特別展「東福寺」 in 東京国立博物館
東京国立博物館では特別展「東福寺」が、2023年3月7日(火)から5月7日(日)まで開催されています。鎌倉時代に創建された東福寺には、中国伝来の文物をはじめ、建造物や彫刻・絵画・書跡など禅宗文化を物語る特色ある数多くの文化財が伝えられています。
これらの寺宝をまとめて紹介する初めての機会となる本展では、伝説の絵仏師・明兆(みんちょう)による記念碑的大作「五百羅漢図」現存全幅が修理後に初公開されるほか、巨大伽藍にふさわしい特大サイズの仏像や書画類も一堂に展観(※会期中展示替えがあります)。東福寺の歴史を辿りつつ、大陸との交流を通して花開いた禅宗文化の全容を紹介する本展で、東福寺の日本文化における意義とその魅力を存分に楽しんではいかがでしょうか。
中世禅宗文化最大の殿堂であり、観光名所としても人気
歴史と由緒ある名刹・東福寺は京都市東山区にあり、JR京都駅から南東に約2kmほどの山沿いに位置します。
中世禅宗文化最大の殿堂といわれるほど、13世紀の東アジアの禅宗と日中交流の実情がうかがえる質量ともに類をみない文物群を含め、国宝・重要文化財や鎌倉・室町時代の絵画や古文書などを数多く所蔵しています。
また、我が国随一といわれる巨大伽藍など歴史的建造物や景観でも有名です。特に観光客にとって、東福寺といえば紅葉の美しさで知られ、境内を流れる渓谷「洗玉澗(せんぎょくかん)」に架かる「通天橋」から眺める紅葉は、まさに絶景といえるでしょう。
禅宗(臨済宗)の五大官寺・京都五山のひとつ東福寺
東福寺は、鎌倉時代前期に摂政・関白を務めた九条道家(1193~1252)が、19年(1236~1255)の歳月をかけて造営した禅宗の大寺院です。室町時代の1386年には足利義満(1358~1408)により、京都にある禅宗(臨済宗)の五大官寺・京都五山のひとつとして定めらました。奈良の東大寺と興福寺とを合わせたような大寺院に、という願いを込めて、「東」と「福」の字をひとつづつとって東福寺と名付けられたといわれます。
本山東福寺とその塔頭には中国伝来の文物をはじめ、建造物や彫刻、絵画、書跡など禅宗文化を物語る数多くの特色ある文化財が伝えられています。国指定を受けている文化財の数は、本山東福寺・塔頭合わせて国宝7件、重要文化財98件、合計105件におよびます。
宋より多くの文献を伝え、大きな貢献をした開祖・円爾(聖一国師)
円爾(えんに)は,三井園城寺(滋賀県大津市)で天台宗の教えを究めたのち、建仁寺(京都市東山区)を開山した栄西の高弟行勇・栄朝について禅を学び、1235年、34歳で宋に渡りました。6年間の滞在中に径山寺(きんざんじ/現在の中国浙江省杭州市)において無準の法を嗣ぎ、1241年に帰国しました。帰国後は博多に承天寺(じょうてんじ)を建立。その後九条道家(くじょうみちいえ)の知遇を得て京都に巨刹、東福寺を開きました。
聖一国師の号は花園天皇(1297~1348)より贈られたもので、日本禅僧最初の賜号です。
宋から帰国した時に多くの文献を持ち帰り、それを通じて文教の興隆に多大な貢献を果たしましたが、水力で製粉する機械の構造図を伝えて製麺を興し、現在、最大のお茶の生産地である静岡のお茶の原種を伝えたことも見逃せない功績であると東福寺のホームページに記されています。
初めて全貌が明かされる、明兆畢生の大作
吉山明兆(1352~1431)は、東福寺を拠点に活躍した絵仏師です。江戸時代までは雪舟とも並び称されるほどに高名な画人でした。本展の大きな見どころのひとつは、「画聖」とも称えられた絵仏師・明兆による記念碑的大作「五百羅漢図」の現存全幅が修理後初公開となることです。
