マリアンヌ・ハルバーグ　「私はここ」in のこぎり

ギャラリー「のこぎり」ではスウェーデンのセラミックアーチスト、マリアンヌ・ハルバーグの個展「私はここ / I AM HERE」が、2023年10月20日(金)から12月10日(日)まで開催されています。本展は同ギャラリーのオープニングとして2022年4月に開催された「マリアンヌはだれ？ / Who is Marianne?」につぐ2回目の個展となります。彼女の永遠のテーマである「Be Kind（やさしくあれ！）」を体現するような、様々な形の60点以上の作品が展示されています。作品だけでなく、展示もシンプルですが、とてもかわいく、心が満たされるような体験を楽しめることでしょう。

午後の陽射しがそそぎこむギャラリー「のこぎり」に足を踏み入れると、マリアンヌ自身が今回は可愛い過ぎないように、そして色が好き過ぎてノイズになったので色をやめたと語るように、白い陶磁器の肌とコバルトの線が美しい作品が目に飛び込んできます。
作品だけでなく、密にならないように壁面だけを使って作品が配置された展示もとてもシンプルなのですが、目には見えないけれど、いろんなものの存在を感じて、不思議とにぎわいを感じてしまいます。

作品はどれもマリアンヌの身近にあったようなものがモチーフになっており、私たちから見れば家の中の“脇役”のような存在が、ここでは主役となっているようです。作品の中にはサボテンが植えられている小さな植木鉢があります。こちらはマリアンヌの作ったオリジナル作品をもとに、古くから陶芸の街として知られる愛知県瀬戸市の工房で製作されたもので、何度も試作品を作って、マリアンヌとリモート会議で打ち合わせて生まれたこだわりの逸品です。
これらの一輪挿しや植木鉢などを見ていると、彼女の作品は家に持って帰って、自分の好きな何かに使ってみて完成するような気もします。

セラミックアーチスト、マリアンヌ・ハルバーグは1952年に、スウェーデンの港町ヨーテボリに花屋の娘として生まれました。青春時代に世界を放浪した後、作陶を開始し、今では唯一無二の作風が先進的クリエイターの注目を集め、若い世代からは憧れの陶芸家として名前が挙がるほどです。アーチストに熱愛されるアーチスト・マリアンヌの信条は「Be Kind（やさしくあれ！）」。本展では他にも個展タイトルの「I AM HERE」の他、「WHAT IS GOING ON」、「DON’T WORRY」などの言葉を記したプレートや、何かを暗示するような非常口のプレートが掲げられています。中にはスエーデン語で書かれたものもあります。

マリアンヌは本展開催に向けたインタビューの中で、「私は新しいことを考えるのが好きで、同じものをずっと作っていく人じゃないの。自分はあんなこともできる、こんなこともできるっていうのが好きなのね。そ～いうのはスルッとできるときもあるんだけれど、今回はよくよく頭を使って考えないとダメだったわ。」と語っています。
そして白い紙1枚の前で長い時間を過ごした後、机と椅子のスケッチが出来たことで、求めている新しいモノを掴んだと言います。この線だけで構成された、もっともシンプルなカタチが出来たことが最も大きな成果だったそうです。
この椅子には誰も座っていませんが、なぜか誰かが座っているような感じがします。特に、薄いピンクの展示台に隠れるように存在する椅子は、見つけてうれしくなって、思わず微笑んでしまうほどです。

本展は同ギャラリーのオープニングとして2022年4月に開催された「マリアンヌはだれ？ / Who is Marianne?」につぐ2回目の個展となります。彼女の作品をよくご存じの方や、前回の作品展を見た方は、いつもと少し違うと感じるでしょう。でも、しばらくして彼女の意図に気づいたり、変わらないマリアンヌらしさがあることがわかるかも知れません。

マリアンヌの作品は見た目だけでなく、そこから発信されるメッセージや着眼点がとてもシンプルです。そのおかげで私たちは自由に感じて、何かを探すように楽しむことができますし、見つけた後は何か心があたたかく満たされたような気分になれます。言葉にすると、ちょっと不思議に感じるかもしれませんが、実際に作品と出会うと、きっとあなたは納得するのではないでしょうか。

【関連リンク先】
オフィシャルサイト
https://mariannehallberg.jp/
オンラインショップ
https://shop.tonkachi.co.jp/collections/marianne-hallberg
本展のためのインタビュー
https://shop.tonkachi.co.jp/blogs/reading-matter/talk_with_mh1