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日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション at 東京都現代美術館

現代における個人のコレクションはその方の美意識や価値観、興味や欲求、信条などに沿って蒐集されたものが多いのではないでしょうか。それらの作品群を観ていくと、その方の生き様まで伝わってくるようで、それが大きな楽しみでもあります。それに加え、作品ひとつひとつを楽しみつつ、作品が生まれた年代に想いを馳せることができる展覧会が東京都現代美術館で開催されています。個人のコレクションとは言え、その総数は約3500点とスケールは圧倒的です。高橋氏が生きてきた時間とともに、現代アートのある側面を体系的にたどるひとときになるでしょう。

 

展覧会とともに、見逃せないインタビュー映像

東京都現代美術館の1Fエントランスホールと展覧会のWebサイトでは、高橋龍太郎氏に同館学芸員の藪前知子氏がインタビューした約11分の動画が紹介されています。観る前か、それとも観た後に視聴するかは自由ですが、本展をより深く楽しむための大切な情報が詰まっています。
特に印象に残るやり取りは、藪前氏が「日本の現代美術にコレクションのほとんどの焦点が絞られている理由について」と投げかけた質問に、高橋氏が「今、日本に生きていて、この時代に生きているリアリティをアートの作品から感じたい」と返されているところです。

このリアリティを感じたいという答えは、私たちが東京という街で現代アートを楽しむ本質的な理由のひとつであると感じられます。作家と私たちは同じ時代を生き、似たような社会やコミュニティで生活しています。最初に観た時に作品の印象が自分の理解を超える気がしても、時間をかけて作品と対話していると、何かしら共通点や共感できるところが見つかるのではないでしょうか。もし見つかれば、そこから楽しさがさらに広がるはずです。

 

「胎内記憶 」から東日本大震災を経て今へ

とは言うものの、本展の作品展示は高橋氏の生きてきた時代に沿って構成されているために、来場者の年齢層によっては体験したことのない時代の空気感に遭遇することになります。最近のできごとである東日本大震災は別として、全共闘運動までさかのぼるとなると、観るすべての方があの時代の特別な意味を共有しているわけではありません。

しかしながら、そのギャップを埋めてくれるのが、本展で紹介されている作品かも知れません。数10年前は“全共闘運動”というと、一種のノスタルジーとともに記号的に語られたこともありますが、そうした固定概念が薄れつつある今、新しい視点や気づきを作品がもたらしているように感じます。

3500点を超えるコレクションから選りすぐられた名品の数々をぞんぶんに堪能してはいかがでしょうか。また、企画展示室 1FとB2F以外に、ミュージアムショップ「NADiff contemporary」のとなりにサテライト会場もありますので、こちらもお見逃しなく。

以下は東京都現代美術館発行の広報用資料からの引用になります

【概要】

東京都現代美術館ではこのたび、「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」展を開催する運びとなりました。高橋龍太郎コレクションは、現在まで3500点を超え、質・量ともに日本の現代美術の最も重要な蓄積として知られています。本展は、1946年生まれのひとりのコレクターの目が捉えた現代日本の姿を、時代に対する批評精神あふれる作家たちの代表作とともに辿ります。

本展が手がかりとするのは、戦後世代のひとつの顔としての高橋龍太郎の視点です。団塊の世代の始まりとして育った彼は、全共闘運動に参加し、文化と政治が交差する東京の60年代の空気を色濃く吸い込んだのち、精神科医としてデイケアをはじめとする地域医療の推進に尽力します。その活動が軌道に乗った1990年代半ばより日本の現代美術のコレクションを開始し、現在に至るまで作品を収集してきた高橋は、現代美術の動向を受け手として内側から観察し、表現者とは異なるかたちでその重要な部分を体現してきた存在といえるでしょう。本展では、高橋龍太郎コレクションの代名詞ともいえる 1990年代から2000年代にかけての日本の自画像のような作品群だけでなく、東日本大震災以降に生まれた新たなコレクションの流れを、時代の感覚の変化を映し出したものとしても紹介します。

高橋龍太郎コレクションの形成は、1995年に開館した東京都現代美術館の活動期と重なっています。東京という都市を拠点に形成されたこの二つのコレクションは、互いに補完関係にあるといえるでしょう。一方それは、バブル崩壊後の日本の、いわゆる「失われた 30年」とも重なっています。停滞する日本社会に抗うように生み出されたこれらの作品を、高橋は「若いアーティストたちの叫び、生きた証」と呼びます。本展は、東京都現代美術館がこれまで体現してきた美術史の流れにひとつの「私観」を導入しつつ、批評精神にあふれる日本の現代美術の重要作品を総覧する、貴重な機会となるはずです。

【みどころ】

伝説の作家から最新の若手まで、総勢115組の作品による、日本の戦後現代美術史の全貌。

日本の現代美術を中心とするコレクションとしては世界最大級の高橋龍太郎コレクション。本展は、その3500点あまりにのぼる巨大なコレクションから選りすぐった作品で総覧する、日本の現代美術史の入門編でもあり決定版ともいえる展覧会です。
個人が収集するスケールを軽く凌駕するダイナミックな作品群で、東京都現代美術館の展示室を2フロアにわたり埋め尽くします。

