成田克彦 at 東京画廊+BTAP|東京
東京画廊+BTAPでは、成田克彦展が2024年4月13日(土)より5月18日(土)まで開催されています。成田克彦(1944~1992)は、「もの派」を代表する作家のひとりです。本展では1969年に初めて発表された代表作《SUMI》以降の1970年代までの作品に焦点をあて、平面作品を中心に展示されています。「もの派」やその作家に関しての説明や記述はいろんなところで目にしますが、実際に作品を観ないと、納得できる理解を得るのが難しいことが少なくありません。本展のようなホワイトキューブでじっくり観ることができる機会はとても貴重です。ぜひ、お出かけしてみてはいかがでしょうか。
平面作品が中心の落ち着いた展開
ギャラリー内の展示は、ほぼ、壁面に沿って構成されています。「もの派」の作家の展示は空間全体を使っていることが多く、観る私たちも立ち位置や視点を工夫しながら、考える時間を過ごすことになりますが、本展ではひとつひとつの作品にじっくりと相対しながら、落ち着いて楽しむことができます。
成田の、いくつかの代表作の他、ドローイングなどの資料展示や関連書籍の閲覧などもできるので、成田をよく知る方はもちろん、初めて彼の作品を観る方にとっても興味を深めることができるでしょう。
「もの派」を代表する作家のひとり成田克彦
成田克彦は1944年に旧朝鮮総督府釜山(現 大韓民国釜山)で生まれました。終戦後は熊本県で育ち、1965年に多摩美術大学絵画科に入学しました。代表作「影」シリーズで1960~70年代のアートシーンで主役となる高松次郎が、当時は同学の専任講師をしており、成田は彼のアシスタントとなります。視覚の問題を取り上げ、概念的に対象を掘り下げるスタイルは高松の影響であり、やがてもの派の作家誕生へと繋がりました。
もの派を代表する作品として語り継がれる《SUMI》
本展でも展示されている成田の代表作《SUMI》は、1969年に「第6回パリ青年ビエンナーレ」で初めて展示され、成田自身のみならず、もの派を代表する作品として語り継がれています。これは成田自身が焼いたという大型の炭を並べてその物質性を顕示し、炭の崩壊過程を見せることで時間的経過を喚起する作品です。それまでの空間性と身体性を意識させるサイトスペシフィックな作品とは異なり、素材それ自体の存在が強く立ち現れるという特徴を示すものでした。
本展ではこの《SUMI》以降に、平面作品に回帰した成田の代表作が紹介されており、存在と不在の問題、そして、位相空間とその図式化の探求が70年代を通して続けられたことをうかがい知ることができます。
《SUMI》以降に平面作品に回帰した代表作の数々
《Still Life (Bottles) No.1-5》(1974年)は静物をモチーフにした絵画的な作品で、目の細かい網を通して絵具を支持体の上に落下させたような表現で、おぼろげな存在感を表しているようです。
《the petal》は1975年から77年にかけて制作された「植物シリーズ」のひとつで、合板の上に帆布を貼り、白色を基調に緑色が一部に着彩されたレリーフ状の作品です。Petalは花弁の意味で、他にもleaf(葉)、bud(蕾)をタイトルとした作品があります。こちらは位相空間やそれを図式化したような形状をしています。
《ワンダリングフォーム》(1979年)は二点組で発表されたのも、比較から生まれる差異によって動きを生み出そうとする意識があったためと考えられています。
そして、スペースの奥には作品としては現存しない《鉄帯》(1969年頃)のドローイングが展示されており、空間の向かい合う壁面に角材を差し渡したイメージからは、実際の作品の姿を想像することができます。
作家のさまざまな思索や探求の跡と、それを推し進めた精神的・肉体的なエネルギーを感じることができる本展に、ぜひ、お出かけください。
タイトル | 成田克彦 展 |
会期 | 2024年4月13日(土)~ 5月18日(土) |
会場 | 東京画廊+BTAP|東京 |
住所 | 〒104-0061 東京都中央区銀座8-10-5 第四秀和ビル7階 |
Webサイト | https://www.tokyo-gallery.com/exhibitions/5899.html |
開廊時間 | 火~土 12:00~18:00 |
休廊日 | 日・月・祝 |
料金 | 無料 |