マリー・ローランサン ―時代をうつす眼 at アーティゾン美術館
アーティゾン美術館ではマリー・ローランサン ―時代をうつす眼」展が2023年12月9日(土)から2024年3月3日(日)まで開催されています。マリー・ローランサン(1883~1956)は、同時代の画家マティス、ドラン、ピカソ、ブラックなどに影響を受けつつも、パステルカラーの独自の画風を生み出した日本でも人気の高い女性画家です。本展ではそうした時代背景や他の作家との関わり、文学や舞台芸術など幅広い活動を含めて多角的に紹介されており、彼女の作品の魅力を充分に堪能できる機会となっています。
ローランサンと同時代の芸術家との競演
マリー・ローランサンはキュビスムの画家として紹介されることも多くありますが、「前衛的な芸術運動」や「流派(イズム)」を中心に語る美術史の中にうまく収まらない存在です。若い新進芸術家たちと交流を深め、多少なりとも影響を受けつつも独自の画風を確立しました。
本展では、画業を始めた初期に出会ったジョルジュ・ブラックやパブロ・ピカソをはじめ、藤田嗣治など、同時期にパリで活躍していた画家たちの作品が合わせて紹介されています。私たちは同時代の画家たちの作品と比べてみることで、ローランサンの作品の特徴をよりよく知ることができるでしょう。
文学や舞台芸術など、その活動を多角的に紹介
ローランサンは画家や彫刻家だけではなく、文筆家や詩人とも親しく、自作詩も発表していました。また挿絵なども手掛けるなど、出版との関わりもありました。さらにはバレエの舞台装置や舞台衣裳のデザインも手がけるなど、幅広く活動していました。ローランサンが絵付し、アンドレ・グルーがデザイン、アドルフ・シャノーが制作した椅子なども紹介されています。
本展では、キュビスムの画家として活動していた初期から最晩年の大作《三人の若い女》に至るまで、ローランサンの幅広い活動が紹介されています。
国内外の作品が一堂に
本展では石橋財団コレクションや国内外の美術館から、ローランサンの作品約40点、挿絵本等の資料約25点に加えて、ローランサンと同時代に活躍した画家たちの作品約25点、合計約90点が展示されています。ローランサンの画業を複数のテーマから紹介し、関連する他の画家たちの作品と比較しつつ、彼女の作品の魅力が余すことなく紹介されています。
【展覧会構成】
序章 マリー・ローランサンと出会う
若い頃や、画風を確立した後など、さまざまな時期に描かれた自画像を中心に、ローランサンの生涯や、画家の友人ニコル・グルー(1887~1967)の娘の言葉などが紹介されています。
第1章 マリー・ローランサンとキュビスム
ローランサンは1909年頃に始まったキュビスムに少なからず影響を受けますが、1910年代には白色を多く用いた淡い灰色、青色、ピンク色といった色彩を好むようになり、キュビスムの手法を援用しつつ、叙情的な気配に満ちた人物像という自らの様式を確立していきます。その頃の作品が、ピカソやブラック、セザンヌなどの作品とともに紹介されています。
第2章 マリー・ローランサンと文学
ローランサンは絵画制作の一方で、自ら詩を書き、多くの詩人や文学者と交流しており、中には日本の詩人である堀口大學 (1892~1981) も含まれています。挿絵など出版の仕事も紹介されており、彼女の絵画と詩に通じる何かを見いだせるかも知れません。
第3章 マリー・ローランサンと人物画
ローランサンは生涯にわたり多数の人物画を制作していますが、表現は時代によって変化しています。第一次世界大戦後の1923年頃からは肖像画家として人気を博しますが、世界恐慌や第二次世界大戦があっても、作品はより華やかさを増し、優美で華やかな世界を見せていることが作品から分かるでしょう。
第4章 マリー・ローランサンと舞台芸術
ローランサンは舞台芸術の世界とも交流があり、衣装や舞台装置もいくつか手がけており、その資料なども紹介されています。20世紀フランスを代表する世界的なバレエダンサー・振付家であるローラン・プティ (1924~2011)は、ローランサンの作品から着想を得た「草上の昼食」の台本を書き、衣装や舞台装置もローランサンに依頼しています。
第5章 マリー・ローランサンと静物画
ローランサンといえば優雅な人物画が思い浮かびますが、生涯を通じて花の絵を中心とした静物画も制作しています。また装飾の仕事も手がけ、当時は静物画も装飾芸術も芸術分野の地位としては高くはありませんでしたが、そのような序列にこだわることなく、積極的に取り組んでいた彼女の姿勢がうかがえます。
終章 マリー・ローランサンと芸術
堀口大學が教えられた、ローランサンの作品を特徴づけるパステルカラーの色彩の内容や、中性的で優雅な女性表現とはうらはらに、絵の具の質感を全面に出している筆致など、最晩年の大作《三人の若い女》など群像表現を通じて、ローランサンの芸術を確認できます。
タイトル | マリー・ローランサン ―時代をうつす眼 |
会期 | 2023年12月9日(土)~ 2024年3月3日(日) |
会場 | アーティゾン美術館 6階展示室 |
住所 | 東京都中央区京橋1-7-2 |
Webサイト | https://www.artizon.museum/exhibition_sp/laurencin |
開館時間 | 10:00~18:00(2月23日を除く金曜日は20:00まで) *入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日(1月8日、2月12日は開館)、12月28日ー1月3日、1月9日、2月13日 |
チケット情報 | アーティゾン美術館は日時指定予約制です。あらかじめご来館前にチケットをご購入ください。 チケット購入についてはこちら |
料金 | 【一般】 ウェブ予約チケット 1,800 円 *クレジット決済のみ 窓口販売チケット 2,000 円 ・予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットをご購入いただけます。 ・この料金で同時開催の展覧会を全てご覧いただけます。 【大学生・専門学校生・高校生】 無料 要ウェブ予約 ・入館時に学生証か生徒手帳をご提示ください ・ウェブ予約をされない場合は「窓口販売チケット」(一般)をご購入ください 【障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名】 無料 予約不要 ・入館時に障がい者手帳をご提示ください 【中学生以下の方】無料 予約不要 |
同時開催 | 石橋財団コレクション選(5・4階 展示室) 特集コーナー展示 野見山暁治(4階 展示室) |