山田 桃子|ある星 at GALLERY MoMo Projects
GALLERY MoMo Projects(六本木)では、同ギャラリーでは初となる山田桃子による個展『ある星』が2024年1月27日(土)から3月2日(土)まで開催されています。ひとつひとつの作品が小さな世界を象徴しているようなイメージを『ある星』と呼んでいる本展タイトルのとおり、私たちを作品の前で無心にしてくれるような不思議なチカラを持っているようです。作品はのぞき込むような体勢になるものが多く、その先に広がるイメージには、あなたにも寄り添うような物語がきっとあるでしょう。お出かけしてみてはいかがでしょうか。
心が満たされる作品の中の物語
ギャラリーに入ると、壁面にリズミカルに配置された銅版画や、七宝焼で作られた小さな立体作品が目に飛び込んできます。ひとつひとつの作品に向き合っていると、あまり複雑に思考を働かせなくても、作品の中のシーンの連なり(=物語)をじっと眺めているだけで、いろんな想いや記憶が心の中でわき上がって、何かに満たされたような気持ちになります。
山田桃子は1995年に東京都生まれ、2021年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業し、2023年には同大学大学院美術研究科絵画専攻版画研究分野を修了しました。彼女は在学中から高い評価を受け、2020年には全国大学版画展で優秀賞を受賞し、これまでに個展やグループ展で幅広く活動しています。本展では、山田がこれまで主に制作してきた銅版画と七宝焼の作品が展示されています。
“作品をつくることは、もうひとつの居場所をつくること”
会場でも販売されている山田自身が作成したリーフレットの中で、彼女が「つくることについて」語っており、最後に『作品をつくることは、もうひとつの居場所をつくることだと思う』と締めくくられています。この“居場所”という言葉は、彼女の作品を楽しむ上で大事なキーワードだと感じます。
山田は、作品の中で実際に感じたインスピレーションや、本や音楽から得たイメージなどをもとに広がった、色や形で構築された独自のルールが存在する世界を表現しています。これらの要素を通じて生み出される世界は、私たちが知る現実とは異なり、独自の法則に基づく物語が展開されています。このようにして現実と異なる世界を作り出すことは、山田自身にとってもうひとつの居場所を生み出す喜びとなっているようです。
“居場所”というと、人によって、いろんなイメージがわくでしょう。ほっとできる場所、安心して暮らすところや安心できる誰かといること、自分らしくいられる環境、などなど。英語で意訳すると、Where I belongという言い方もできるでしょう。山田の作品を観ていると、このどれもがあてはまるような気がしてきます。
幾重にも織りなされている物語と出会う
さらに、木やガラス、金属などの素材に温もりを見出す彼女の視点は、見る者に昔ながらの時間や人々の生活を思い起こさせ、素材自体が宿している物語を描き出す意図が込められています。山田の作品を観ていると、どこか懐かしかったり、子どものころのことを思い出すのはそのせいかもしれません。
銅版画と七宝焼は制作工程の多さと、限られた領域に高密度の画面を凝縮するという共通点があります。そして前出のリーフレットの中で、絵を描く過程で単語や言葉が湧き上がり、それが新たなイメージを得ながら、その往復のプロセスを通じて物語性が芽生え、独自の舞台や登場人物を構築していると記されています。おそらく長く、根気がいるであろう制作工程は、絵と言葉、そしてイメージの往復をしながら作品と向き合う時間を与え、作品により深みをもたらしていると思われます。
ここにある小さな作品群には、山田によって幾重にも織りなされている物語があります。そしてきっと、その中にはあなたの物語と重なり合うところがあるはずです。ぜひ、お出かけして、確かめてみてください。
最後に、ギャラリーの公式サイトに掲載されている山田の「アーティストコメント」を引用で紹介します。
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馬を食べる木がいたり、鳥の形をした葉っぱがいたり、海に飛び込む二人の少女がいたり、
生き物が連なって音になっていったりと、絵の中は現実とはちょっと違います。
作品はそれぞれが暗号を持った、小さな惑星みたいだなと思います。
ひとつひとつが「ある星」になって、その星のルールの中で好きに存在しているみたいです。
2023年 山田 桃子
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タイトル | 山田 桃子|ある星 |
会期 | 2024年1月27日(土)~ 3月2日(土) |
会場 | GALLERY MoMo Projects |
住所 | 106-0032 東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F |
Webサイト | https://www.gallery-momo.com/current-roppongi |
開廊時間 | 12:00 ~ 19:00 |
休廊日 | 日曜・月曜・祝日 |
観覧料 | 無料 |