桑原正彦 / ナト・シルビラッゼ at 小山登美夫ギャラリー天王洲
小山登美夫ギャラリー天王洲では、「温泉大作戦」のプロジェクトの一環としてジョージアのGallery Artbeat所属のナト・シルビラッゼと桑原正彦による二人展が2024年4月6日(土)から4月27日(土)まで開催されています。「温泉大作戦」は東京の何か所かのギャラリーがホストとなり、海外のギャラリーと共にギャラリーで作品を展示し、温泉でコンファレンスを行う企画です。ナト・シルビラッゼと桑原正彦の作品は、どちらも素朴な味わいを見せ、何となくリラックスできます。それはまるで、露天温泉で景色を楽しみながら、ほっこりしている時間のようでもあります。ぜひ、お出かけしてみてはいかがでしょうか。
かもし出される柔らかなケミストリー
ギャラリーにはふたりの作品が同じ空間に配置されていますが、個性がぶつかりせめぎ合うというのではなく、どちらかというと柔らかくケミストリーをかもし出しているような印象を受けます。
色調やコントラストの強さに違いはありますが、どちらも身近な風景やできごとからインスピレーションを受けて、感じたことがそのまま表現されていて、楽しい、気持ちいいという感情がはっきりと伝わってきます。
放たれる独自のクリエイティブな魅力
ナト・シルビラッゼ(Nato Sirbiladze)は1955年に、黒海に面したヨーロッパ最東端の国・ジョージアの首都トビリシで生まれました。学校卒業後、教師として働いてきた彼女は、美術は専門に学んでおらず、31歳の時に初めて絵を描き始めています。彼女の作品は紙に描かれ、そのうちの数百点はガッシュと水彩で描かれています。
シルビラッゼはどの芸術運動やグループにも属しておらず、またその作品はほとんど地域の芸術的文脈で語られたことがなく、独自のクリエイティブな軌跡を描き続けてきました。
本展では作品が壁面に釘のように見えるピンで固定されているように見えるなど、今仕上がった作品がそのままピンナップされているようで、自由で奔放な魅力をより引き立てているように感じます。
絶望的でもあり、楽園のようでもある世界
桑原正彦は1959年に東京都で生まれ、2021年に他界しています。桑原は1990年代の後半から一貫して、いま住んでいる環境に対する人間の欲望による変化に着目して制作をしていました。進化、効率、大量生産、加工、洗浄、商品価値を求めるために伴う破壊、汚染などによる変化を、子どもの頃からの思い出とともに、動物や風景を通して作品に表現してきました。
公害によって汚くなった海に現れたアザラシは、そこを新しい生活の場として生き抜き人々に可愛さをまきちらします。可愛いと思う心も人間の欲であり、その絶望的でもあり、楽園のようでもある世界が桑原の大きな魅力になってます。
柔らかなケミストリーを感じさせる、共通した何かが、ふたりを育んだ環境なのか、表現を身に着けたプロセスなのか、あるいは身のまわりの景色やできごとなどへの視座なのか。そこは観る私たちが想像をふくらませるばかりになりますが、今、ここでしか見られない作品と作品の出会いの楽しさに、触れてみてはいかがでしょうか。
タイトル | 桑原正彦 / ナト・シルビラッゼ |
会期 | 2024年4月6日(土)~ 4月27日(土) |
会場 | 小山登美夫ギャラリー天王洲 |
住所 | 140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex I 4F |
Webサイト | http://tomiokoyamagallery.com/exhibitions/onsen2024/ |
開廊時間 | 11:00 ~ 18:00 |
休廊日 | 日・月・祝日 |
観覧料 | 無料 |