王舒野 認識以前の絶対的知覚次元へ in 東京画廊+BTAP|東京
東京画廊+BTAPでは、王舒野 個展『認識以前の絶対的知覚次元へ』が2023年4月8日(土)から5月20日(土)まで開催されています。王舒野は1989年に北京の中央工芸美術学院(現・清華大学美術学院)を卒業後、1990年に来日しますが、2001年に個展を開催するまでの約10年間は作品発表を行わず、芸術の精神的探求に日々没頭したそうです。現在では鎌倉と北京を両拠点に、その強靭な探求心に導かれた作品制作を続けています。今回は、改めて私たちに「見る」ことを再考させる独自の世界観を楽しませてくれるとともに、王自身の新たな試みも観ることができる貴重な機会となっています。
王舒野は1963年に中国・黒龍江省で生まれました。王は90年代の初頭から、本展のタイトルにも含まれる「認識以前の絶対的知覚次元」をめぐって、絵画の新たな視覚空間の可能性を探求し続けてきました。
今回は、<時空ヌード・即>シリーズの新作9点が発表されており、ギャラリーの扉を開けると鮮やかな色彩が目に飛び込んできます。
そこには油彩による無数の筆触とストロークの集積により、奥行きがあり、静かながらもおぼろげな輪郭を持つ景観が表現されています。その視覚空間は認識の対象として捉えられる以前の世界そのものであり、既存の人間の価値観の拘束から視覚を解放するものであり、私たちの目の前に「見る」ことを新たに提示してくれています。
さらに、これらの新作には、銀座の街が描かれているそうです。王は私たちがよく知る事物をあえて題材に取り上げて、認識からの離脱を試みます。確かに銀座というと、どうしても私たちの頭の中には固定化されたイメージや先入観がつきまといます。私たちは、どれだけそれらを排除して、作品と向き合うことができるのでしょうか?なんだか、作家から“挑戦”を受けているようにも感じられます。
また会場の奥には、1点だけ、麻紙に墨で描かれたモノトーンの作品が展示されています。恐らく、これが従来の王のスタイルだと思われますが、モノトーンであるがゆえに、観る私たちは視覚から解放されやすく、さまざまな思考を広げられる自由があり、観方によってはこちらのほうが完成度は高いように受け取れます。
今回、王は対象としての認識につながりがちな多彩色にあえて挑戦し、都会に特徴的な直線的要素を取り入れるなど、彼の新たな試みを見ることができると言います。
なぜ、多彩色に挑戦されたのか?このモノトーンの作品と、その他の作品を比較しながら、彼の意図も考えながら観ていくと、より楽しめるのではないかと思います。
ただ、最初に会場に入った時の第一印象は、春らしい色彩感でした。しかも、もうすぐマスクをした日常につきまとう閉塞感からも解放されそうな胸が躍る気分も展示全体から感じられました。
観ても純粋に美しく、作品の前で思索を巡らせるのも楽しい、そして作家の新たな挑戦にも出会える本展にお出かけしてはいかがでしょうか。
最後に、会場で配られているハンドアウトにも記されていますが、作家のコメントを紹介します。
世界が人間の認識に規定される対象である以上、我々の見る世界は人間自身を反映するものに他ならない。決して世界のそれ以外の異なる真実に触れえない。私にとって、日常の相対的な認識意識を放棄し、認識以前の絶対的知覚次元を体験・表現する時は、すなわち日常の自我とその世界観を超越する時であり、その世界観に遮蔽された世界の別の姿に触れる時である。そこでは、世界の個別的な事物に指向せずに、世界全体に指向する——世界の開放状態そのものの姿がある。それこそ知覚の原初状態である。その姿の中には、「世界本来の永遠無限と自安自足」が随所に現れている。私は、このような体験を通して、自己の立場に縛られている知覚の、えもしれぬ根本的な欠乏感から自分を解放し、真のやすらぎの瞬間を得るのだ。
タイトル | 王舒野 認識以前の絶対的知覚次元へ |
会期 | 2023年4月8日(土)~ 5月20日(土) |
会場 | 東京画廊+BTAP|東京 |
住所 | 〒104-0061 東京都中央区銀座8-10-5 第四秀和ビル7階 |
Webサイト | https://www.tokyo-gallery.com/ |
開廊時間 | 火~土 12:00~18:00 |
休廊日 | 日・月・祝 |
料金 | 無料 |