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モネ 連作の情景 in 上野の森美術館

上野の森美術館では、「モネ 連作の情景」が2023年10月20日 ( 金 )から2024年1月28日 ( 日 )まで開催されています。印象派の代表的な画家のひとりとして活躍したクロード・モネ(1840~1926)は、自然の光と色彩に対する並外れた感覚を持ち、柔らかい色使いとあたたかい光の表現を得意とし、自然の息遣いが感じられる作品を数多く残しました。また、同じ場所やテーマを異なる天候、異なる時間、異なる季節を通して描き、「連作」という革新的な表現手法を生み出しました。本展は出品作品がすべてモネであり、モネの代名詞とも言える「連作」に焦点をあてながら、時間と光とのたゆまぬ対話を続けた彼の生涯を辿る展覧会です。モネのファンの方はもちろん、あなたが描き手として「連作」を観ていくと、いろんな発見のある、楽しいアート体験になるでしょう。

展示作品は100%モネ!!国内外40館以上から代表作が集結

印象派を立ち上げる以前のモネは人物画も数多く手掛けていました。本展は、日本初公開となる人物画の大作《昼食》を中心にした「印象派以前」の作品から、〈積みわら〉や〈睡蓮〉などの多様なモティーフの「連作」まで、展示作品のすべてがモネという贅沢な展覧会です。国内外40館以上から集められた代表作を堪能できる、またとない機会となるでしょう。

またモネは、当時フランスの画家にとってほぼ唯一で最大の作品発表の機会だった、国が主催する公募展であるサロン(官展)から距離を置き、新たな発表の場として仲間たちとともに1874年4月に第1回印象派展を開催しました。本展は、この「印象派」の誕生から150年目を迎えることを記念して開催される展覧会です。

興味深い、「連作」を観る意味

このモネが始めた「連作」は、同じテーマやモチーフで複数の作品を表現することをいいます。連作することで、自分の表現したいものやことが本当は何かを深く掘り下げることができ、タッチや色づかいなど自分ならではの表現技法の発見や実践につながります。

モネの「連作」の着想源のひとつには彼が愛好した浮世絵の影響も指摘されています。モネは歌川広重(1797~1858)の『東都名所』などを所蔵しており、連なる風景表現の新たな可能性を見出したのかもしれません。

本展ではいくつものモネの「連作」を観ることができますが、同じ場所を描いていると思えないほど違う印象を与える連作もあります。時間や天気、そして季節などで変わっていくその場所の表情をとらえた「連作」は、遥か昔よりそうした機微を楽しんできた日本人の共感を得やすいのかも知れません。

後世の作家たちに影響を与えたモネ

クロード・モネは印象派を代表する画家で、1840年11月14日にパリ9区に生まれました。22才の時に画塾でルノワールら仲間と出会い、1865年にサロンに初入選し、尊敬するマネに「水のラファエロ」と呼ばれます。その後、1874年に第1回印象派展を仲間とともに開催。1883年よりセーヌ川流域のジヴェルニーに定住し、1880年代後半から自宅付近の〈積みわら〉を「連作」として描き始め、この頃から旅先での制作も「連作」の兆しを見せはじめます。連作はその後〈ポプラ並木〉、〈ルーアン大聖堂〉と続き、ロンドンやヴェネツィアの風景、〈睡蓮〉などのテーマに及び、晩年の制作は〈睡蓮〉が大半となり、眼を患いながら最晩年まで描き続けました。後半生の作品はカンディンスキーや抽象表現主義の画家たちに影響を与え、モネの再評価につながっており、そうした点も本展の大きな見どころです。

私たちはあらゆる機会でモネの作品に触れているので、なんだか知っているつもりになりがちですが、本展で焦点があてられている「連作」を通じて、彼の魅力を再発見してはいかがでしょうか。

 

【展示構成】

第1章 印象派以前のモネ

5才から18才までの成長期をフランス北西部のル・アーヴルで過ごしたモネは、画家を志して18才でパリに出ます。そこで出会ったピサロ(1830~1903)やルノワール(1841~1919)、シスレー(1839~99)、バジール(1841~70)と親交を深めました。当時フランスの若い画家にとってサロン入選は唯一の登竜門で、モネは1865年に2点の海景画で、翌年も《カミーユ(緑衣の女性)》と風景画で入選を果たしますが、その後、戸外で描いたモネの意欲作を保守的なサロン審査員の多くは評価せず、1867年以降は落選を重ねました。

