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奥天昌樹x小左誠一郎「点景」 in Gallery10[TOH]

Gallery10[TOH]では、奥天昌樹x小左誠一郎「点景」が2023年8月12日(土)から9月3日(日)まで開催されています。
ふたりに共通しているのは、ストイックな抽象絵画表現の追及です。ふたりとも最初から主題や構図などを決めこんで制作を始めるのではなく、作品と向き合いつつ手を進め、思索やイメージが広がったり閉じたり、落とし込みがなされて完成しているといいます。ふたりはまったく違う個性ながら、そうしたプロセスが作品それぞれの緊張感やLIVE感を生み、心地よいケミストリーとなって観る私たちを包み込んでいるようです。いろんな意味で、今しか観れないかも知れない、このグループ展に足を運んではいかがでしょうか。

奥天昌樹と小左誠一郎はともに1985年生まれで、予備校時代の同級生だったという間柄です。卒業後は別の大学に進学しましたが、一定の距離を保ちながらも交流を重ね、今「軽やか」に再会したとのこと。
このふたりでグループ展を行うのも初めてということですが、共通点は抽象絵画表現や制作プロセスだけではありません。打ち合わせをしたわけでもないのに、ふたりの出品作のサイズが、ほぼ同じバリエーションで仕上げられたことが前日の会場準備の段階で初めて分かったことなど、偶然か、あるいは必然なのか、決して交流の深さや仲の良さがケミストリーの決め手にはなっていないところが本展の魅力のひとつのように感じられます。

 

奥天は自身の制作について、「ボードゲームにおいての初手から勝ち手の関係性に似ており、一手一手完成に向かっていく様に絵の具を置いていくイメージで作品と向き合っています」と述べています。ここでいう“ボードゲーム”とは、何気なく打たれたように見える最初の一手が最後に重要な意味を持つ、囲碁や将棋、チェスなどが最も近いイメージです。


作品には奥天が作品と向き合ってきた時間が刻まれており、絵の具を重ねる、取り除くを繰り返し、あるものは変化の後に“最初の一手”に戻り、あるものは取り返し不可能になっていくような可逆と不可逆を作品としての最終的な見え方に落とし込めないか、と考えられています。
その結果、私たちは“棋譜”を見るように、奥天の制作中の思索を追体験するように楽しむことができるのです。

小左もまた、絵画制作を「一対一の試合的な動静」と表現しています。ここでいう一対一とは作家と作品、あるいは作家と絵筆であり、ひと筆進めると画面からの問いが発生し、それに応える次の一手を打つように制作を進めてゆくといいます。

小左は2年前あたりから“描く”ことから“塗る”ことに重点を置いています。コロナ禍中、自身の中で高尚で大層なものとして膨れ上がる”描く”ことを考え直す機会としての、一旦距離を置く手筈のようなものでした。そして、現段階の自分の想いや思索を出し切るためには“塗る”ほうがしっくり来ているといいます。その心境の変化があった時期の作品が、本展でも展示されている《操縦 “Manipulation”》(2021年)となります。

その他はすべて2023年に制作された作品ですが、同じように色面で構成された画面でも2年という時間の隔たりや、あるいは色調や画面構成のリズムなどの違いを楽しみつつ、小左がひと筆ひと筆と塗りこめている息づかいを感じてみてはいかがでしょうか。

 

展示タイトルの「点景」とは「風景全体の質を向上させる点的な景観構成物」と言う意味であり、例えば緑の風景の中にアクセントとして描かれた赤い人物や家などを指しています。
作品を対峙させることにより、奥天の描く点が、小左の描く景の中にどういった響きをもたらすのか、2人のプレイヤーによる「点景」をぜひご覧ください。

タイトル 奥天昌樹x小左誠一郎「点景」
会期 2023年8月12日(土) ~ 9月3日(日)
会場 Gallery10[TOH]
住所 151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-20-11 第一シルバービル1B
※JR代々木駅東口を出た目の前の第一シルバービル1Fです。ギャラリーへの扉がタバコ自販機になっているのが目印です。
インスタグラム https://www.instagram.com/gallery10.toh
開廊時間 13:00〜20:00
休廊日 月曜、火曜
観覧料 無料