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シャプール・プーヤン キュクロプスの疑念、⻄洋を見つめる at 東京画廊+BTAP|東京

東京画廊+BTAPでは、シャプール・プーヤン個展『Cyclopses in Doubt, Observing the West キュクロプスの疑念、西洋を見つめる』が2023年11月18日(土)から12月23日(土)まで開催されています。シャプール・プーヤンは1979年にイスファハン(イラン)で生まれ、現在はロンドン、ニューヨーク、テヘランを活動拠点にしている作家です。個展タイトルにある「キュクロプス」とはギリシャ神話に登場するひとつ眼の巨人のことで、そのタイトルのように、私たちにとっては作家が膨大な時間を費やした思考から生まれたキュクロプス(単眼性)によって、いろいろな視点やインスピレーションを与えてくれる、貴重なアート体験になるでしょう。

考えることが楽しくなる作品群

ギャラリーに入ると、中近東の文化を背景とした立体作品が展示台の上に並んでいるので、異文化の様式に出会い、大いに感性が刺激されます。行ったこともない地域なので、単なる情報で得たイメージや先入観から想像をふくらますのも意味がないかと思いつつも、いろんなインスピレーションがわいてきて止まりません。
林立する立体作品は抽象なのか、あるいは家か祈りの場のような建物なのか。観る人によって感じ方は違うだろうと思いますが、少しかがんで作品群を横から見ていると、ひとつの街のようにも見えます。


作品の中には涙を流しているように見える表現や、展示台の台座が鏡になっており、作品の底に作られた迷路を観ることができるものなど、見れば見るほど関心と興味、そして謎が深まっていきます。いろんなことが頭の中に浮かび、そして考える。それがたいへん楽しいと感じられる時間になるでしょう。

今起きている問題を扱う世界で紹介されている作家

本展が日本での初個展となるイラン人アーティスト、シャプール・プーヤンは絵画、彫刻、陶芸に通じる多才なアーティストとして知られています。その表現は歴史、大国間のパワーゲーム、潜在する戦争の脅威などを主題とし、同時に、グローバルな緊急の課題を照らし出しています。
また彼の作品は、ジェッダ・ビエンナーレ(サウジアラビア、2023年)、ヘイワード・ギャラリー(2022年)、ヴィクトリア&アルバート美術館(2021年)、ペラ美術館(トルコ、2020年)、ルービン美術館(アメリカ、2020年)、大英博物館(2017年)など、世界の様々な国や地域の美術館の展覧会や国際展で紹介されています

「思考の彫刻」として機能する陶芸作品

陶芸作品を生み出す粘土は、実用的・装飾的な品物を作るための素材だけでなく、縄文土器の精緻なデザインや粘土板に刻まれた楔形文字に見られるように、しばしば人間の思考や創造性、革新性をとらえ、伝える容器となります。シャプール・プーヤンの陶芸作品はまさにこうした流れを引き継ぎ、「思考の彫刻」として機能しているようです。
本展で彼は、セラミック彫刻の新シリーズを通して、見えるものと見えないもの、光と影というような、二つの主題の間に分け入っています。これは最終的な答えを私たちに与えるためではなく、多くの示唆的な問いをもたらすための試みなのです。
またプーヤンは現代陶芸において、歴史的要素に新たな息吹を吹き込むことをが試みています。例えば、彼の作品に見られる滴の跡や滲みは、12世紀のカシャーン(イラン)で広く用いられた技術や様式から発想を得ているといいます。

視覚的にも楽しい刺激的なアイディア

本展の作品中でも、例えば、《Cross Maze 交差する迷路》や《Maze Tower 迷路の塔》は、光線が内部空間をどう進むかという不思議な問いを探求しています。先に述べたように、プーヤンが作品の一部として取り入れた、鏡やカスタムメイドの台座は見どころのひとつでしょう。


観る私たちは、本来は底に隠れている迷路を鏡によって覗くことができますが、単に近くで観察するように誘うだけでなく、周りの空間と相互作用し、私たちの空間認識や感覚を刺激しています。
この他、奥のコーナーには粘土で作られた、もう少しシンプル、あるいはプリミティブに見える建築的な立体作品や、彼がイランの歴史的磨崖彫刻を描いた「消去された」絵画などが展示されています。これらはメインのスペースに展示されている作品の制作過程で生まれたものでしょうか、あるいは近未来を含め、彼の志向を表すものなのか、それとも別の視点で見るべきなのか。こちらも、いろいろと楽しめそうです。

私たちは、膨大な時間を費やしたであろう作家の深い思索によって生まれた世界観から、何かを感じ、考えるきっかけをもらう、他にはない、貴重で刺激的なアート体験となるでしょう。

タイトル シャプール・プーヤン キュクロプスの疑念、⻄洋を見つめる
会期 2023年11⽉18⽇(⼟)~ 12⽉23⽇(⼟)
会場 東京画廊+BTAP|東京
住所 〒104-0061 東京都中央区銀座8-10-5 第四秀和ビル7階
Webサイト https://www.tokyo-gallery.com
開廊時間 火~土 12:00~18:00
休廊日 日・月・祝
料金 無料