日本の現代美術の最重要コレクターが選んだ、魂のコレクションの集大成。

特に 1990年代以降の日本の現代美術の代表的な作品を多数含む高橋龍太郎コレクションの展覧会は、2008年の「ネオテニー・ジャパン」(鹿児島県霧島アートの森ほか)以来、国内外の美術館で何度も開催されてきました。本展は、初期から東日本大震災を経て現在に至るコレクションの変化を、ひとりのコレクターの「私観」として辿る、その集大成といえるものになります。

【展示構成】

  1. 胎内記憶
  2. 戦後の終わりと始まり
  3. 新しい人類たち
  4. 崩壊と再生
  5. 「私」の再定義
  6. 路上に還る

※展示の詳細は「展示ガイド」をご覧ください。

【高橋龍太郎コレクション】

精神科医、高橋龍太郎(1946-)が1997年から本格的に始めた、最大級の日本の現代美術コレクション。草間彌生、合田佐和子を出発点として、特に1990年代以降の重要作家の初期作品・代表作を数多く有する。これまで「ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション」(2008-2010 鹿児島県霧島アートの森、上野の森美術館ほか)、「高橋コレクション展−マインドフルネス!」(2013-2014 名古屋市美術館ほか)、「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」(2015 東京オペラシティアートギャラリー)など国内26の公立・私立美術館でコレクション展が開催されてきた。2020年、現代アートの振興、普及への多大な貢献を認められ、令和2年度文化庁長官表彰を受賞。その総数は3500点をゆうに超え、現在もなお若手作家の最新動向を中心に拡大中である。

【出品作家】

里見勝蔵|草間彌生|篠原有司男|羽永光利|宇野亞喜良|中村錦平|司 修|横尾忠則|赤瀬川原平|森山大道|荒木経惟|合田佐和子|立石大河亞|山口はるみ|菅 木志雄|空山 基|西村陽平|東恩納裕一|舟越 桂|森村泰昌|大竹伸朗|岡﨑乾二郎|O JUN|小林正人|前本彰子|根本 敬|奈良美智|柳 幸典|鴻池朋子|太郎千恵藏|村上 隆|村瀬恭子|∈Y∋|会田 誠|大岩オスカール|小沢剛|ヤノベケンジ|天明屋 尚|千葉和成|西尾康之|やなぎみわ|小出ナオキ|加藤 泉|川島秀明|Mr.|山口 晃|岡田裕子|町田久美|石田尚志|小谷元彦|風間サチコ|塩田千春|蜷川実花|池田学|三瀬夏之介|宮永愛子|華雪|加藤美佳|竹村 京|束芋|名和晃平|玉本奈々|国松希根太|竹川宣彰|できやよい|今井俊介|金氏徹平|工藤麻紀子|鈴木ヒラク|今津 景|小西紀行|小橋陽介|志賀理江子|千葉正也|毛利悠子|青木美歌|桑田卓郎|梅津庸一|大山エンリコイサム|坂本夏子|BABU|村山悟郎|森 靖|松井えり菜|松下 徹|やんツー|青木 豊|梅沢和木|佐藤 允|谷保玲奈|DIEGO|弓指寛治|近藤亜樹|庄司朝美|水戸部七絵|ナイル・ケティング|川内理香子|涌井智仁|ob|藤倉麻子|村上 早|BIEN|石毛健太|名もなき実昌|土取郁香|山田康平|友沢こたお|山中雪乃|Chim↑Pom from Smappa!Group|SIDE CORE / EVERYDAY HOLIDAY SQUAD|KOMAKUS|中原 實*|久保 守*|八谷和彦*
(*は東京都現代美術館蔵)

タイトル 日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション
会期 2024年8月3日(土)~ 11月10日(日)
会場 東京都現代美術館 企画展示室 1F/B2F、ホワイエ
住所 〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
Webサイト https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/TRC/
開館時間 10:00~18:00
※展示室入場は閉館の30分前まで)
※*8月23日、30日の金曜日は21:00まで開館
休館日 月曜日(9/16、9/23、10/14、11/4は開館)、9/17、9/24、10/15、11/5
チケット情報 オンラインチケットはこちら
※ 会期中日時指定なしで、1枚につきお一人様各展覧会1回限りご入場いただけるオンラインチケットです。
※ ご購入後のキャンセル・変更は一切できません。美術館チケットカウンターにて当日券も販売します。
観覧料
※(  ) 内は20名様以上の団体料金
【一般】2,100円(1,680円)
【大学生・専門学校生・65 歳以上】1,350円(1,080円)
【中高生】840円(670円)
【小学生以下】無料
備考 ※本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※ 毎月第3水曜(シルバーデー)は、65歳以上の方は無料です。(チケットカウンターで年齢を証明できるものを提示)
※家族ふれあいの日(毎月第3土曜と翌日曜)は、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住を証明できるものを提示/2名まで)の観覧料が半額になります。
サマーナイトミュージアム2024
8月23日・30日の金曜日は17:00以降のご入場で、観覧料が2割引、学生は無料です。(要証明)
学生無料デー Supported by Bloomberg
9月7日(土)・ 8日(日)の2日間、中高生・専門学校生・大学生は無料です。(チケットカウンターで学生証を提示)