石田恵嗣 個展「短編集 カエルの唄」 in ART FRONT GALLERY
アートフロントギャラリーでは、石田恵嗣 個展「短編集 カエルの唄」が2023年7月28日(金)から8月20日(日)まで開催されています。石田は海外の絵本の挿画などから着想を得て、物語性の強い作品を紡ぎだします。作品のひとつひとつに馴染みやすいキャラクターが登場するほか、いろんな謎めいたシチュエーションや道具などが表現されており、私たちは観たとたんに“謎解き”に夢中になります。それは作品を観ている間はもちろん、次の日からも頭の片隅にちょっと残っていて、絵柄を思い出しては「あれは何を意味する、どんなストーリーだったのだろう?」と終わりの見えない“謎解き=想像”を楽しむことになるでしょう。
石田にとって同ギャラリーでは2021年の個展以来2度目となる本展で、その独自の世界にあなたも触れてみてください。
ギャラリーに足を踏み入れると、そこには絵本のどこかのページを開けたようなシーンが壁面にいくつも展開されています。個展のタイトル通り、まさに“短編集”のようです。
ひとつひとつ観ていくと、なぜネズミは目隠しをしてるんだろう?、ウサギは少女の背中に手を置き、何か促しているのだろうか?、逃げるように見える少年が手にする松葉づえは彼のものなのだろうか?・・・などなど、作品でストーリーが語られる上で重要なポイントにどんどん疑問がわいてきて、あっという間に作品の世界観に引きずりこまれます。
そこには単なるファンタジックなおとぎ話のような世界だけではなく、マザーグースやグリム童話に出てくるような人間の本性やエゴも見え隠れしており、ちょっぴりダークな輝きも放っているようです。
石田恵嗣は1975年に千葉県で生まれ、2006年より2013年まで渡英し、チェルシー・カレッジ・オブ・アートとロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学び、その後の2年間はドイツで暮らすなど、長期にわたりヨーロッパの歴史や文化に触れ、オスカー・ムリーリョやダニエル・クリュー・チャブなどヨーロッパのスター候補の画家や、現在日本で頭角を現す現代美術作家の冨安由真らとの交流から多大な影響を受けたといいます。また週末に開催される蚤の市などにもひんぱんに出向き、そこに並べられているいろんな絵本や古本などを眺めるのが好きで、そこからも刺激を受けたといいます。
石田の絵画作品の魅力は、エネルギー溢れる抽象画のような大胆な筆致と、絵本、図鑑、マンガといった既存のイラストレーションから抜き出されたキャラクター達が醸し出す、行く末がわからない謎に満ちた物語性にあります。
作品を観る私たちはキャラクターのシチュエーションを追っていきますが、異なる物語のイラストが組み合わされたことで、新たに生まれた唐突なシチュエーションを前にして、そのストーリーの中身を考える“謎解き”が始まるのです。
しかし、その周囲に目を見張ると流れるような筆致や、物の形を無視してつけられた色によって画面に放り出され、私たちが知る既存のストーリーにはたどり着くことはないでしょう。どこへ連れて行かれるのか分からない、この不安定さが大きな魅力で、再びキャラクターのイメージへと目を運ばせ、私たちを終わりのないストーリーへといざなうのです。
現在、石田は瀬戸内海の、とある静かな島で制作に打ち込んでいるそうです。その落ち着いた環境でドローイングを繰り返していると、どんどん想像が広がっていき、ある時点でストーリーが固まっていくそうです。このストーリーづくりについては作家本人が以下のようにコメントされているので引用します。作品を観る楽しさをふくらませるものとしてご一読ください。
【作家コメント】
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ドローイングの工程で、私は違う物語の断片をシャッフルして嘘話を作ります。海外の古い絵本を多く参照するため国も時間もてんでバラバラです。私の場合自分が描きたいものが先にあるわけではなく、絵本に出てくる一コマ一コマを眺める中で、絵本ならではの惹かれるキャラクターやシチュエーションを見つけたら、そこから独自の想像の中に潜りそれを拾い集めて、ひとつの場面へと集約していきます。
わたしにとってペインティングは上記の工程で生まれたドローイングを、絵具を通して絵画に翻訳する作業だと考えています。其処には、身体的な動きや絵具が硬化するまでの時間など、元のドローイングにはない要素が加わるためその時々によって様々に変容していきます。新たに加わる要素である絵具による筆の跡と対峙しながらドローイングに奥行を与える行為を行うか、または元のドローイングから解放されようとします。今回もこの行為を通して生まれた画面に皆さんが対峙したときに、その体験が、まるで日常の出来事の様に、“眼前で起きている状態”として感じてもらえるような現在進行形のストーリーであればよいと考えています。
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タイトル | 石田恵嗣 個展「短編集 カエルの唄」 |
会期 | 2023年7月28日(金)~ 8月20日(日) |
会場 | ART FRONT GALLERY |
住所 | 東京都渋谷区猿楽町 29-18 ヒルサイドテラス A棟 |
Webサイト | https://www.artfrontgallery.com/exhibition/archive/2023_06/4813.html |
開廊時間 | 水・木・金 12:00~19:00 土・日 11:00~17:00 |
休廊日 | 月曜日、火曜日、夏季休廊(8月11日~15日) |
観覧料 | 無料 |