1幅に10人の羅漢を表わし全部で50幅本として描かれた、水墨と極彩色とが見事に調和した若き明兆の代表作です。現在では東福寺が45幅、東京・根津美術館が2幅を所蔵しており、1386年に完成したことが記録に残っている基準作としてもきわめて貴重です。14年に渡る修理事業の後、本展で初めて現存全幅が公開されることになりました。
【展示構成】
第1章 東福寺の創建と円爾
開祖・円爾やその師である無準師範(ぶじゅんしばん/1177~1249)ゆかりの古文書や書跡、典籍、肖像画などの宝物が紹介されています。
円爾の生き様を伝える臨終最期の筆致
第2章 聖一派の形成と展開
聖一派と呼ばれる円爾の法を伝える後継者たちが中国から持ち帰った、書や面影を伝える肖像画、彫刻、袈裟などの所用品など、いずれも禅宗美術の優品が紹介されています。
円爾の直弟子、中世随一の強面肖像画
円爾の孫弟子の書と伝わる禅問答のような書の怪作
第3章 伝説の絵仏師・明兆
明兆は、中国将来の仏画作品に学びながらも、冴えわたる水墨の技と鮮やかな極彩色とにより平明な画風を築き上げ、巨大な伽藍にふさわしい巨幅や連幅を数多く手掛けました。その代表作が紹介されています。
規格外のスケールを誇る超巨大な観音図
画業円熟期の傑作、東福寺の大達磨
第4章 禅宗文化と海外交流
円爾と中国仏教界との交友は帰国後も継続し、さらにそうした対外交流のネットワークは、円爾の後継者・聖一派にも受け継がれていきます。彼らは外交や貿易にも積極的に携わり、その後の東福寺に集積した禅宗文化の基軸となるさまざまな文物が紹介されています。
円爾がもたらした宋王朝勅纂の百科事典
第5章 巨大伽藍と仏教彫刻
東福寺の壮大な規模は、京都東山にそびえる巨大伽藍と尊像等の仏教彫刻に象徴されます。「伽藍面(がらんづら)」と称されてきた東福寺の全景を詳細に描いた東福寺最古の絵画遺品や、2メートルもある旧本尊の左手などが展示されています。
修理後初公開・運慶作?この力強いまなざし
タイトル | 特別展「東福寺」 |
会期 | 2023年3月7日(火)~ 5月7日(日) ※会期中、一部展示替えあり |
会場 | 東京国立博物館 平成館 |
住所 | 〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9 |
展覧会公式 Webサイト |
https://tofukuji2023.jp/ |
開館時間 | 午前9時30分~午後5時 ※入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日 ※ただし、3月27日(月)と5月1日(月)は開館 |
チケット情報 | 詳しくは展覧会公式サイトの「チケット」のページをご確認ください。 |
料金 | 【当日券】 一般:2,100円 大学生:1,300円 高校生:900円【前売券】 一般:1,900円 大学生:1,100円 高校生:700円 |
料金(備考) | ※中学生以下無料。 ※障がい者とその介護者1名は無料です。入館の際に障がい者手帳などをご提示ください。 ※前売券は、東京国立博物館正門チケット売場(窓口、開館日のみ、閉館の30分前まで)、展覧会公式サイト、各種プレイガイドにて、2023年2月1日(水)から3月6日(月)まで販売。 ※本券で、会期中観覧日当日1回に限り、総合文化展もご覧になれます。 ※キャンパスメンバーズ入会校の学生は、窓口にて学生証をご提示いただくことで、割引料金(1,100円)で当日券をご購入いただけます。当日券をご希望の場合は、このサイトから購入せず、当日窓口にてご購入ください。なお、前売り券料金(1,100円)につきましては、割引はございません。 |