伊藤慶二 「伊藤慶二の絵と陶彫」 at 小山登美夫ギャラリー六本木
小山登美夫ギャラリー六本木では、伊藤慶二にとって同ギャラリーでは2回目の個展となる「伊藤慶二の絵と陶彫」が、2023年11月25日(土)から12月16日(土)まで開催されています。88歳を迎えたアーティスト・伊藤慶二は、すでに確固たる評価を得ながらも、安定を求めず常に新しい道を模索し続けている作家です。本展では、伊藤が継続して表してきた「人間とはいかなる存在か」というテーマにせまり、制作の源流ともなる絵の作品と、表現者としての評価を確立した陶彫の作品が紹介されています。作品だけでなく、空間構成も含め、人の顔や姿、表情やふるまいなどがあなたを魅了することでしょう。
意欲的な姿勢がすぐに伝わってくる第一印象
伊藤慶二は長年、幅広いジャンルを横断し、新しい表現にチャレンジしてきました。その意欲的に制作活動を続ける姿は、多くの若い作家達の指針となっています。そうしたエネルギーはギャラリーの中に進んでいくと、すぐに感じることができます。
本展では、人の顔や姿、動作など、伊藤が継続して表してきた「人間とはいかなる存在か」というテーマにせまり、制作の源流ともなる絵の作品と、表現者としての評価を確立した陶彫の作品が紹介されています。
全体的に人物と家の形を表す作品が中心となっており、人物はシンプルな表現ながら、じっと見ていると人間味まで伝わってくるようです。家は昔の竪穴式住居のようでも、現代的なビルのようでもあり、シャープで繊細な輪郭線が作り出す、重圧感ある存在として表されています。
越境の先駆者、垣根なき絵画と陶芸
伊藤はやきものが盛んな岐阜県土岐市に生まれ、武蔵野美術学校で森芳雄、麻生三郎らに師事し油画を専攻。その後岐阜県陶磁器試験場デザイン室に籍を置き、クラフト運動の指導者・日野根作三に大きな影響を受けました。その後自ら、やきもの制作を手がけ始めます。
こうした経歴から分かるように、伊藤にとって絵画と陶芸の制作は、それぞれが影響し支え合っている、切ってもきれない関係にあります。
「自分の中で陶とキャンバスに越境はなかった」と自ら語るように、ジャンルにとらわれない伊藤の自由な哲学性には目を見張るものがあり、近年現代アートにおいてペインターが陶芸の表現を試みることが多い中、伊藤はその越境の先駆者といえるでしょう。
絵画は、1本の線がキャンバスに最後まで残ることもありますが、陶芸の場合、最後は自らの手を離れ、火に託すことになります。しかしながら、土の色や質感を引き出すために、焼き締めた土肌に顔料を塗って拭き取るなどの絵画的なアプローチも見られます。そこには絵画と陶芸それぞれの特徴を考察し、楽しみながら一分の隙も許さない的確なフォルムを示す、広大な視野で作り上げた「伊藤慶二の作品世界」があるのです。
人物と家の形を表す本展の作品の特徴
人物は「面(つら)シリーズ」の、その表情は奈良の仏像、能楽堂での能面など、若い時にインスピレーションを得たものがどこか形に出てきており、細い線で目と鼻と口があれば人のように見えるという不思議さ、時代を超えた「人間」の存在性が現れています。
どの時代、場所でも人と家の関わりはあり続け、またその形は多種多様です。私たちに当たり前すぎて忘れがちな「人と家」の関係やあり方、自然から身を守る「家という存在」という謙虚で愛情深い視点を改めて気づかせてくれます。
すでに確固たる評価を得ながらも、安定を求めず常に新しい道を模索し続ける伊藤慶二の模索と創作はまだまだ続きがありそうです。そして私たちもそれを観つづけていたい、そんな気持ちになるアート体験になるでしょう。
タイトル | 伊藤慶二 「伊藤慶二の絵と陶彫」 |
会期 | 2023年11月25日(土)~ 12月16日(土) |
会場 | 小山登美夫ギャラリー六本木 |
住所 | 東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F |
Webサイト | http://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/keiji-ito2023/ |
開廊時間 | 11:00 ~ 19:00 |
休廊日 | 日・月・祝日 |
観覧料 | 無料 |