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久保寛子展「鉄骨のゴッデス」 at ポーラ ミュージアム アネックス

ポーラ ミュージアム アネックスでは、久保寛子の個展「鉄骨のゴッデス」が2024年4月26日(金)から6月9日(日)まで開催されています。本展で出会うのは、工事現場で見かけるブルーシートや鉄、コンクリートなど、武骨な見た目の素材から創り出された魅力あふれる神像や土器などです。先史芸術や文化人類学の学説などを着想源に創り出される久保の作品は、厳しい自然に耐えながら営みを続ける人びとの心の支えをモチーフに、ポジティブな生のエネルギーを携えています。あなたも、神秘的な作品から不思議なパワーをもらいに、訪れてはいかがでしょうか。

まるで神殿へ入っていくコリドール

エレベータを降りると、神殿へまっすぐのびる参道をかたちづくるように、両脇に配置された「青い尖底土器シリーズ」が目に飛び込んできます。素材はブルーシートと糸であることはすぐに分かり、また展示台にはむき出しの合板が使われています。
展示スペースは、天井から吊られている黄色い防風ネットで仕切られ、なんだかピラミッドの中に入っていく気分にもなります。中央に“ゴッデス(女神)”が座っているのが見えますが、その周りを守護神のようにアミュレット(魔除け)や立体作品が取り巻いているかのようです。

古来日常にあった祈りのかたちを現代に置き換える

久保寛子は1987年に広島県で生まれ、テキサスクリスチャン大学美術修士課程を修了しています。先史芸術や民族芸術、文化人類学の学説のリサーチをベースに、身の回りの素材を用いて、古来日常にあった祈りのかたちを現代に置き換えた彫刻作品を発表しています。近年では、瀬戸内国際芸術祭2016やさいたま国際芸術祭2020などで、その土地に呼応したダイナミックなインスタレーション作品を発表し、注目を集めています。
久保の作品は、厳しい自然に耐えながら営みを続ける人びとの心の支えをモチーフに、ポジティブな生のエネルギーを携えています。それは自然災害など「いのち」を考える岐路に立つことが多い今、心の拠り所を模索する私たちの“心の用”に応えてくれているようです。

武骨な見た目の素材がかもし出す気品と力強さ

あなたは、中央に鎮座する《鉄骨のゴッデス》の前に立つと、そのあふれんばかりの気品と力強さに声が出るかも知れません。凛として前を向く顔、地をしっかりつかんでいる足と爪、ぴょんと跳ねて愛嬌のあるしっぽ、大きく広がりそうな背中の翼・・・。
そして何より驚きなのが、工業用製品である鉄の針金やプラスチックネットという武骨な見た目の素材が、このような豊かな表情を表現していることです。

その驚きは、その先の「ヘッドライトシリーズ」でさらに深まります。無造作に立てられた脚立のまわりに図太く黒い電源コードがからみつき、8体の動物の頭部が投光器とともに配置されています。ひとつひとつの表情は、陵墓の壁画などで見たことがあるような、何かを威嚇しているような印象もありますが、ずっと観ていても飽きることはありません。

意味や祈りが込められているフォルム

壁面には、コンクリートで作られたという27体のアミュレット(魔除け)が配置されています。こちらもひとつひとつに意味や祈りが込められているフォルムになっており、単に神格化されたものだけでなく、日常の生活に通じるようなイメージをさせるモチーフもあります。

祈りといえば、奥に展示されている《母子像》もそれを強く感じさせます。なぜ、体が3つに分かれているのか、ちょっとショッキングで、いろいろ考えさせられます。

久保が、工事現場にあるような武骨に見える工業製品を素材として用いる意図は、この記事の最後で引用する「アーティストコメント」に述べられています。
また品格や力強さがありながら、どこか愛嬌があり、可愛いとも思える表情が各作品に潜んでいることも、観る楽しさを大きくふくらませる魅力ではないかと思います。あなたも、神秘的な作品から不思議なパワーをもらいに、訪れてはいかがでしょうか。

最後に本展の公式サイトに掲載されているアーティストステートメントを引用で紹介します。

【アーティストステートメント】

◆◆◆

鉄骨のゴッデス

2024年の元日、大きな地震が能登半島を襲いました。自然災害を目の当たりにするたび、私たちは自らが築いてきたものや、自ら自身の脆弱性を痛感します。高層ビルや地下鉄、人工衛星などの技術も、先史時代の土器や石像、洞窟壁画と同じく、厳しい自然に対抗し、適応し、祈りながら生きてきた人類の生の証です。

柳宗悦は民藝論を通じて、民衆が生み出す実用品にこそ美が宿ると説きました。すなわち「用の美」です。それに対抗するものは、「用」から離れて「美」のために作られた美術品や、「利」のために生み出された工業品であると言います。
宗教美術や民俗芸術も、人間の精神的な必要性、いわば「心の用」から生まれた民藝です。

私が作家としてこれらを手本とする理由は、現代の合理性では計り知れない、豊かな神話的思考の具現であり、今もなおヒトはこのような思考を必要としていると感じるからです。
神話や民藝を失いつつある現代。効率化された工業製品の中に、ゴッデス(女神)を見出すことは可能でしょうか。

私は身の回りにある素材から道具や偶像を生み出してきた古人に倣い、いま身近にあるもの、例えばブルーシートや軍手やワイヤーメッシュを使って作品を作ります。それらが新しい神話の断片となり、女神像の身体となることを信じて。

2024
久保寛子

◆◆◆

タイトル 久保寛子展「鉄骨のゴッデス」
会期 2024年4月26日(金)~ 6月9日(日)
会場 ポーラ ミュージアム アネックス
住所 〒104-0061 中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
Webサイト https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
開館時間 11:00-19:00 (入場は18:30まで)
休館日 会期中無休
観覧料 無料