パリ ポンピドゥーセンター　キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ in 国立西洋美術館

国立西洋美術館では、「パリ ポンピドゥーセンター　キュビスム展―美の革命　ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」が2023年10月3日(火)から2024年1月28日(日)まで開催されています。パリのポンピドゥーセンターは世界屈指の近現代美術コレクションを誇り、その所蔵品から50点以上が日本初出品となる貴重な作品が来日します。私たちにとって、20世紀の初頭にパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックという2人の作家によって生み出されたキュビスムとその後の展開について、体系的にたどることができる貴重な機会となるでしょう。日本でキュビスムを正面から取り上げる本格的な展覧会はおよそ50年ぶりということですので、ぜひ、訪れてみてはいかがでしょうか。

20世紀の初頭、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックという2人の作家によって生み出されたキュビスムは、西洋美術の歴史にかつてないほど大きな変革をもたらしました。その名称は、1908年にブラックの風景画が「キューブ（立方体）」と評されたことに由来します。

西洋絵画の伝統的な技法であった遠近法や陰影法による三次元的な空間表現から脱却し、幾何学的に平面化された形によって画面を構成する試みは、絵画を現実の再現とみなすルネサンス以来の常識から作家たちを解放しました。
また絵画や彫刻の表現を根本から変えることによって、抽象芸術やダダ、シュルレアリスムへといたる道も開かれました。慣習的な美に果敢に挑み、視覚表現に新たな可能性を開いたキュビスムは、パリに集う若い芸術家たちに大きな衝撃を与え、装飾・デザインや建築、舞台美術を含む様々な分野で瞬く間に世界中に広まり、それ以後の芸術の多様な展開に決定的な影響を及ぼしています。

本展は、世界屈指の近現代美術コレクションを誇るパリのポンピドゥーセンターの所蔵品から、キュビスムの歴史を語る上で欠くことのできない貴重な作品が多数来日し、日本ではおよそ50年ぶりとなるキュビスムを正面から取り上げる本格的な展覧会となります。20世紀アートの真の出発点となり、新たな地平を開いたキュビスムの豊かな展開とダイナミズムが、主要作家約40人による絵画を中心に、彫刻、素描、版画、映像、資料など約140点を通してキュビスムの全貌が明らかになります。

特にピカソは12点、ブラックは15点という初期の傑作を含むかつてないボリュームで、キュビスムの冒険の軌跡ともいえるスリリングな造形実験を追体験することができます。中でもピカソのプリミティヴな裸婦像に衝撃を受けて制作されたブラックの重要作《大きな裸婦》（日本初出品）、ポンピドゥーセンターを代表するピカソの傑作《肘掛け椅子に座る女性》は必見です。
この他、ピカソ、ブラックとは異なるアプローチでキュビスム旋風を巻き起こした「サロン・キュビスト」たちの作品も多数紹介されます。なかでも初来日となるロベール・ドローネーの《パリ市》は幅4メートルにもおよび、ポンピドゥーセンターを象徴する大作のひとつといわれています。

このポンピドゥーセンターは、フランスのポンピドゥー元大統領によって構想され、1977年に開館したパリの中心部にある複合文化施設です。同センターの中核を占める国立近代美術館の、20世紀初頭から今日にいたる近現代美術コレクションは世界屈指の規模を誇り、キュビスムの優品を数多く収蔵しています。“建築界のノーベル賞”といわれるプリツカー賞を受賞した2人の著名な建築家、リチャード・ロジャースとレンゾ・ピアノによって設計され、パイプやチューブ状のエスカレーターがむき出しになったユニークな外観で、観光スポットとしても知られています。

【展示構成】
本展前半では、ポール・セザンヌやアンリ・ルソーの絵画、アフリカの彫刻など、キュビスムの多様な源泉を探る「キュビスムの起源」から始まり、ピカソとブラックがそれらを大胆に解釈しながら、緊密な共同作業によってまったく新しい絵画を創造する軌跡をたどることができます。

1　キュビスム以前 ― その源泉
2 「プリミティヴィズム」
3 キュビスムの誕生 ― セザンヌに導かれて
4 ピカソとブラック ― ザイルで結ばれた二人

後半では、その後のキュビスムの展開に重要な役割を果たしたフェルナン・レジェ、フアン・グリス、ロベール・ドローネー、ソニア・ドローネーら主要画家たち、キュビスムを吸収しながら独自の作風を打ち立てていったマルク・シャガールら国際色豊かで個性的な芸術家たちを紹介します。

5 フェルナン・レジェとフアン・グリス
6 サロンにおけるキュビスム
7 同時主義とオルフィスム ー ロベール・ドローネーとソニア・ドローネー
8 デュシャン兄弟とピュートル・グループ
9 メゾン・キュビスト
10 芸術家アトリエ「ラ・リュッシュ」
11 東欧からきたパリの芸術家たち
12 立体未来主義

また、第一次世界大戦という未曽有の惨事を経て、キュビスムを批判的に乗り超えようとするル・コルビュジエらのピュリスム（純粋主義）の運動や、合理性を重視する機械美学が台頭してくるまでを展覧します。

13 キュビスムと第一次世界大戦
14 キュビスム以降