イェンニ・トゥオミネン　渋谷区猿楽町、王様のいない森。in のこぎり

株式会社トンカチが運営するギャラリー「のこぎり」ではフィンランドのアーチスト、イェンニ・トゥオミネンの個展「渋谷区猿楽町、王様のいない森。」が2023年8月25日（金）から10月15日(日)まで開催されています。
イェンニは日本でも有名なアパレル企業・マリメッコのデザイナーとして知られますが、セラミック、テキスタイル、ペインティング、イラストレーション、ヴィデオなど、ジャンルを超えて活動するアーチストでもあります。本展は2022年に開催された「渋谷区猿楽町、フィンランドの森。」に続く日本では2回目の展覧会となります。新作を中心に100体以上の立体作品と22枚の小さな絵で構成されたイェンニならではの“森”に遊びに来てはいかがでしょうか。

ギャラリーに入ると、白い壁一面に展開された10cm程度の短い角材の上に、小さな“森の住人”たちが佇んでいる様子が目に飛び込んできます。いずれも小さい作品ですが、ひとつひとつが表情豊かで、なんだかギャラリー全体で森のパノラマが展開されているように感じます。
すでにイェンニの陶芸やポスター、絵などの作品をお持ちの方は、彼女の作品を愛し、その世界観をよくご存じだと思います。それでも、彼女が理想とする「森」の姿は、これだけの100点以上の作品で構成されてこそ、体感できるものではないでしょうか。そういう意味で、初めての方はもちろん、イェンニをよく知る方にとっても貴重な機会になるでしょう。

イェンニ・トゥオミネンはトゥルク芸術アカデミーでファインアート、ヘルシンキ芸術デザイン大学でグラフィックデザインを学び、2006年のマリメッコのデザインコンペティションで優勝しました、その後、同社にて多くのデザインを手掛け、2007年にはイラストレーション部門においてフィンランド国家賞を受賞しています。アーチストとしては、イラストレーション、アート、デザインの領域を超えて活動し、陶器、絵画、テキスタイルに取り組んでいます。現在はフィンランドのポルヴォー（Porvoo）という、首都ヘルシンキから東へ約50kmにある中世の面影を残す素敵な街に暮らしています。彼女自身もポルヴォーをフィンランドを訪れる人にぜひ勧めたい場所としており、彼女が「おとぎ話の森」と呼んでいるシコサーレでの森林浴や、テルヴァヤルヴィ湖で泳ぐなどを旅のお楽しみとしてあげています。

前回の個展は“フィンランドの森”が主題でしたが、今回は“王様のいない森”というタイトルにも加えられたキーワードが目を引きます。フライヤーの裏面に詳しく記されているように、“ 一人ひとりが森と繋がっているべき、統治する王様より、もっと巨大なものと繋がらなければいけない”という主旨のメッセージが込められています。
少し哲学的にも思われるかも知れませんが、実際にギャラリーの展示を前にすると感じられるのは森の平和な情景です。そこには動物や植物、人間も含めてみんなが仲よく共存していて、静かな命のサイクルが巡っているようです。
また前回と違う点として、船に乗った人物や海の泡から生まれたとされるヴィーナスなど、水にかかわるモチーフが登場していることがあげられます。これは南米の大森林であるアマゾンの女性から発想されていたり、フィンランドが森と湖の国であることなどを私たちに思い起こさせます。

本展の作品タイトルのほとんどはフィンランド語のようです。気になった作品があれば、お手持ちのスマホで、google翻訳などを使って作品のタイトルを調べてみてはいかがでしょうか。思いもかけない訳語が飛び出して、またひとつ面白い発見があるかも知れません。

あなたも王様のいない、にぎやかで平和な森を訪れてはいかがでしょうか。

【関連リンク先】
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https://shop.tonkachi.co.jp/collections/jenni-tuominen​
インタビュー記事（2023/08/18）
​https://shop.tonkachi.co.jp/blogs/reading-matter/talk-with-jt
インタビュー記事（2022/07/25）
https://shop.tonkachi.co.jp/blogs/reading-matter/knock-on-61