VOCA展 2023 現代美術の展望-新しい平面の作家たち in 上野の森美術館
上野の森美術館では、『VOCA展 2023 現代美術の展望-新しい平面の作家たち』(The Vision of Contemporary Art/特別協賛:第一生命保険株式会社)が2023年3月16日(木)から3月30日(木)まで開催されています。本展は現代アートにおける“若手作家の登竜門”として、独自の選考システムにより全国各地で活躍する、29名の優れた未知の才能が紹介されます。“平面”といえども、作品のサイズは250cm×400cm以内、厚さは壁から20cm以内という条件なので、立体やインスタレーションに近い作品も多く観られます。毎回、“定点観測”するような気分で訪れると、現代アートのひとつの潮流が感じ取れる、いろんな楽しみ方がある展覧会です。
国際的に通用する若手作家の支援を目的に、1994年より 開催
「VOCA(ヴォーカ」展」は、The Vision of Contemporary Artの頭文字をとってそう呼ばれています。現代アートにおける平面の領域で、国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に、1994年より毎年開催されている展覧会です。今年は30周年という節目を迎え、VOCA展の30年を振り返る特別展示の同時開催や、記念シンポジウムも予定されています。
これまで「VOCA展」に出品した作家は、本展を含め、延べ1,013人(組)にのぼります。その中には福田美蘭氏(1994年 VOCA賞)、やなぎみわ氏(1999年 VOCA賞)、蜷川実花氏(2006年 大原美術館賞)、清川あさみ氏(2010年佳作賞)、Nerhol (2020年 VOCA賞)、川内理香子氏(2022年 VOCA賞)など、多方面で活躍している作家たちが参加しています。
観る私たちにも楽しみを提供する独自の選考システム
「VOCA展」の大きな特徴は、その選考システムにあります。毎回、約30名の推薦委員が1名ずつ作家を推薦し、推薦された作家は1点ずつ作品を出品。それを5名の選考委員が数回の投票と議論を重ね、受賞者が決定されます。
この推薦委員は日頃から多くの作家をリサーチしている全国各地の美術館学芸員、研究者、ジャーナリストなどで構成されており、いわば日本中のアートシーンの現場である展覧会や個展などで数多くの作品に触れている方々です。したがって、望めば誰でも応募できるコンクールとは違い、一定のレベルの中から作品選考が行われるのです。
他の展覧会と違う、観る側の楽しみとしては推薦委員の方々のコメントがあげられます。そこには委員の方それぞれの現代アートへの視点や作家の創作活動へのまなざしが感じられ、観る側の私たちに作品をより深く楽しむためのガイドになっています。展示キャプションに添えられた推薦委員のコメントと作品を一緒に観ていくと、いろんな学びや気づきが与えられるでしょう。
新進気鋭の作家29名の中からグランプリが選出される
今年もこれからを期待される新進気鋭の作家29名が『VOCA展 2023』 に出品されました。この中から、グランプリとなるVOCA賞には秋田県横手市在住(秋田県出身)永沢碧衣さんの《山衣をほどく(やまごろもをほどく)》 が決定しています。他に、VOCA奨励賞にはエレナ・トゥタッチコワさん、七搦綾乃(ななからげあやの)さん、VOCA佳作賞には黒山真央さん、田中藍衣さんの作品が選出されています。
また、大原美術館賞には七搦綾乃さんの作品が、同美術館の選考により選出されました。
●VOCA 賞 永沢碧衣 《山衣をほどく(やまごろもをほどく)》
受賞者 永沢碧衣(ながさわあおい)氏 の コメント
※プレスリリースより引用
各地の風土独特の世界観に触れる度、人と人ならざる者との関係性を永遠と問い続けていく壮大な物語が在ることに気づき、動植物の本能は自分達の営みに置き換えても大いに学ぶことがあると感じてきました。
同じ奥羽山脈の中で暮らす彼(熊)の身体と私自らの記憶を画面上で再び重ね合わせていく時間は、私達がいつかどこかで繋がり合っていた世界を示してくれたように思えます。今作がさらに多くの繋がりを持てる形で届けられるようになったことに、すべての方々へ感謝を込めて。
推薦者 石倉 敏明(秋田公立美術大学 准教授 ・人類学者 氏 のコメント (会場用推薦文より)
ツキノワグマは奥山に入る秋田のマタギにとって山の神から「授かる」神聖な動物だが、近年は人里を脅かす獣として捕獲駆除の対象となる。永沢は自ら山林に入る狩猟者として、神獣と害獣に引き裂かれた熊を狩り、命を送り、解体し、食べ、膠を作り、描くことで、人間と異種の関係を問い、時を超えた生と死の循環を描き出す。
●VOCA奨励賞 エレナ・トゥタッチコワ 《手のひらの距離とポケットの土》
●VOCA奨励賞 七搦綾乃 《Paradise IV》
●VOCA佳作賞 黒山真央 《SIBLINGS》
●VOCA佳作賞 田中藍衣 《Running Around》
●大原美術館賞 七搦綾乃 《Paradise IV》
タイトル | VOCA展 2023 現代美術の展望-新しい平面の作家たち |
会期 | 2023年3月16日(木) 〜 3月30日(木) |
会場 | 上野の森美術館 |
住所 | 東京都台東区上野公園 1-2 |
Webサイト | https://www.ueno-mori.org/exhibitions/voca/2023/ |
開館時間 | 10:00 〜 17:00 *入場は閉館30分前まで |
休館日 | 会期中無休 |
料金 | 一般:800円(税込) 大学生:400円(税込) 高校生以下無料 *学生の方は、学生証・生徒手帳をご提示ください *障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料 (要証明) |