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菅 実花 シスターフッド in Gallery10[TOH]

Gallery10[TOH]では、菅実花の個展「シスターフッド」が2023年7月8日(土)から7月30日(日)まで開催されています。菅はこれまで作家自身とそっくりの人形と一緒に撮るセルフポートレートを通じて、視覚的な判断の不確かさを明らかにする作品群で知られています。本展は、表現手法はこれまでと変わらないように見えますが、より人間的な感情に注目し、特に女性同士の連帯「シスターフッド」をテーマにした展覧会となります。

タバコの自販機を模した扉を開けて短い階段を上がると、外光がたっぷりと入る明るい展示スペースが広がります。思えば、筆者にとって、こんなに明るい場所で菅の作品を観るのは初めてのような気がします。窓の外に電車が行き交うという日常性と、架空の舞台設定がされた菅の作品の世界観の両方が頭の中に入ってきて、不思議な感覚を抱きます。

菅実花はこれまで、作家自身の頭部を型取りしてそっくりに作った人形と一緒に撮るセルフ・ポートレートの「あなたを離さない/I Won’t Let You Go」シリーズを手掛けてきました。
どちらが人形か見分けることが難しく、双子の姉妹のように見えることで、生命と非生命、生と死、本物と偽物、過去と未来など、対比そのものを撹乱し、視覚的な判断の不確かさを明らかにする作品群です。

本展では、ラブドールメーカー・オリエント工業の協力で複数体の等身大人形を撮影した新作《Happy Dinner Party》を中心に展示されています。

《Happy Dinner Party》は、3人の女性がカナッペを作りながら悩みを打ち明けあう様子が人形を使って写真で表現されている作品です。より人間的な感情に注目し、特に女性同士の連帯「シスターフッド」がテーマになっています。ここでは、今日において、単純な外見の精度よりも、愛情やコミュニケーションを感じ取れるかどうかの方が、人間性として重要だと考えられているのではないかという想いが込められているといいます。

3人の女性は、それぞれの悩みがあるのでしょうが、おしゃべりがどこまでも続いていくようで、なんだか楽しそうにも見えます。動きのある瞬間が切り取られ、照明も無色のように見え、とてもシンプルな印象を受けます。

ギャラリーの窓辺には、菅のこれまでの作品の資料や最近の心境を語った新聞記事などが用意されています。初めて菅の作品をご覧になる方は、何も知らなくても作品の世界を充分に楽しめると思いますが、こうした資料に目を通してから本展の作品に向き合うのも興味深いでしょう。
菅の現在地である作品の世界と出会いに、訪れてみてはいかがでしょうか。

【作家プロフィール】
菅 実花
1988年生まれ。2021年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程修了。2016年にラブドールを妊婦の姿に加工しマタニティフォトを模して撮影した修了作品《The Future Mother》で注目を集める。大衆的な写真文化と、人形の文脈を交錯させた写真・映像作品を手がけ「人間と非人間の境界」を問う。人形を撮った写真という二重にメディア化されたイメージを用いることによって、生命と非生命、生と死、本物と偽物、過去と未来など、対比そのものを撹乱する。主な個展に2019年「The Ghost in the Doll」原爆の図丸木美術館(埼玉)。2021年「仮想の嘘か|かそうのうそか」資生堂ギャラリー(東京)。出版に2018年共著『〈妊婦〉アート論』(青弓社)。2021年より『週刊読書人』で写真とエッセイを連載中。VOCA展2020奨励賞受賞。

 

タイトル 菅実花 シスターフッド
会期 2023年7月8日(土) ~ 7月30日(日)
会場 Gallery10[TOH]
住所 151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-20-11 第一シルバービル1B
インスタグラム https://www.instagram.com/gallery10.toh
開廊時間 13:00〜20:00
休廊日 月曜、火曜
観覧料 無料