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Miquel Barceló ミケル・バルセロ展 @ 東京オペラシティ アートギャラリー

現代スペインの代表的作家の一人であるミケル・バルセロ氏(1957~)の日本初の回顧展が東京オペラシティギャラリーで開催されています。バルセロ氏は生まれ育ったスペイン・マジョルカ島をはじめ、パリ、アフリカのマリ、そしてヒマラヤなど世界各地で活動し、各地の歴史や風土と対峙するなかで制作をつづけてきました。
彼の作品には、プリミティブな荒々しさや神話的、呪術的な力と共に、豊かな洞察と知性を感じさせます。円熟期を迎え、ますます充実した活動をつづける“世界を挑発する”作家の全貌と現在地が見える本展は見逃せません。

スペインを代表する文化的背景やモチーフ
フランスとスペインは約430kmに渡って連なるピレネー山脈で分けられていますが、かつて皇帝ナポレオン・ボナパルト(1769~1821)は、「ピレネー山脈から向こうはヨーロッパではない、アフリカだ」と言ったといわれています。

ひとつの山脈で隔てられているだけでここまで言うのは大げさに聞こえますが、8世紀初頭から15世紀の終わりまで、アフリカから来たイスラム勢力に約800年間支配されるなど、複雑な歴史的背景を持つスペインの文化は、フランスやドイツなどに代表されるヨーロッパの中心的な文化と比べるとかなり異質だということを言い表しています。

今回、日本ではほとんど未紹介だという現代スペインを代表するミケル・バルセロ氏の作品を観て、改めてこのナポレオンの言葉を思い出しました。絵画、彫刻、陶芸など多彩な表現を見せ、海と大地、動植物、歴史、宗教が大きなテーマといわれるバルセロ氏の作品は、彼自身の育ってきたスペインの文化的な背景と彼自身の魂が共鳴し合って生まれ、熱く、激しくも、知的でかつ人間味にあふれているように感じます。

2フロアで展開される初期作から最新作まで
本展は東京オペラシティ アートギャラリーの3Fと4F、ギャラリーの1から4、そしてコリドールまですべてを使って構成されています。
3Fの展示構成は、ギャラリー1で大きく空と大地など地中海的なモチーフの絵画が、ギャラリー2ではアフリカで刺激を受けたテーマの絵画や陶器が紹介されています。特に絵画は縦横2~3メートルを超すサイズのものが多く、スケール感豊かです。コリドールには彫刻や特大サイズの陶作品が展開されています。4Fでは、ギャラリー3と4で絵画や紙作品、スケッチブックやパフォーマンス映像などを観ることができます。

ギャラリー1には命の根源、海のもたらすものなどのテーマの他に、地中海らしい海と大地や闘牛などのモチーフもあり、いわゆる観光旅行的な視点で知るスペインらしさも登場します。日本人から見れば闘牛はスペインの“国技”のように見えますが、さまざまな理由から最近はスペイン国内でもその開催に賛否両論あるようです。バルセロ氏がどちらの立場か、作品からはうかがい知ることはできませんが、命と命がぶつかりあう、独特の雰囲気や激しさは伝わってきます。


絵画作品の多くはキャンバスに他の素材を練りこんだような立体感のあるもので、そこから作家が何を表現したり、伝えたかったのかを想像することができます。

自由に広がる作家の想像力と深い思索の軌跡
ギャラリー2には、1988年以後、何度も滞在したアフリカでの体験に根差して制作された作品が紹介されています。絵画作品では砂漠の旅がきっかけとなった白の色彩を突き詰めたものや、床に画面が向くようにカンバスを吊り下げて繊維状の物質を混ぜた絵の具を鍾乳石のように垂らして固めて制作した作品など。また、キリスト教の磔刑図を独自に翻案した図像など、バルセロ氏の自由に広がる想像力と深い思索の軌跡が楽しめます。

また中央に配置された壺や花瓶、鉢などの陶作品は、バルセロ氏にとって絵画の延長とされています。大胆に力を加えたような不思議なフォルムに、表面には魚や馬、植物、人体などのイメージが描かれ、ギャラリー1で紹介されている絵画との共通点を感じさせます。
4Fで目を引くのはバルセロ氏特有の肖像画「ブリーチ・ペインティング」です。キャンバスを黒など暗い色に塗り、その上から漂白剤を絵の具のように使って描かれる肖像画は、何とも言えない優しい風合いを感じさせます。

本展では絵画や陶作品、さらに水彩、ドローイング、スケッチブック、ブロンズ彫刻やパフォーマンス映像などを加えた約90点で、初期から現在までのバルセロ氏の制作活動のひろがりが紹介されています。日本国内で初めて彼の仕事の全貌に触れ、躍動するバルセロ氏の想像力を体験してはいかがでしょうか。

●作家プロフィール(展覧会公式サイトより引用)

ミケル・バルセロ
1957 年、スペイン・マジョルカ島生まれ。パルマ・デ・マジョルカとバルセロナの美術学校で学ぶ。1976 年、前衛芸術家のグループに参加。1982 年の「ドクメンタ7」(ドイツ・カッセル)で国際的な場に登場して以降、マジョルカ島、パリ、アフリカなど各地にアトリエを構えて精力的に制作。1988 年には過酷な風土と孤独を求めアフリカを旅し、以後、繰り返しマリに滞在し制作。絶えず変化を求める多産の芸術家であり、その制作は、絵画をはじめドローイングや旅のノート、本の挿絵、彫刻、陶作品、パフォーマンス、舞台美術、そしてパルマ大聖堂(マジョルカ)のサン・ペール礼拝堂内部装飾(2007 完成)やジュネーブの国連欧州本部人権理事会大会議場天井画(2008 完成)など、壮大な建築的プロジェクトにまでおよんでいる。ヴェネツィア・ビエンナーレにたびたび出品し、2007 年にはアフリカ、2009 年にはスペインの代表を務めた。先史時代の洞窟壁画に強い関心を持ち、ショーヴェ洞窟のレプリカプロジェクトでは学術委員に名を連ねた。2013 年にはフランス文化賞より芸術文化勲章「オフィシエ」を、2020 年にはスペイン・カタルーニャ自治州政府よりサン・ジョルディ十字勲章を受章。日本での大規模な個展は今回が初めてとなる。

タイトル Miquel Barceló ミケル・バルセロ展
会期 2022年1月13日(木)~ 3月25日(金)
会場 東京オペラシティ アートギャラリー[3Fギャラリー1, 2/4Fギャラリー3, 4]
住所 〒163-1403 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー3F
Webサイト http://www.operacity.jp/ag/exh247/
開館時間 11:00 ~ 19:00(入場は18:30まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、2月13日(日)(全館休館日)
料金 一般1,400円[1,200円]
大学・高校生 1,000円[800円]
中学生以下無料*同時開催「project N 85 水戸部七絵」の入場料を含みます。
*[ ]内は各種割引料金。
*障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。
*Arts友の会会員は無料。(会員証をご提示ください)
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*事前予約不要