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奈良祐希「Hybridizing」in Akio Nagasawa Gallery Aoyama

今、世界が注目している陶芸家であり建築家でもある奈良祐希の個展「Hybridizing」がAkio Nagasawa Gallery Aoyamaで開催されています。ギャラリーに入ると、まず縄文式土器のような見覚えがあるフォルムが目に飛び込みます。さらに作品に近づいてじっくり眺めていると、それが繊細な磁器独特の肌を持ち、精緻なCADに基づいているなど、小さな発見や驚きが連続して起きて、これは今までに見たことがないものだ!と気づいた時にはすっかり作品の世界観に魅了されている。そんな不思議な魅力があるWonderな個展です。写真だけでも充分に心を惹かれるものがあるのですが、磁器の肌や質感など、実際に観ないと分からないことがたくさんありますよ。

異種交配を意味する「Hybridizing」

奈良は1989年に350年の歴史と伝統をもつ楽焼の窯元・大樋焼(石川県金沢市)に生まれました。当初は陶芸から距離を置いていましたが、父・十一代大樋長左衛門の勧めもあって、東京藝術大学で建築を学んでいる途中で陶芸に興味を持ち大学院を休学。多治見市陶磁器意匠研究所に入所し、その後、2017年に同大学大学大学院美術研究科建築専攻を修了しました。陶芸家と建築家というふたつの才能を併せ持ち、すでに国内はもとより世界からも注目を浴びる存在です。

個展のタイトルとなっている「Hybridizing」は異種交配を意味し、日本の文化や自然を学び、そこからエッセンスを抽出し、伝統的な陶芸とは異なる革新的な領域と融合させる奈良の制作スタイルを象徴する言葉でしょう。CADを駆使しながら緻密に思考されたイメージに基づき、ラボで様々な実験を繰り返す研究者のように、ひとつの正解を導き出しているのです。

美しい幾何学模様が生み出す独特の世界観

個展「Hybridizing」では、では、奈良の処女作であり高い評価を受けている「Bone Flower」シリーズに加えて、「IceWall」シリーズを新たに加えた、20余点が一堂に紹介されています。

「Ice Wall」シリーズは、奈良自身が幼少期を過ごした金沢の壮大な雪景色から作品の着想を得たといいます。心をなるべく無にして作品の前に立っていると、たっぷりと掛けられた釉薬によって神々しく光り輝く、巧緻を極めた美しい幾何学模様が生み出す世界観に吸い込まれそうになります。そこには平面と立体の間のようで、線と面の間でもあるような不思議な揺らぎを感じることができます。

無限大の「間」の中で格闘し、生み出された作品

建築家の言葉でよく耳にするのは、西洋建築は内と外が堅牢な壁で遮断されていますが、日本の場合は畳から縁側・障子、そして庭というように内と外の境界線がゆるやかで、一種の間があることです。実際にはそれはあくまでも発想のひとつに過ぎず、陶芸と建築、デジタルとアナログ、内と外、混沌と秩序などなど、無限大の「間」の中で奈良は格闘し、作品が生み出されています。

そこは、奈良祐希しか創ることのできない新たな世界と言えるでしょう。また、それは写真からだけでは伝わりにくく、やはり訪れて、体験してみないと分からないことだと思います。

タイトル

Hybridizing

会期

2020年7月17日~8月29日

会場

AKIO NAGASAWA GALLERY AOYAMA

住所

東京都港区南青山5-12-3 Noirビル2F

Webサイト

https://www.akionagasawa.com/jp/gallery/current-exhibition/aoyama/

開廊時間

11:00~19:00(13:00〜14:00休廊)

休廊日

日、月、祝、8月9日〜19日は夏期休廊

料金

無料