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大地に耳をすます 気配と手ざわり at 東京都美術館

私たちの暮らす東京や首都圏にも身のまわりの木々や生き物、時おり都市機能を麻痺させる豪雨・豪雪など、自然はあります。しかし自然といつも向き合っている、あるいはともに生きているという感覚を持っているとは言い難いのではないでしょうか。
東京都美術館で開催中の「大地に耳をすます 気配と手ざわり」は、人間中心の生活のなかでは聞こえにくくなっている、大地の息づかいを伝えてくれる展覧会です。あなたの想像をちょっと超える自然の姿に出会えますので、ぜひお出かけください。

注目したい制作に至る各作家のプロセス

本展で紹介されている5人の現代作家は、便利な都会から離れ、あえて自ら豊かな自然と風土に身をおいた方々です。それぞれの展示には各作家の紹介の他、制作に至るプロセスやできごと、普段の生活などを記した資料なども展示されているので、ぜひ目を通すことをおすすめします。

なぜなら、私たちは自然を捉えたり、自然を表現した作品を目の前にしても、TVやネットで刷り込まれた情報やビジュアルを自分の頭の中で勝手に補足したり、置き換えてしまっていることがあります。

しかし、本展で紹介されている作家やその作品は、いずれもそのような先入観を吹き飛ばしてしまうほどの取り組みや気づきに満ちています。資料やキャプションにも目を通していると、あなたにとっての新しい発見や出会いがあると思いますので、それらを見逃すことのないようにお楽しみください。

この他、視点の置き方や手法の多彩さも本展の楽しさのひとつです。いずれの作家の作品は、思索し、感じたありのままが表現されているように感じます。こうした作品に触れつつ、東京で生きる意味やふだんの気持ちや感覚の持ちようについて考えてみるのもよいかも知れません。

以下は東京都美術館発行の広報用資料からの引用になります

【概要】

本展では自然に深く関わり制作をつづける現代作家5人をご紹介します。野生動物、山の人々の生業、移りゆく景色や植生、生命の輝きや自然の驚異を捉えた作品は、自然とともに生きるつくり手の瑞々しい歓喜に溢れています。同時に、ときに暴力的に牙をむき、したたかな生存戦略をめぐらせる自然の諸相を鮮烈に思い起こさせ、都市生活では希薄になりがちな、人の力の及ばない自然への畏怖と敬意が感じられます。未開の大自然ではなく自然と人の暮らしが重なる場から生まれた彼らの作品は、自然と人の関係性を問い直すものでもあります。

古来人間は、自然の営みに目を凝らし、耳をすまし、長い年月をかけて共生する術を育んできました。自然に分け入り心動かされ、風土に接し生み出された作品は、人間中心の生活のなかでは聞こえにくくなっている大地の息づかいを伝えてくれます。かすかな気配も捉える作家の鋭敏な感覚をとおして触れる自然と人のあり様は、私たちの「生きる感覚」をも呼び覚ましてくれるでしょう。

出品作家 (五十音順) 榎本裕一、川村喜一、倉科光子、ふるさかはるか、ミロコマチコ

【展覧会のみどころ】

自然とともに生きるよろこび

都市を出て、豊かな自然と風土に身をおいたつくり手をご紹介します。川村喜一が移住者としての新鮮なまなざしで撮影した知床の日常や、榎本裕一が魅了された極寒の根室の景色をモティーフとした作品が、東京の展覧会場に自然の息吹を伝えます。

空間にあわせた新作

ミロコマチコは、東京都美術館の個性的な広い空間に合わせて、生命のうごめく奄美大島をイメージしたインスタレーションを制作。ふるさかはるかは、取材地の漆を使った15枚組みの大きな木版画に取り組み、青森の木立のような展示空間をつくります。

5人の現代作家による多彩な作品

写真、木版画、油彩画、水彩画、インスタレーションなど 5 人の現代作家による多彩な作品を展示。倉科光子による東日本大震災の津波と復興がもたらす植生の変化を捉えつづける作品をはじめ、さまざまな角度から人と自然の関係を見つめ直します。

 

