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日々 / 早川克己 小品展 in GALLERY MoMo Ryogoku

GALLERY MoMo Ryogokuでは、「日々 / 早川克己 小品展」が9月2日(土)から10月月7日(土)まで開催されています。本展では、日々、去来するイメージをとらえた平面作品を中心に展示が構成されています。ほとんどの作品のサイズはA3サイズに統一されていて、一定のリズムで配置されたそれぞれの作品を観ていると、作家の中に現れたイメージの根源が想起され、私たち自身の“日々”と重なっていくようです。そして、私たちの日々の何気ない瞬間はどこへつながっていくのでしょうか。一見、おだやかにも見える作品のビジュルアルを楽しんでいると、いつのまにか自分自身を観ているようなアート体験になるかも知れません。

ギャラリーの扉を開けると、プルシアンブルーが印象的な小品の新作が、右側の壁面に24点、左側に17点配置されています。色材がにじみ、水の流れや顔料の沈澱など、意図せず画面に起こる現象を捉え、固着させるという最小限の作為によって、作品ごとに違うさまざまなイメージが画面に定着しています。作品からは、その最小限の作為を見極める、作家の集中力や緊張感が感じられます。作家自身はこれを内的形象というよりも、外的なコンタクト、外部とのコミュニケーションであるといいます。

早川克己は1970年に栃木県で生まれ、1992年に日本大学芸術学部美術学科を卒業後、アメリカに渡ります。1998年にSchool of Visual Arts New Yorkにて修士号(MFA)を取得後、ニューヨークで制作発表を続け、2008年に帰国して拠点を東京へと移します。この年からGALLERY MoMoでの個展を中心に、アメリカ、ドイツ、オランダ、スペイン、台湾など世界的なスケールで作品を発表しています。作品は、マラガ現代美術館、米国小売大手ターゲット、Louis Vuittonコレクションに収蔵されています。

早川は、色と面、線の構成という、絵画におけるモダニズム的観点をふまえ、都市の俯瞰イメージと電子回路のイメージの重ね合わせ、類似性を探り、ミクロとマクロがダイナミックに交錯する表現の探求に取り組んできたそうです。初期作品では、絵の具を重ねた色層を電動ドリルで削り出す手法を用いた作品制作を手がけてきました。

2010年からは、本展でも観ることができる、紙を使った半立体的な作品の制作を開始しています。このシリーズでは絵画作品で取り組んできた主題をより発展させ、俯瞰的かつミクロな視点が融合したダブルイメージがよりクリアになりました。さらに作品と鑑賞者の関係性、身体性と記憶など、テーマの射程を広げ、作品制作を展開しています。

また、スモールスケールの紙の作品も数点展示されています。都市的でシステマティックな直線的な作品と、アンビエントで静謐な作品が交互に交じって、直線的に配置されています。

本展の作品はどれも抽象的なイメージで構成されていますが、あるものは夜景に見えたり、あるものは街角を思い出させたり、観る人の多くは具体的なイメージを想起させられるのではないかと思います。心をからっぽにして作品を眺めていると、自分の記憶の中にあるさまざまなものが引き出され、また作品そのものに観ている自分の姿が映りこむことで作品の中に吸い込まれ、作品と自分の中の「日々」とつながっていきます。つながった後、どこまでイメージや思索が広がるか、それは観る人それぞれの楽しみではないでしょうか。
最後に、作家自身のステートメントを紹介します。

《アーティストコメント》

◆◆◆

日々移りゆく時間の中で去来する想念、感覚、あるいは何か。
なにか?
認識する現在は常に過去で、流れ、滲むマテリアルは時間を刻み未来と過去をつなぐ。
空間は距離をうみ、視覚はその距離によってものを知覚する。静まり返った湖面に着水する一羽の水鳥、現れる水紋、Canal Streetの地下鉄駅で明滅する蛍光灯、放たれる微細音、超新星爆発、パンのカビ、加熱した回路、冷却ファンのノイズ、マグマの流れ、響き渡るサイレン、欠ける月、満ちる海、フレームの煌めき、空を区切る電線、錆びた車輪、触媒としての自己、見えているものと認識とのズレ。そしてその裂け目からナニカがやってくる。

2023年 早川克己

◆◆◆

タイトル 日々 / 早川克己 小品展
会期 2023年9月2日(土)~ 10月月7日(土)
会場 GALLERY MoMo Ryogoku
住所 130-0014 東京都墨田区亀沢1-7-15
Webサイト https://www.gallery-momo.com/
開廊時間 11:00 ~ 19:00
休廊日 日曜・月曜・祝日
観覧料 無料