上野アーティストプロジェクト2023　いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間 at 東京都美術館

東京都美術館では、上野アーティストプロジェクト2023「いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」が11月16日(木)から2024年1月8日(月・祝)まで開催されています。本展では、人間以外の自然界のいきものを「うつす」ことに取り組み続けてきた6名の作家が紹介されています。また同時開催されているコレクション展「動物園にて ―東京都コレクションを中心に」では、上野動物園という日本最古の「動物園」に焦点を当てながら、「動物園」に関わる作品・資料が紹介されています。
どちらも“いのち”と、それを育み、描き出してきた作家と「動物園」を通じて、“いのち”と誠実に向き合うことの大切さを改めて感じるひとときとなるでしょう。

上野アーティストプロジェクトは、「公募展のふるさと」とも称される東京都美術館の歴史の継承と未来への発展を図るため、公募展に関わる作家を積極的に紹介する展覧会シリーズです。2017年より毎年開催されており、東京都美術館ならではの個性的なテーマが楽しみな展覧会です。

2023年は「いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間」として、人間以外の自然界のいきものを「うつす」ことに取り組み続けてきた6名の作家が紹介されています。非常にポピュラーな動物や植物という題材ですが、今回、注目されているのは、特定のいきものと分かちがたい関係を結び、数十年にわたり高い熱量を絶やすことなく、それらの姿を追いかけ続け、あるいは今も続けている作家たちです。

ひとつの主題を切実に求め、それらの姿を写し、描き、かたどることを通して、それぞれのつくり手たちは何を見つめてきたのでしょうか。本展では、「うつす」という営みの中で繰り広げられる、他者との触れあいの様々なあり方と向き合いながら、私たち人間が他のいきものたちと共に生きていく未来について、自然科学的な視点も織り交ぜながら考えさせてくれます。

なお、本展では、視覚に障害のある方にも作品を味わっていただけるよう、一部、手で触れて鑑賞する作品や触察ツールが展示されています。もちろん、健常者の方にとっても楽しい体験となりますので、ぜひ、お試しください。

【作家紹介（50音順）】
※テキストは東京都美術館の広報資料から引用しています。

■阿部知暁 ABE Chisato 

1957年高知県生まれ。1982年大阪芸術大学卒業。1980年代半ばから日本全国の動物園等で飼育されるゴリラを追いかけ始めた。以来、世界各地の動物園、野生ゴリラの暮らすアフリカなど、各地のゴリラを訪ね、描き続けている。現在、一陽会運営委員。

■今井壽惠 IMAI Hisae

1931年東京都生まれ。1956年の初個展を皮切りに、作家活動と並行してファッション写真や広告写真など幅広い分野で活躍。交通事故で負傷し一時失った視力を回復した後、馬に関心を向けはじめ、1970年以降、競走馬の取材・撮影に集中した。2009年逝去。

■内山春雄 UCHIYAMA Haruo

1950年岐阜県生まれ。木象嵌師として研鑽を積んだのち、1980年より日本鳥類保護連盟の依頼を受け、バードカービングの制作に着手。以後、その技術の普及や鳥類保護への活用に取り組んできた。現在、日本バードカービング協会会長。

■小林路子 KOBAYASHI Michiko

東京都生まれ。1979年から86年まで自由美術協会会員。森毅編『キノコの不思議』（光文社、1986年）の挿絵を担当したことを機に、周囲の生物と関わりながら生きる野生キノコの魅力を知り、以来、多種多様な環境に発生するキノコを探し、描き続けてきた。

■辻永 TSUJI Hisashi

1884年広島県生まれ。茨城県水戸市で育つ。東京美術学校西洋画科卒業後、主に風景を描く画家として画壇で活躍し、日展や光風会で理事長を務めた。一方で少年期より植物を深く愛し、最晩年に至るまで日々植物を描き続けていた。1974年逝去。

■冨田美穂 TOMITA Miho

1979年東京都生まれ。2004年武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画コース卒業。在学中の酪農アルバイトで間近に触れたウシの存在に魅了され、卒業後北海道に移住し、酪農の仕事をしながら、出会ったウシたちの姿を木版画に刻み続けている。

[同時開催] コレクション展「動物園にて ―東京都コレクションを中心に」

本展では、主に東京都美術館に隣接する上野動物園という日本最古の「動物園」に焦点を当てながら、東京都立の美術館・博物館、またその他の施設や個人等が保管する、「動物園」に関わる作品・資料が展示されています。

日本では、明治15（1882）年に上野に最初の「動物園」が開園したこと、明治22年（1889）に東京美術学校（現東京藝術大学美術学部）が開校した当初は学生たちが動物園で熱心に写生したこと、その後は写真にもたくさん撮られたこと、終戦後の昭和23年（1948）は乾草200匁（約750g）を持ってくれば入場券1枚と交換できたこと、などなど。
あなたは「動物園」に関するさまざまな展示を観ていると、自分自身が動物園で過ごした時間を思い出すだけでなく、「動物園」を通して、人間にとってどのような場所で、人は何を求めてそこに向かい、何を得てそこから帰っていくのか・・・まで想いを馳せるかもしれません。

「動物園」にまつわる様々な記憶の断片を訪ね歩く中で、近代以降の「動物園」という空間における、人間と動物、あるいは人間と物言わぬいのちたちとの関わり合いを、あらためて捉えなおしてみてはいかがでしょうか。

タイトル	上野アーティストプロジェクト2023 いのちをうつす ―菌類、植物、動物、人間
会期	2023年11月16日(木) ～ 2024年1月8日(月・祝)
会場	東京都美術館　ギャラリーA・C
住所	110-0007 東京都台東区上野公園8-36
Webサイト	https://www.tobikan.jp/exhibition/2023_uenoartistproject.html
開室時間	9:30～17:30、11月17日(金)、11月24日(金)、12月1日(金)、12月8日(金)は9:30～20:00（入室は閉室の30分前まで）
休室日	12月4日(月)、12月18日(月)、12月21日(木)～2024年1月3日(水)
観覧料	当日券 【一般】 500円 【65歳以上】 300円 【学生以下】無料
備考	※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方（1名まで）は無料 ※いずれも証明できるものをご提示ください ※同時期開催の特別展「永遠の都ローマ展」のチケット提示にて入場無料
同時開催	「動物園にて ―東京都コレクションを中心に」（観覧無料）