さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展 in 東京都現代美術館
東京都現代美術館では「さばかれえぬ私(わたくし)へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展」が2023年3月18日(土)から6月18日(日)まで開催されます。Tokyo Contemporary Art Award(略称:TCAA)は、中堅アーティストを対象とした、受賞から複数年にわたる継続的支援によって更なる飛躍を促すことを目的に、東京都とトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)が実施する現代美術の賞です。
毎回2名(組)の作家が選考され、3回目受賞者の志賀理江子氏と竹内公太氏による本展は単にそれぞれの作品発表の場とするのではなく、展覧会タイトルをはじめ、制作段階からの意見交換など、お互いに対話を重ねることで作り上げた展覧会となっています。どのような“化学反応”があったのかを含め、この複数年での作家の思索の軌跡や取り組みを楽しみにすることができそうです。
東京から創造・発信するアートセンター:TOKAS
トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)は、幅広いジャンルの活動や領域横断的・実験的な試みを支援し、同時代の表現を東京から創造・発信するアートセンターです。ミッションに、「新進・中堅アーティストの継続的支援」、「創造的な国際文化交流の促進」、「実験的な創造活動の支援」を掲げ、若手・中堅作家の作品発表や企画展、公演や公募企画の実施のほか、国内外の幅広いジャンルのクリエーターを対象にしたレジデンス・プログラムを実施するなどさまざまな活動を展開しています。
このTCAAの3回目の選考では志賀理江子氏と竹内公太氏の2名が選出され、受賞者には賞金が授与されたほか、受賞の翌年に海外活動の支援が行われています。ただし、志賀氏は新型コロナウィルス感染症の影響により、渡航を中止し、国内リサーチへ変更しました。
タイトルはふたりの対話の中から生まれたもの
本展のタイトル「さばかれえぬ私へ/Waiting for the Wind」という言葉は志賀氏と竹内氏の対話の中から生み出されたものであり、人々が抱える内面世界への呼びかけでもあります。
両氏は東日本大震災の爪痕が大きく残された宮城、福島をそれぞれの活動拠点とし、ふたりの作品は方向性は違えども、対話の中で見出された共通の認識を持ちつつ、ある部分では作品が重なり合うように展示空間が構成されています。
志賀氏は映像による新作を中心に、2011年の被災後から突如始まったあらゆる分野での復興計画に圧倒された経験を、人間が「歩く」営みとして捉え直しています。
竹内氏は、リサーチを続けてきた第二次世界大戦末期の日本軍の兵器「風船爆弾」について、アメリカでの更なるリサーチを経て、風船が落ちた地面の写真を用いた、実寸大の風船による新作インスタレーションを発表します。
また、2011年の震災の余波により、建物の保存が叶わなかったいわき市の劇場「三凾座(みはこざ)」が解体される様を作品とした《三凾座の解体》(2013)が合わせて展示されます。
【作家紹介(コメント/プロフィール)】
※以下、プレスリリースより引用
●志賀理江子氏
展覧会へよせて
制作の土台として、この2年間、宮城県美里町にあるスタジオにてさまざまな方を招き、トーク、レクチャー、ワークショップを行ってきました。生活の場でもある制作場所を開くことで、実にさまざまな体験に恵まれ、想像すらしなかった新たな出会いが沢山ありました。その経験は、2011年の震災後、大きな資本と抗うことが困難な国家の計画に圧倒され続けた、この12年間の復興を、近代の抑圧としてだけ考えるのではなく、どこかではこれまでとは違う角度から考える発想や、さまざまな道、もしくは拮抗するような力が生まれ、それぞれが密につながることがあるという可能性を示唆する営みでもありました。この自らの体ひとつを鏡のようにして、この時間に起こった出来事の蓄積から、展示室へ照らし返すような展示ができればと思っています。
志賀理江子 SHIGA Lieko
1980年愛知県生まれ、宮城県在住。2008年に移住した同地で、その地の人々と出会いながら、人間社会と自然の関わり、死の想像力から生を思考すること、何代にも溯る記憶などを題材に制作。東日本大震災における社会機能喪失や、厳格な自然法則による体験は、その後、戦後日本のデジャヴュのような「復興」に圧倒されるという経験に結びつき、人間精神の根源を、さまざまな制作によって追及している。
近年の主な展覧会に、「コレクション展2 BLUE」(金沢 21世紀美術館、 2021)、「温情の地 震災から 10年の東北」( Composite、メルボルン、オーストラリア、 2021)、「 Reborn-Art Festival 2021-22」(牡鹿半島(小積)、宮城、 2021)、個展「 志賀理江子 ヒューマン・スプリング」(東京都写真美術館、 2019)、個展「カナリア」 Foam写真美術館、アムステルダム、 2013)など。
●竹内公太氏
展覧会へよせて
戦時中に日本がアメリカを攻撃するため放った「風船爆弾」について、昨年その着地点のひとつをグーグルマップと米軍の文書記録から特定できました。そして、TCAAの渡航支援でワシントン州ハンフォード・サイト近くのその場所へ行きました。2022年9月には、風船を放った場所のひとつである福島県いわき市で、美術館や博物館にお願いして市民の皆さんと歴史を探る散策会をしてもらいました。海を隔てた人たちとのコミュニケーション手段が発達しても、人類は兵士や爆弾を送ることを止めないことが、連日の報道で伝えられています。いま、かつて風船が飛来した地面を想像して絵を描いています。
竹内公太 TAKEUCHI Kota
1982年生まれ、福島県在住。パラレルな身体と憑依をテーマに、時間的・空間的隔たりを越えた活動を展開する。建築物、石碑、彫刻、公文書、郷土史家や目撃者のインタビューといった人々の記憶に触れながら、地図、ストリーミング映像、UAVカメラなどの多角的な視点で、メディアと人間との関係を探る。
近年の主な展覧会に、「MOTコレクション Journals 日々、記す」(東京都現代美術館、2021)、個展「Body is not Antibody」(SNOW Contemporary、東京、2020)、また指差し作業員*の代理人として「百年の編み手たち ―流動する日本の近現代美術―」(東京都現代美術館、2019)、「ジャパノラマ 1970年以降の新しい日本のアート」(ポンピドゥ・センター・メッス、フランス、 2017)など。
*2011年東京電力福島第一原発のライブカメラを指差した人物。竹内は彼の代理人として作品の編集、展示を代行している。
タイトル | さばかれえぬ私へ Tokyo Contemporary Art Award 2021-2023 受賞記念展 |
会期 | 2023年3月18日(土)〜2023年6月18日(日) |
会場 | 東京都現代美術館 企画展示室3F |
住所 | 東京都江東区三好四丁目1番1 |
Webサイト(美術館) | https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/TCAA_2021_2023/ |
Webサイト(TCAA) | https://www.tokyocontemporaryartaward.jp/ |
開館時間 | 10:00〜18:00 |
休館日 | 月曜日 |
料金 | 無料 |