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大久保 如彌|不確かな家、透明なからだ in GALLERY MoMo Ryogoku

GALLERY MoMo Ryogokuでは、大久保如彌(おおくぼ なおみ)の個展「不確かな家、透明なからだ」が10月14日(土)から11月18日(土)まで開催されています。本展では、大久保自身の「家」や「家庭」で感じてきた違和感と、その関係から、古くからの封建的な考えからくる女性の役割や「女らしさ」に疑問を投げかけるような作品が紹介されています。美しく描かれた装飾と、時にパターン化するように複数の同一人物が画面に登場する作品は、観る者に不思議な感情と多少の不安感を引き起こすような、作品に二面性があるように感じますが、それがひとつの魅力となっているようにも感じます。美しくも細やかな世界観に、あなたも出会いに来てはいかがでしょうか。

ギャラリーに入ると、パッチワークで彩られた、一見、楽しそうな作品が続きます。メインビジュアルにもなっている《Living in the Closely Glazed Space》は、3人の同じ女性の周りに一般的に女性が好みそうな、人形やドールハウス、飾り皿や布生地など、さまざまなモチーフが描かれています。支持体は作家が自作したもので、パネルに張られた生カンバスに描かれた細やかな表現は、マットでありながら鮮やかな発色で、独特の趣きがあります。
そうして楽しい気分のまま、奥の壁に進むと、ちょっと衝撃的な光景が目に飛び込んできて、それまで観てきた作品が単に楽しいだけではなく、隠れたメッセージがあることを知らされます。

大久保如彌は、1985年に東京都で生まれ、2011年武蔵野美術大学大学院修士課程を修了。2005年にシェル美術賞展に入選、2007年にはトーキョーワンダーウォール賞を受賞しました。その後、海外での展示やアーティストレジデンスプログラムに参加し、文化庁新進芸術家海外研修制度にて2017年からにニューヨークを拠点に活動し、2020年に帰国しています。

大久保は初期より、他者との繊細な関係性をテーマに作品を制作し、多感な少女の内面を描いてきました。自身をモチーフに顔を隠して描くことで、作品の中の少女に鑑賞者自身を、もしくは近しい女性を重ね合わせ、国籍を問わず多くの共感を得てきました。
近年では、社会性の強いテーマに関心を深めながら、その繊細で鮮やかな描写はそのままに、社会の中で様々な問題が埋もれていくように、大久保の作品からも強いメッセージが直接的に表現されることはありません。本展のほとんどの作品も、そうした表現姿勢の延長線上にあるように感じます。

しかしながら、奥の壁に配置された作品《Put a Fire to Set Me Free》は、燃えさかる一軒家とその火をつけたであろう女性が雨の降る中で池の中に立ち尽くすという衝撃的なもので、作品タイトルからは女性を縛りつけている家との訣別のように受け取れます。
家という小さな世界で教えられる価値観は、社会に出ていない子どもにとって、それが全てとなることが往々にしてあります。他者と関わっていく中で、様々な問題に直面しながら自己を確立していきますが、多くの女性たちが自身の家族や社会から刷り込まれてきた「女らしさ」に苦しみながらも、その呪縛から逃れられず、無意識に周囲や次世代に伝えていることも少なくないでしょう。

本展では、女性を家に縛りつけると同時に、自立の手段でもあり、表現の手段としても機能していた裁縫を作品に用いることで、古い制度や価値観へ疑問を呈しているようです。一方で、裁縫に集中していると心がやすらぎ、満足感さえあるというジレンマや二面性もはらんでいるようです。
また、繊細で簡単に傷が入りやすい素材であるガラスの立体作品は、多くの工程を経なければならず、そういった制作の工程すべてが、様々な問題が問題として表面化していく時間の長さやパッと見ただけではわからない根の深さも感じさせます。

大久保の作る作品は、小さな家という社会から生まれる問題を、日本社会でなかなか前進しないジェンダー問題にまで拡張しながら、鑑賞者に疑問を投げかけています。ペインティング作品と共に新たな展開を試みた立体作品と出会いに、ぜひ訪れてみてください。

最後に、アーティストコメントを公式サイトからの引用でご紹介いたします。

◆◆◆

【アーティストコメント】

ちくちくちくと縫うとき、ふと子どものころを思い出す。

料理も裁縫も家で小さい頃から教わってきた。いっときランドセルに裁縫道具しか入っていなかったようなわたしにはどちらも苦ではなく、なにも思わずそのまま大人になった。ただ女の子らしい服を着させられ、髪を短く切ったら男の子のようだとひどく怒られたことを思い出すと、それらを教え伝えることに無意識でも意図があっただろうと今は思う。そこに気がついた時モヤモヤとした気持ちになった。

縫うことは長い間女性を家に縛り付けてきたが、同時に技術の習得は自立する力を与え、針しごとは数少ない表現の手段を担ってきた。

昨今、周辺化されてきた「手芸」にも光があたり、また「家庭」や「家」への人それぞれの複雑な思いも様々な形で発露されるようになった。

今でも針を動かし縫う時間が生活の中で大切なのはなぜなのだろう。

そんな問いが出発点になっている。

2023年 大久保如彌

◆◆◆

タイトル 大久保 如彌|不確かな家、透明なからだ
会期 2023年10月14日(土)~ 11月18日(土)
会場 GALLERY MoMo Ryogoku
住所 130-0014 東京都墨田区亀沢1-7-15
Webサイト https://www.gallery-momo.com/current-ryogoku
開廊時間 11:00 ~ 19:00
休廊日 日曜・月曜・祝日
観覧料 無料