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菅 木志雄「ものでもなく場でもなく」 in 小山登美夫ギャラリー六本木

小山登美夫ギャラリーでは、菅木志雄の新作展「ものでもなく場でもなく」が2023年6月24日から7月22日まで開催されています。菅にとって同ギャラリーでは11回目の個展となり、特に2017年からは毎年個展が開催されるようになり、新作が観れる貴重な機会となっています。今年もインスタレーションと壁面の立体作品が展開され、全て新作といいます。毎年、訪れるのを楽しみにしている方も少なくないと思いますが、今年も新たなインスピレーションを得られる体験になるでしょう。

ギャラリーに入ると、鉄の線材でグリッドに組まれ、赤系の色彩が印象的な作品《景因差 Scene of Caused Discrepancies》に出迎えられます。メインのスペースへ進むと、奥の壁面に《渡縁柱 Passage Among Edges and Pillars》配置されています。そこへ至るまでの床面全体に二つに折られた四角い白い紙が、いろんな向きにたくさん置かれて、スペース全体がインスタレーションになっているのが分かります。

《渡縁柱 Passage Among Edges and Pillars》は白い板に多くの小さい木片が点々と配置され、2点の木片の上に青緑系の色の細長い角材が渡され、複数の場所で点と点が結ばれているように見えます。正面だけでなく、思わず横面からも眺めてしまいますが、角材が斜めに複雑に交差し、不安定なような、それでいてなんとも美しい光景です。

床面全体置かれたたくさんの白い紙は、折られ方や位置関係がランダムのように見えます。白い紙が相互に関係しあってリズミカルで、自分が知っている景色やいろんなものに連動するイメージが頭の中にわき上がります。立って観るだけでなく、しゃがんで観たりすると、壁面の作品が“遠景”になって楽しい時間になります。

菅木志雄は60年代末〜70年代にかけて起きた芸術運動「もの派」の主要メンバーであり、同時代を生きる戦後日本美術を代表する作家として、独自の地平を切り開いてきた方です。1968年の初個展から現在に至るまで、50年以上のキャリアの中で幾多もの展覧会に出展されてきました。またその作品は国際的にも高い評価を受けており、数多くの国内外の著名な美術館に収蔵されています。

作品に出会った時の体験のあり方は人ぞれぞれですが、筆者にとって菅の作品によるアート体験は、常に矛盾をはらんだものになります。作品から放たれる感性や思考の軌跡などを、なるべく純粋に受け止めるためには、頭の中をからっぽにする必要があります。と同時に、自分がその菅の作品を観ている意味、自分がそのインスタレーションの中にいる意味は、頭をフル回転して考えなければならないからです。

ただ、今回は昨年に比べると色彩感や全体のリズムなどからポジティブな印象を受け、コロナ禍がやっと明け、マスクも取れた今の気分に非常にリンクするような気がして、より楽しい時間を過ごせました。
本展は、訪れた時は思いっきり楽しみ、作品を観た意味は次の日から考え続けるのでもいいかも知れません。その考えるためにとても“手がかかり”になる、作家ステイトメントが発表されていますので、最後に引用させていただきます。

【作家ステイトメント】

◆◆◆

「ものでもなく場でもなく」 菅木志雄
〈もの〉があるということは、まさにそこに実体性が知覚されるからである。〈作品〉は〈もの〉であるとすると、このあとにくるのは、たいがい〈どのようなもの〉という問いかけである。実際に〈もの〉を見ている状況であれば、簡単に〈このようなもの〉と説明することもできるだろう。が、〈作品〉が眼前にあり、その説明と寸分ちがわないというのは、どこまでが〈もの〉の状況であるか不明である。とすれば、ものは本来的にそういう状況であり得るだろう。もともと作品は〈もの〉であって、説明できるようなものではなく、見た本人がそれぞれに知覚したところで、それがある〈存在〉を認めるということである。しかし、このような状況は、〈もの〉の世界を疑わないことが前提になっていると思われる。〈もの〉があるということは、それにつながる世界や状況があるからである。〈もの〉がある世界は、全体としてつながりを想起させる。このつながりが欠けると、〈もの〉の世界は見えにくい。

◆◆◆

タイトル 菅 木志雄
「ものでもなく場でもなく」
会期 2023年6月24日(土)~ 7月22日(土)
会場 小山登美夫ギャラリー六本木
住所 106-0032 東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
Webサイト http://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/suga2023/
開廊時間 11:00 ~ 19:00
休廊日 日・月・祝日
観覧料 無料