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川島秀明 「Stream」 at 小山登美夫ギャラリー六本木

小山登美夫ギャラリー六本木では、川島秀明展「Stream」が2024年3月23日(土)から4月20日(土)まで開催されています。作家にとって同ギャラリーでの7度目の個展となる本展では、友人の死や幼い子どもとの出会いなどにより、心境の変化が大いに作風にも表れた、新たな展開の新作ペインティングが発表されています。川島の作品をよく知る方は、その作風の変化を楽しみに、そしてあまり知らない方も、川島が生み出す穏やかな“Stream”に身を任せ、ここにしかない世界観を体験しに、お出かけしてみてはいかがでしょうか。

観る人をやわらかく受け容れる世界観

ギャラリーに入ると親しみやすい、観る人をやわらかく受け容れるような世界観が広がっています。それは時に観る私たちの心の中の原風景のようであったり、何かを祈りであるような人物であったり、三島由紀夫などがアイコニックに扱われたポップな感じがするものまでバリエーション豊かです。その中には赤い彼岸花を描いたものや、筆者には観た瞬間に佐伯祐三の《立てる自画像》のように感じた作品もあり、それらは、ほのかに死の匂いすらします。


2年間の仏道修行などを経てアーティストへ

川島秀明は1969年に愛知県で生まれ、1991年に東京造形大学を卒業後、1995年から2年間比叡山延暦寺での仏道修行などを経て、2001年アーティストとしての制作活動を開始しました。活動初期より川島は一貫して自意識と向き合い、さまざまな顔とそこに現れる憂いを帯びた繊細な目や表情を描いてきました。それは、その時々の感情や試行錯誤をかさね、自分の心情を象徴的に投影した、自画像に近いものだったといいます。

友人の死と作風への変化

しかし近年のコロナ禍や、肉親、親しいアーティストの死をきっかけに、川島は「自らの死」を意識するようになったといいます。と同時期に、友人家族の幼い子どもとの出会いと交流ができたことは、とても新鮮で大きな体験となったようです。
人の存在は生命の循環という大きな流れの一部であることに気づき、それにより「自己」への囚われから少しづつ解放され、見たもの聞いたものに素直に反応して表現するようになりました。
今まで川島作品は、アクリル絵具による、薄く淡い色の巧緻なグラデーションが特徴的でした。しかし死を意識した今は、絵を始めた若かりし頃は苦手意識があった油絵具を使い、すべての本出展作を色鮮やかに描いています。

本展を象徴する作品《Stream》

《Stream》(2023年)は、近所の公園でその家族とピクニックをした際、波立つ池をながめる女の子の様子を、その子のパパが撮った写真から描いたものです。彼岸と此岸、その水面が彼女の前途を暗示しているようで、川島はそれを草葉の陰から見守っている、そんなイメージに見えたといい、まさに本展を象徴する作品となっています。
また、本展のタイトルは、鴨長明「方丈記」の冒頭の有名な一節からの引用でもあります。

ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。

《Guide》(2023年)は公園で女の子が川島の手を引き、遊びながら案内をしている様子です。川島は彼の友人である、その子のママが撮った写真から作品を描きました。
その日は川島の父が亡くなって間もない頃で、父=年老いた存在と向き合った時間が終わり、幼児と一緒にいる世界が現れたその写真は、まるで自身が未来からの使者によって黄泉の国へ導かれるようなイメージに見えたそうです。

私たちのどこかの記憶や想いに結びつく

川島の作品に登場する少女、あるいは女性は、いずれも穏やかな表情や仕草を見せており、観ている私たちの気持ちまで落ち着かせてくれるようです。また、切り取られ、描かれたひとつひとつのシーンには深遠な世界がひろがっていて、それが観ている私たちのどこかの記憶や想いに結びついて来るようです。
ギャラリーに満ちている、穏やかで静かな”流れ”に身を任せていると、私たちの意識もどこかへ流されていくように感じるくらい、心地よいアート体験になるのではないでしょうか。
川島の作品をよくご存じの方も、これまでとは少し変わった作風を目撃しに、訪れてはいかがでしょうか。

タイトル 川島秀明 「Stream」
会期 2024年3月23日(土)〜 4月20日(土)
会場 小山登美夫ギャラリー六本木
住所 東京都港区六本木6-5-24 complex665 2F
Webサイト http://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/kawashima2024/
開廊時間 11:00 ~ 19:00
休廊日 日・月・祝日
観覧料 無料