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資生堂のクリエイティブワーク Series.1 「あいだ に あるもの ー1970年代の資生堂雑誌広告からー」in 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリーでは、資生堂のクリエイティブワーク Series.1 「あいだ に あるもの ー1970年代の資生堂雑誌広告からー」が2023年6月6日(火)から7月30日(日)まで開催されています。
今回は1970年代の資生堂を代表するブランドの雑誌広告が紹介されており、時代の空気感やクリエイティブワークの素晴らしさだけでなく、ひとつひとつのブランド哲学まで伝わってきます。ひとつのコンセプトや想い、それらを表現するビジュアルと文言(コピー)、そして現れる独自の世界観という流れは、抽象画のなり立ちにも通じているようです。70年代を生きた方にはノスタルジックな楽しみもありますが、そうではない、80年代以降に生まれたアート好きにとっても、たいへん興味深く、刺激を受ける体験になるでしょう。

ダイナミックな演出で心おどる展示空間
本展は1970年代の資生堂を代表するブランドの雑誌広告や映像を中心に構成され、会場の空間デザインは今注目を浴びているアンビエントユニット『UNKNOWN ME』のメンバーでもあるグラフィックデザイナー/アーティスト大澤悠大、プロデューサー/建築家H.Takahashiが担当しています。また、ビジュアルアーティスト原田康による映像と音のインスタレーションも目を引き、現代的なアンビエント音楽とともにダイナミックな演出が行われています。

紹介されているクリエイティブワークは、「シフォネット」や男性用化粧品「MG5」、「ブラバス」、香水「モア」などの雑誌広告約150点にのぼります。いずれのブランドも一貫して通底する資生堂の哲学が感じられますが、実際に現れているブランドの世界観はどれもまったく違うので、どの世界観に自分が共感できるかを考えながら観る楽しさがあります。

1970年代は若者に影響力が高かった雑誌メディア
そしてそこに、1970年代ならではの時代背景も観る楽しさとして加わってきます。1970年代は、若者たちのファッションやライフスタイルに影響を及ぼす雑誌メディアが登場し、多数のカラー写真をレイアウトした美しい誌面は、読者を惹きつけ、多くの流行を生みました。


こうした時代の流れに沿った資生堂の雑誌広告は、シリーズで連続して展開され、そこには機能などの商品自身の訴求はほとんどありませんが、商品を使った時の価値が想起できるような物語性に満ちた魅惑的な世界観があります。


何に1970年代らしさを感じるかは人によって違いますが、この男性2人・女性1人の組み合わせなどは、当時、話題になっていた外国映画のワンシーンのようでもあり、カッコよさとともに憧れをかき立てるものだったでしょう。

まるで謎かけのような特徴的な広告表現
現代の広告はインターネットやSNSが主流で、広告を見ている人の嗜好性に合わせた広告が出てきますし、その内容も簡潔で直接的に伝わりやすい表現が多いように感じます。それからすると、1970年代の資生堂の雑誌広告の表現は、まるで謎かけです。


俳句のように言葉にしない余白が生みだす表現の豊かさや、意図的に意味をもたない表現をするダダイズム、現実離れした奇妙な表現をするシュルレアリスムに通じるようです。

抽象画ともつながる?ブランドの世界観表現
抽象画ではコンセプトや表現手法、素材を最も重要視すべきで、描かれるモチーフはそれほど大切ではないという考え方があります。機能などの商品自身(=モチーフ)にはあまり触れず、ブランドコンセプトやそれを表現するビジュアルや文言(コピー)、そして登場するモデルへのこだわりにより生み出される世界観という流れは、抽象画のなり立ちにも通じているように感じます。今回紹介された各ブランドの世界観を生み出した“背景(=コンセプト、手法、素材)”を考えながら雑誌広告を観ていくと、アート好きとしても楽しめるかも知れません。

次回も楽しみ、でも、まずはこの1970年代を
何よりも、率直に感じられるのは、ブランド哲学を語ることがなんとカッコよいことか!という点で、本展の魅力もこれに尽きるような気がします。次回はどの年代のクリエイティブワークが紹介されるのか、たいへん楽しみなところではありますが、まずはこの1970年代を見逃すわけにはいかないと思います。

※文中の参考作品画像の表記
C:コピーライター・Ph:フォトグラファー・AD:アートディレクター・D:デザイナー・ST:スタイリスト・M:モデル

 

タイトル 資生堂のクリエイティブワーク Series.1
「あいだ に あるもの ー1970年代の資生堂雑誌広告からー」
会期 2023年6月6日(火)~7月30日(日)
会場 資生堂ギャラリー
住所 〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Webサイト https://gallery.shiseido.com/jp/
営業時間 平日 11:00~19:00
日曜・祝祭日 11:00~18:00
休館日 毎週月曜日 ※月曜日が祝祭日にあたる場合も休館いたします。
入場料 無料