【作家紹介(展示順) 】

川村喜一(かわむら きいち) / 移住者から生活者へ、知床に根を下ろしてゆく日々を撮る

1990年東京生まれ。写真家・美術家。東京藝術大学大学院美術研究科終了後、2017年に「自然と表現、生命と生活」を学び直すため、北海道・知床に移住した。新たに家族となったアイヌ犬・ウパシとの暮らしや、知床の風景や野生動物を新鮮なまなざしで撮影しつづけ、2020年に写真集『アイヌ犬・ウパシと知床の暮らし』(玄光社)を出版。狩猟免許を取得してしだいに生活者となるなか、実感を伴った生命の循環をインスタレーションで発表している。

ふるさかはるか / 素材を育て、採集し、自然と生きる人に取材した木版画

1976年大阪府生まれ。美術家・木版画家。フィンランド、ノルウェーなど北欧での滞在制作を経て、2017年からは青森で自然とともに生きる人々に取材を重ねながら制作に取り組んでいる。自ら採集した土、自ら育てた藍から絵具をつくり、木のかたちや木目を生かして版木をつくるなど、自然と関わる手しごととしての木版画にこだわりをもつ。近年は取材地で出合った漆に注目し、その樹木を版木に、樹液を絵具に取り入れた作品を試みている。2023年、青森での取材をまとめた作品集『ことづての声/ソマの舟』(信陽堂)を出版。

ミロコマチコ / 奄美で体感した、いきものの気配と生命の煌めき

1981年大阪府生まれ。画家・絵本作家。本の装丁や展覧会、ライブペインティングなど幅広い活動を行う。2019年、「生きる」ことに軸を置き、絵を描きたいと奄美大島に移住。自然と生活の密接なつながりを感じながら、いきものの気配や生命の煌めきが濃厚に漂う作品を生み出している。移住後の作品には、身近ないきものに加え、精霊や竜など目に見えない存在が捉えられている。2023年、4年ぶりとなる新作絵本『みえないりゅう』を発表。

倉科光子(くらしな みつこ) / 東日本大震災の津波による変化を追いつづける植物画

1961年青森県生まれ、東京都在住。2001年から植物画を始める。2013年から東日本大震災の被災地に足を運び、浜辺や津波の浸水域に生えた植物を描きつづけている。津波により、内陸の植物が浜に根を下ろしたり、何十年も地中にあったタネが芽生えたりした様子に加え、近年では復興事業で変わりゆく植生にも目を向ける。人と植物の時間スケールの違いが意識させられる一方、植物と目を合わせるかのような低い視点から描かれる植物には、被災した人々の営みも重ねられている。

榎本裕一(えのもと ゆういち) / 根室の自然に美を見出し、翻訳する

1974年東京都生まれ。2018年より北海道・根室にもアトリエを構える。花の色彩に注目した作品を多く手がけていたが、根室では冬の景色に魅了されたという。近年は、アトリエの近くの景色や自然が偶然に生み出すかたちに着想した作品を制作している。一見すると抽象のような油彩画は、目を凝らすと風景が浮かび上がる。暗い森の静寂と生命の気配を感じさせ、鑑賞者に自らの体験を想起させる余白をもつ。本展のために、雪の湖面を表す新作に取り組んでいる。

タイトル 大地に耳をすます 気配と手ざわり
会期 2024年7月20日(土)~ 10月9日(水)
会場 東京都美術館 ギャラリーA・B・C
住所 110-0007 東京都台東区上野公園8-36
Webサイト https://www.tobikan.jp/daichinimimi/
開室時間 9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
休室日 月曜日、9月17日(火)、9月24日(火)
※ただし、9月16日(月・祝)、9月23日(月・休)は開室
観覧料 【一般】 1,100円
【大学生・専門学校生】 700円
【65歳以上】 800円
※高校生以下無料。
備考 ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料。
※高校生、大学生・専門学校生、65歳以上の方、各種お手帳をお持ちの方は、いずれも証明できるものをご提示ください。[各種割引]
※同時期開催の特別展「田中一村展 奄美の光 魂の絵画」のチケット提示にて各料金より300円引き(1名1回限り、他の割引との併用はできません)
※事前予約は不要。ただし、混雑時に入場制限を行う場合があります
※10月1日(火)は「都民の日」により、どなたでも無料
*他の割引との併用はできません