にみえるイメージと対峙したいと思ったのである。忘却するための、排除、矮小化、抑圧、隠蔽といった、いわば、否定に対する否定の実践である。

岡本羽衣

*「In denial」:現実を否定して、目を背けているという意。

◆◆◆

タイトル 岡本羽衣「In Denial」
会期 2024年4月13日(土)~ 4月28日(日)
会場 Gallery10[TOH]
住所 151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-20-11 第一シルバービル1B
※JR代々木駅東口を出た目の前の第一シルバービル1Fです。ギャラリーへの扉がタバコ自販機になっているのが目印です。
インスタグラム https://www.instagram.com/gallery10.toh
開廊時間 13:00〜20:00
休廊日 月曜、火曜
観覧料 無料