本章ではサロンに落選した初来日の大作《昼食》を中心に、オランダで描いた風景画などモネの初期作品が紹介されています。

第2章 印象派の画家、モネ

オランダから帰国したモネは、サロン落選の経験から仲間たちと新たなグループ展を構想し、やがて1874年春、パリで第1回印象派展を開催します。1886年までに計8回開催された印象派展にモネは5回参加しました。作品は徐々に人物画の制作は減り、1870年代以降は風景画が中心になりました。モネが好んだのは刻々と近代化する都会の街景よりも、自然の情景、とりわけ水辺の景色でした。1875年以降は深刻な経済難に直面したり、最良のモデルでもあった妻カミーユを病気で亡くしたり、深刻な精神的危機に陥りました。

本章では、1870年代から80年代にかけて、セーヌ川流域を拠点に各地を訪れたモネの作品が紹介されていますが、アトリエ舟で自在に移動し、戸外で制作した印象派らしい多様な風景画が観られます。

第3章 テーマへの集中

モネは鉄道網の発達により、新たな画題を求めてパリ近郊の村はもちろん、ノルマンディー地方やブルターニュ地方、イタリア、モナコ、アンティーブなどへ足を延ばしました。

本章ではノルマンディー地方のプールヴィルの海岸を描いた作品群が展示されています。1882年の作品では断崖などの目立つ造形に着目して描きますが、15年後に再訪した際は、構図はさほど変えず、海や空の天候による変化を主題としています。

同じくノルマンディーのエトルタもモネを魅了した土地で、本展では奇岩のラ・マンヌポルトを間近に大きく捉えた2点が紹介されています。旅先に滞在中、同じ対象であっても季節や天候、時刻によって、海や空、山や岩肌の表情が絶え間なく変化する様子をモネはカンヴァスに描き留めていきました。

 

第4章 連作の画家、モネ

モネが体系的に「連作」の手法を実現したのは〈積みわら〉が最初だと考えられています。1890年前後は集中的に取り組み、複数のカンヴァスを並べて、光を受けて刻々と変化する積みわらの描写を同時進行で進めていきます。配置や遠近の組み合わせを変化させ、陽光を浴びた積みわらは光と影のコントラストが強調され、抽象化していきます。

1899年からはロンドンを訪れ、〈チャリング・クロス橋〉や〈ウォータールー橋〉などをモティーフにした作品を数年かけて描きました。構図はより単純化し、湿り気のある大気が充満したような画面に建造物の形態が柔らかく浮かび上がります。「連作」の着想源の一つにはモネが愛好した浮世絵の影響も指摘されています。

第5章 「睡蓮」とジヴェルニーの庭

後半生を過ごしたジヴェルニーはモネの尽きない着想源となります。ここでモネが情熱を注いだのは絵の制作とガーデニングでした。池の水面を間近に捉え、まるで大画面の一部のような作品です。赤みを帯びた白い睡蓮が豊かな花弁を広げ、切れ込みのある円い葉とともに池に浮かんでいます。クローズアップした構図を素早く粗い筆致で捉え、青や紫などさまざまな色を使って活き活きと描かれています。

1908年頃からモネは視覚障害に悩まされ、1923年に白内障の手術を受けています。当初は風景として描かれていた〈睡蓮〉は、次第に視線が水面に集中していきます。視力の衰えとともに筆致はより粗く、対象の輪郭は曖昧になり、色と光の抽象的なハーモニーが画面を占めるようになります。そして大画面を色と光の筆致が覆う晩年の作品群は、20世紀半ばの抽象美術家を刺激し、モネ芸術は新たな注目と再評価を受けるようになります。

タイトル モネ 連作の情景
会期 2023年10月20日(金)~2024年1月28日(日)
会場 上野の森美術館
住所 〒110-0007 東京都台東区上野公園 1-2
Webサイト www.monet2023.jp
開館時間 9:00~17:00(金・土・祝日は~19:00)
※入館は閉館の30分前まで
休館日 2023年12月31日(日)、2024年1月1日(月・祝)
チケット情報 本展は、会場内混雑が予想されるため、日時指定の予約が推奨されています。
詳しくは、展覧会公式サイトのチケットのページをご確認ください。
観覧料
平日(月~金)
平日(月~金)
【一般】 2,800円
【大学・専門学校・高校生】 1,600円
【中学・小学生】 1,000円
観覧料
土・日・祝日
土・日・祝日
【一般】 3,000円
【大学・専門学校・高校生】 1,800円
【中学・小学生】 1,200円
備考 ※未就学児は無料、日時指定予約は不要です。
※障がい者手帳等(身体障がい者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳・被爆者健康手帳)のお手帳をお持ちの方とその付き添いの方1名までは、当日価格の半額です。会場チケット窓口にて障がい者手帳をご提示の上、ご購入ください。日時指定予約は不要です。