1. HOME
  2. Events
  3. 青山/渋谷/代官山
  4. 東京都渋谷公園通りギャラリー
  5. アール・ブリュット ゼン&ナウ Vol.2 Echo こだま返る風景 in 東京都渋谷公園通りギャラリー

アール・ブリュット ゼン&ナウ Vol.2 Echo こだま返る風景 in 東京都渋谷公園通りギャラリー

アール・ブリュット=専門的な美術の教育を受けていない人などによる、独自の発想や表現方法が注目されるアートをはじめとする様々な作品を広く紹介している東京都渋谷公園通りギャラリーでは、「アール・ブリュット ゼン&ナウ Vol.2 『Echo こだま返る風景』」が2023年1月21日(土)から4月9日(日)まで開催されています。
「アール・ブリュット ゼン&ナウ」は国内外のアール・ブリュットという動向の中で、長く活躍を続ける作家と近年発表の場を広げつつある作家を、さまざまな角度から紹介している展覧会シリーズです。今回、2回目となる本展では“街の風景”を独自のまなざしで再構築する作家たちの表現を楽しむことができます。

ひとことで“街の風景”と言っても、空の色や陽射し、建物やお店の看板、広告の映像、行きかう自動車や鉄道、そして人々の表情やいでたちなど、ほぼ無限と思えるくらい様々な情報があふれています。また、通勤・通学の車窓から見るか、誰かと食事しながら見るのか、その時の心情によっても、着眼点や感じ方などが変わってくるでしょう。

 

本展に登場する6名の作家さんが切り取った街の風景は、現実と想像の、近景と遠景の、自己と他者の、こちらとあちらとのあいだを反響し合う“こだま”のように、作家さんの心の中で広がっているようです。その“こだま”は作品を観る私たちの心の中にも、共感とともに響いてきます。
また、通常の風景画は遠近法など一般に知られた技法がありますが、本展の作家さんたちは自分のルールで作品を描かれています。それがどんなルールなのか、気づいたりするのも楽しみのひとつでしょう。

 

本展の展示構成は、展示室1と2に作品展示が、交流スペースにはアール・ブリュットに関する資料コーナーが設けられています。展示室は外光が入るように設定されているので、窓から見える街並みや喧騒、匂いや空気感など、街と展示室とのつながりを感じることができます。

交流スペースには6名の作家さんたちの制作や展示をサポートする施設の紹介パネルがあります。本展の中には、身近にいる人が表現の面白さに気づいて、少し作家さんの背中を押したことで創作活動が継続している例もあるようです。制作の背景などを知ることで作品への理解や興味が深まるので、作品をご覧になった後に、ぜひ、立ち寄ることをおすすめします。

 

【出展作家と見どころ】

磯野貴之 ISONO Takayuki (1997年~) 富山県生まれ
本展で展示している磯野氏の作品は、のべ42,000本の電柱とそれらをひとつにつなぐ無数の電線が描きこまれている、分厚いドローイングブックです。触ったり、ページをめくることはできないので、中身は映像で見ることができます。これはお母さんの運転で学校に向かう自動車の中から電線・電柱を見るのが好き、というところが始まりだとか。軽やかでリズミカルな線と余白が連なるページを観ていると、自分の中の似たような記憶がよみがえってきます。

 

古久保憲満 KOKUBO Norimitsu (1995年~) 滋賀県生まれ
近未来のような街の風景をフリーハンドで描きつづけている古久保氏の小学生の頃の“お絵かき帖”は、よく見るとスペースが足りなくて、小さな紙が継ぎ足されたりしています。それを見た先生が、もっと大きい紙を渡したところ、生まれた作品が本展で展示されている《未来の上海ディズニーランド》(2010年)だそうです。濃密な描き込みからはさまざまなイメージが飛び出して来て、古久保氏が生みだした唯一無二の世界で遊ぶことができます。

 

後藤拓也 GOTO Takuya (1987年~) 宮崎県生まれ
後藤氏の作品は紙をステープラーでとじ合わせて作られた建物の、複数の立体作品が展示され、家がたち並ぶ街のような風景を生みだしています。作品にさわることはできませんが、見た目よりも、かなり頑丈とのことです。その理由は、家を建てているところを眺めていたことがきっかけになっており、立方体の組み合わせで骨格や外壁が構成されているからだそうです。カラフルな“街並み”を散歩する目線で見ていると、住んだり、訪れたくなります。

 

佐藤慶吾 SATO Keigo (1983年~) 千葉県生まれ
細長いビルを描いた作品が60点並べられた佐藤氏の作品は、家族でよく行くホテルのレストランからの眺めだそうです。カラフルでリズミカルなビルの連なりは、食事の楽しい時間からイメージされているようです。作品の制作は、佐藤氏が所属する「生活工房」での作業の休息時間などに、ひっそりと隠れて行われていたそうで、隠したかった理由も含めて、なんとなく共感できる気がします。

 

辻勇二 TSUJI Yuji (1977年~) 愛知県生まれ
黒い水性ペンだけを使って緻密に描かれた辻氏の作品は、上空から俯瞰する構図と独特なゆらぎと躍動感が特徴です。街並み自体はどこかで見たことがあるような感じがしますが、辻氏が高いところから街を眺めた記憶から映し出された架空の街だそうです。従来は横の画面が基本だったそうですが、縦長の3連作は、外出が制限されたコロナ禍以降、お母さんからのアドバイスをきっかけに取り組んだ作品だそうです。

 

横溝さやか YOKOMIZO Sayaka (1986年~) 神奈川県生まれ
横溝氏の作品は、人間だけでなく、動物、キャラクターといった登場人物が街中をパレードするような祝祭感にあふれています。紹介されている作品は渋谷や大阪・道頓堀など実在の街で、横溝氏は描く前にその街を入念に調べるそうです。渋谷の文化施設では横溝氏の架空の個展が開かれているなど、作品の中にさまざまな物語性が隠れており、それを見つける楽しさもあります。
紙芝居の作品は、イベントで横溝氏が実際に公演した様子が動画で展示される予定です。

 

 

【関連イベント】
学芸員によるギャラリートーク
※3月11日開催回は手話通訳付き
開催日:2023年2月11日 (土) 、3月11日 (土)
会場:東京都渋谷公園通りギャラリー
入場料:無料
内容:東京都渋谷公園通りギャラリーの学芸員が作品解説を行います。3月11日(土)開催回には手話通訳が付きます。

タイトル アール・ブリュット ゼン&ナウ Vol.2
Echo こだま返る風景
会期 2023年1月21日(土)~ 4月9日(日)
会場 東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室 1、2
住所 〒150-0041 東京都渋谷区神南1-19-8 渋谷区立勤労福祉会館 1F
Webサイト https://inclusion-art.jp/archive/exhibition/2023/20230121-163.html
開館時間 11時~19時
休館日 月曜日
料金 無料