春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術 at 府中市美術館
府中市美術館では、「春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術」が2024年3月9日(土)から5月6日(月・振)まで開催されています。江戸時代の画家や絵を見る人たちの多くは、仏教と密接な暮らしをしていました。本展では、画家たちの制作の根底にあった「仏教」をキーワードに、来迎図から若冲、そして応挙や蘆雪の子犬まで、「ほとけの国」で生まれた、美しく、アイディアに溢れた作品を見渡すことができます。それぞれの画家の「個性」が際立つ、現代を生きる私たちの心をも魅了する「ほとけの国の美術」を楽しみにお出かけしてはいかがでしょうか。
ほとけの世界を描く めくるめく創意と工夫
「ほとけの国の美術」と聞くと、天平時代の優美な仏像や平安時代の洗練された仏画、あるいは鎌倉時代に運慶が作った端正で力強い仏像などを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、本展はこのような「仏教美術」とはちょっと違うところにフォーカスされている、たいへんユニークな展覧会です。
例えば、江戸時代の有名な画家、伊藤若冲が描いた白象の絵も、円山応挙や長沢蘆雪の無邪気でかわいい子犬の作品も、現代ではそれぞれの画家の「個性」に目が向けられがちですが、いずれも仏教がなければ生まれなかった美術なのです。
では、「ほとけの国の美術」とはどういうことでしょうか。本展では、画家たちの制作の根底にあった「仏教」をキーワードに、現代人の心を魅了する様々な作品が紹介されています。
例えば、この世に現れた浄土と地獄
人は死んだらどこへ行くのでしょうか?江戸時代の人々にとっても、この問題は切実だったようです。誰もが行きたい「極楽浄土」、そして絶対に行きたくない「地獄」。この二つの世界の様子は経典に書かれていますが、文字だけではなく「目で確かめたい」という人々の気持ちが、ファンタスティックな浄土や思わず目を背けたくなるような地獄の絵画を生み出しました。
平安・鎌倉時代に花開いた仏画の完成された造形美は、のちの時代にも輝きを失うことのない「古典」として生き続けました。様々なスタイルの絵画が登場した江戸時代だからこそ、仏画の美しさに真摯に向き合う画家たちも大勢いました。古(いにしえ)に学ぶことから生まれた、江戸時代の優れた仏画も紹介されています。
「常識を超えよ」と説く禅のスピリットを伝える「禅画」
江戸時代は禅宗が最も普及した時代で、その教えを伝えるための「禅画」も数多く描かれました。変な絵、かわいい絵、不気味な絵・・・・・・。「常識を超えよ」と説く禅のスピリットを、おかしく、そして鋭く伝える作品の数々を本展で観ることができます。
中には「ほとけの国」の“人気キャラ”とも言える観音さまに羅漢さん、 寒山(かんざん)拾得(じっとく)、 布袋さま、などなど。「いかに変わっているか」を競う寒山拾得の絵や、絵の中で色々なことをさせられて「遊ばれる」布袋など、多彩で楽しい作品が、それぞれの仏や人物に備わる徳やその逸話から生まれています。
「動物にも人と同じ心がある」という仏の教え
現代人の心もつかむ応挙や蘆雪の子犬の絵は、一見、仏教とは無関係に見えるかもしれませんが、実は仏教なしには生まれなかったと言われています。「動物にも人と同じ心がある」という、古くから日本の人々を包み込んできた仏の教えが、動物の命を思いやり、絵の中の動物を愛おしむ、そんな文化を生み出したに違いありません。
また、子犬の絵の名手として円山応挙と並ぶ人気を得た、長沢蘆雪の子犬の絵は、ほとんどが掛軸ですが、大きな屏風に描かれた作品が発見されました。師の応挙が描く子犬が賢そうな雰囲気を漂わせているのに対して、蘆雪の子犬は、ゆるくて、ひたすらやんちゃです。そんな蘆雪犬の魅力が詰まった作品が、本展で初公開されます。
展示作品の中心は江戸時代の絵画ですが、昨年修理を終えたばかりの室町時代の仏画の大作、京都市・二尊院の《二十五菩薩来迎図(らいごうず)》全17幅のほか、近世以前の仏教美術の優品も展示されます。来迎図から若冲、そして応挙や蘆雪の子犬まで、「ほとけの国」で生まれた、美しく、アイディアに溢れた作品を府中市美術館で楽しんではいかがでしょうか。
タイトル | 春の江戸絵画まつり ほとけの国の美術 |
会期 | 2024年3月9日(土曜日)~ 5月6日(月曜日・振替休日) 前期:3月9日(土曜日)~ 4月7日(日曜日) 後期:4月9日(火曜日)~ 5月6日(月曜日・振替休日) *全作品ではありませんが、大幅な作品の展示替えを行います。 |
会場 | 府中市美術館 2階 企画展示室 |
住所 | 〒183-0001 東京都府中市浅間町1丁目3番地(都立府中の森公園内) |
Webサイト | https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/tenrankai/kikakuten/Art_in_the_Land_of_Buddha.html |
開館時間 | 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
休館日 | 月曜日(4月29日、5月6日は開館) |
料金 | 【一 般】 700円(560円) 【高校・大学生】 350円(280円) 【小・中学生】 150円(120円) ※( )内は20名以上の団体料金。 |
備考 | ※未就学児は無料。 ※障害者手帳等(ミライロID可)をお持ちの方と付き添いの方1名は無料。 ※府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」提示で無料。 ※「ほとけの国の美術」展観覧料金でコレクション展もご覧いただけます。 ※2度目は半額! 観覧券をお求め頂くと、本展1回限り有効の観覧券半額割引券が付いてきます。 ※最新の開館状況については、府中市美術館のウェブサイト、またはハローダイヤル(050-5541-8600)等にてご確認ください。 |