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メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 in 国立新美術館

国立新美術館では「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」が開催されています。アメリカ・ニューヨークのメトロポリタン美術館のヨーロッパ絵画部門に属する約2500点の所蔵品から、選りすぐられた珠玉の名画65点が公開されています。そのうち、46点は日本初公開となります。
本展は3章構成となっており、タイトルにある通り、15世紀の初期ルネサンスの絵画から19世紀のポスト印象派まで、西洋絵画の500年の歴史を彩った巨匠たちの傑作が一度に鑑賞できるという貴重な機会となっています。

世界的な美術館が所蔵する名作がゆったり観られる
1870年創立のメトロポリタン美術館は、先史時代から現代まで、5000年以上にわたる世界各地の文化遺産を包括的に所蔵している、ルーヴル美術館などと肩を並べる世界でも指折りの美術館です。アメリカ国民のために美術の教育と振興を図ることを使命とし、実業家や資産家、芸術家といった市民が創立者として尽力しました。創設後は寄贈・遺贈と購入により拡充が続けられ、現在ヨーロッパ絵画部門においては13世紀から20世紀初頭まで、2500点以上に及ぶヨーロッパ各国の絵画を所蔵しています。

 

いずれも名作揃いなので、どうしてもひとつの作品の前に立つ時間が長くなります。しかし、密を避けるために日時指定制で入場人数が管理されている上、鑑賞者のためのスペースはかなり余裕をもってとられており、いろんな意味で安心して、ゆったりと観ることができます。

I. 信仰とルネサンス~写実的で情感豊かな人間と空間描写
第1章「信仰とルネサンス」では、イタリアと北方のルネサンスを代表する画家たちの名画17点が紹介されています。これらのほとんどは日本初公開です。
キリストが神聖な存在として形式を踏まえて描かれていた中世から、ルネサンス期に入ると人物の表情は情感豊かになり、肉体として美しく、空間も写実的で奥行きのあるものが描かれるようになりました。
フラ・アンジェリコの《キリストの磔刑》では背景が金地で埋め尽くされ、非現実的ではありますが、十字架を取り囲む人々が手前から奥に向かって楕円形に配置され、空間の奥行きが表現されています。キリストも人間として描かれているように見えます。

また同時期、ドイツやネーデルラントなど北ヨーロッパでは神話の一場面を描いた神話画や肖像画が盛んになりました。ルカス・クラーナハ (父)《パリスの審判》には、ユノ、ミネルヴァ、ヴィーナスの3人の女神を側面・正面・背面と、異なる角度から描き、その姿は美しく官能的です。

 

II. 絶対主義と啓蒙主義の時代~ドラマティックなバロック美術とオランダ絵画
第2章「絶対主義と啓蒙主義の時代」では、国王が主権を掌握する絶対主義体制が強化された17世紀から、啓蒙思想が隆盛した18世紀までの各国の巨匠たちの名画30点が紹介されています。
17世紀初頭、ドラマティックなバロック美術は、カトリック教会と専制君主の宮廷という、聖俗二つの権力を誇示するために活用されました。イタリアの巨匠カラヴァッジョは、迫真的な写実描写と劇的な明暗表現によって、バロック様式の立役者となりました。展示されている《音楽家たち》は、彼の最初のパトロンとなったデル・モンテ枢機卿の館で行われた音楽や演劇の集いの様子を描いたものです。

 

17世紀ごろのオランダでは市民社会がいち早く成立し、風景画や静物画、市民や農民の日常生活に題材を得た風俗画が、それぞれ独立したジャンルとして発展します。中でも、ヨハネス・フェルメールの《信仰の寓意》は、風俗画で有名な彼の作品の中では異例の寓意画です。画面に描かれている人物の仕草やアトリビュート(象徴物)を興味深く観ることができます。

 

III. 革命と人々のための芸術~現代につながる数々の革新
第3章「革命と人々のための芸術」では近代化の波が押し寄せた激動の19世紀に、市民社会の発展を背景にして、絵画に数々の革新をもたらした画家たちの名画18点が紹介されています。
18世紀末のフランス革命はフランスのみならず全ヨーロッパの近代社会成立の転換点となり、社会の急速な変化を受け、美術にも新たな潮流が次々と現れます。19世紀前半にはロマン主義が台頭し、世紀半ばになるとレアリスム(写実主義)が隆盛しました。これが、マネやドガ、そして1870年代に印象派と呼ばれることになるモネやルノワールの絵画に受け継がれていきます。

 

本展で紹介されているモネの《睡蓮》は大画面で筆致が荒々しく、空や植物が池の水に映し出された虚構と、水面の睡蓮などの現実などを対比させ、抽象表現の先駆けとも言われています。当時眼を患っていたモネが観たヴィジョンともいえる不思議な雰囲気をまとった作品です。

 

また、ポール・セザンヌの《リンゴと洋ナシのある静物》 は机が傾き、壁は歪んでいるように見えますが、存在感のあるリンゴと洋ナシと共に、画面内の全ての要素が絶妙なバランスを保っています。当時はこれがあまりに革新的だと大衆からは受け入れられなかったようですが、その後はキュビスムをはじめとする20世紀初頭の前衛芸術に大きな影響を及ぼしたと言われています。

 

日本初公開の作品を多く含む名作と共に、西洋絵画の500年を旅する楽しさを体験してみてはいかがでしょうか。

タイトル メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年
会期 2022年2月9日(水)~ 2022年5月30日(月)
会場 国立新美術館 企画展示室1E
住所 〒106-8558東京都港区六本木7-22-2
Webサイト https://met.exhn.jp/
開館時間 10:00~18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
休館日 毎週火曜日休館 ※ただし5月3日(火・祝)は開館
チケット情報 混雑緩和のため、事前予約制(日時指定券)を導入されています。
詳しくはこちら 展覧会ホームページ「チケット」ページ
※メトロポリタン美術館展会期中に限り、当日のみ有効のチケットを販売しておりますが、ご来館時に予定枚数が終了している場合がございます。
料金 【一 般】2,100円
【大学生】1,400円
【高校生】1,000円