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財団創立80周年記念特別展「根津美術館の国宝・重要文化財」@ 根津美術館

根津美術館では財団創立80周年記念特別展「根津美術館の国宝・重要文化財」が開催されています。根津美術館の収蔵品の根幹をなす指定品95件のすべてが公開されており、一度に多くの優れた価値の高い作品に触れることができる絶好の機会となっています。

初代嘉一郎氏の審美眼の高さがうかがえる蒐集品
実業家・初代根津嘉一郎氏(1860〜1940)が蒐集した日本・東洋の古美術品と、南青山の土地・邸宅を寄付して、2代目嘉一郎氏が財団法人根津美術館を創立してから今年で80年になります。これを記念した特別展として「根津美術館の国宝・重要文化財」が開催されています。
初代嘉一郎氏の蒐集品の核となるのは、晩年に親しんだ茶の湯の道具と、宗派に依らぬ寺院建立を目指して集めた仏教美術です。しかし、そのほかにも中国の古代青銅器をはじめとして、作品の分野は多岐にわたります。蒐集の動機は自らの好みのみならず、優れた古美術品の海外流出を阻止し、後世に伝えようとの使命感によるものでした。


また今回の特別展に合わせて、指定品のみで構成された図録が出版されています。この図録の冒頭で明らかにされているのは、指定品95件のうち、初代嘉一郎氏が購入時点で指定品だったものは2件のみで、後はすべて購入後か没後に国宝や重要文化財に指定されたということです。初代嘉一郎氏の審美眼がいかに確かだったかがよく分かるエピソードです。

心をとらえてはなさない国宝の深い魅力
この特別展は1階と2階の展示室1から6まですべてを使って展開されています。国宝の作品は展示室1、2,5室で観ることができます。
すでに展示期間が終了していますが、国宝 燕子花図屏風は江戸時代のみならず、日本の絵画史全体を代表する作品といって過言ではないでしょう(本作品の次回展示は2021年4月17日[土]~5月16日[日]の特別展となる予定です)。
本作品は画家としてのスタートが遅かった尾形光琳(1658~1716)が、40歳半ばにして最初にたどりついた画業の芸術的頂点だと言われています。

金地の大画面に堂々と、かつ同じ絵柄の連続がリズミカルに感じられるカキツバタの群生はまったく見事です。現実の花がもつ多彩な特徴がとらえられていますが、花弁は太く意匠化されています。ふんだんに使われた上質な群青と緑青が作品の放つオーラをいっそう強めています。

国宝 那智瀧図に描かれている和歌山・那智山中に落ちる瀧は、那智社のご神体であり、同時に仏教の千手観音が姿を変えて現れた権現として崇拝されています。熊野信仰が確立した中世には皇族や貴族、近世になると庶民の信仰を集めていました。


作品の前に立つと、まず那智山を一直線に落ちる瀧の神々しさに目を奪われますが、まわりの樹木や拝殿の屋根、そして山の端にかかる月などもあわせて眺めていると、これが現実的な風景ではなく、聖霊宿る神、すなわち飛瀧権現の荘厳な姿を描いたものであることが分かります。日本独自の自然観や信仰のあり方を示す宗教画の最高峰として名高いと言われています。

この他にも平安貴族の美意識がよく伝わってくる重要文化財 大日如来像など、多数の名品が展示されています。

信仰心が生み出す普遍的な美しさ
2階の展示室4へ進むと、中国・殷時代を中心とした青銅器が現れます。どれも大きなサイズで迫力がありながら、細かい装飾が施されています。中でも中央に展示された重要文化財 饕餮文方盉(とうてつもんほうか)はひときわ目を引き、まるで最先端の現代アートのようにも見え、圧倒的な迫力があります。


“饕餮文”とは古代の神々の中でも最も位の高い神を具現化した文様と言われています。動物や鳥の角や爪などの部分を合わせた姿は外敵を威嚇し、その迫力が霊力の強さを表しています。
この方盉は祀りを行う際に神々にお神酒をささげるために使われたようですが、同時に人間もそれを飲むことが重要だったそうです。そのためか、装飾性と実用性が両立した洗練されたデザインのようにも感じられます。

展示室5には経典を中心とした書が展示されています。中でも興味深いのは重要文化財 宗峰妙超墨蹟 法語です。これは京都・大徳寺を開いた禅僧、宗峰妙超(大燈国師、1282 ~ 1337)の書で、大燈の遺墨中でも早い時期の作例として貴重です。


書かれている内容を理解するためには解説の助けを借りる必要がありますが、それがよく分かっていなくても、ひとつひとつの文字は私たち現代人にも読むことができます。この重要文化財 宗峰妙超墨蹟 法語に限らず、ここにある書は、人にきちんと考えや想いを伝えたいという誠実さにあふれているように感じます。

展示室2に初代嘉一郎氏が寺院と仏教画などの展示施設の開設を準備していたが、日中戦争のために諦めたというエピソードが紹介されています。よく信仰心と宗教心は似て非なるものと言われ、信仰心は誰もが持っている神や仏などの人間を越える存在を信じ、敬い、そして幸せでありたいと願う心であるのに対し、宗教心は一定の考えや思想に限定されたものになります。素晴らしい指定品の数々を鑑賞していると、初代嘉一郎氏が大切にされていたのは信仰心や信じることの尊さではないかと感じ、そこに感銘を受けずにはいられません。

 

タイトル 財団創立80周年記念特別展  根津美術館の国宝・重要文化財
会期 2020年11月14日(土)~12月20日(日)
会場 根津美術館 展示室 1・2・3・4・5・6・ホール
住所 〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1
Webサイト http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 毎週月曜日
料金 一般1500円 学生1200円
*障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料
日時指定予約は、こちらから→